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路地裏奇譚1~お地蔵さん

そこは
町内ごとに
お地蔵さまの祠がありました
祠の世話をするじいさまやばあさま
町の人や子どもたちは
お地蔵さんと呼んでいました
子どもたちにとっては
夏休みがそろそろ終わりに近づいたころ
待ちに待った
年に一度の地蔵盆が
やってきます
お地蔵さんの祠がある通りは
車は通行止めになり
道いっぱいにテントが張られ
ゴザが敷かれ
さながらそこは
子どもの秘密基地になります
子どもたちはおやつがたくさんもらえます
友だちと色んなことをして遊べます
時にはみんなで海水浴にも行きます
子どもたちにとっては
楽しい楽しい地蔵盆なのです

子どもは宝
町内の人はみんなそう思っていました
子どもの守り神であるお地蔵さまは
町内のじいさまやばあさまの手で
花が添えられ
新しい水と
わずかばかりの食べ物が
供えられていました
仕事の行き帰り
お地蔵様の前を通ると
両手を合わせ
軽く頭を下げてお祈りするのが
町内に住む人たちの日課でした
さすがに若者は
そんなことはしなくなりました

じいさまやばあさまは
小さな器に入れたお水が
毎日きれいになくなっているのを知っていました
夜中に野良猫が
お地蔵様の祠に飛び乗って
小さな器の水を飲んで
のどを潤していたのです
野良猫もその水が
毎日入れられて新鮮だと知っているのです
おまけに少しの食べ物もあります
いまでは
町内の人と野良猫たちとは
いい関係が出来ていますが
その昔
お地蔵様のお供えを
盗み食いするとは罰当たりめと
大人にも子どもたちにも
野良猫たちは棒で叩かれ石を投げられ
ネズミ捕りを大きくしたネコ捕りを仕掛けられ
町内から追い払われたのです

これでよしよし
町の人たちはみんな安心しました
もうお地蔵様のお供え物が
野良猫たちに荒らされないですむ
そう思ったのでした
ところがしばらくすると
町のあちこちで
こんなことがささやかれるようになりました
最近ネズミが出てきて困る
どうしたんだろうなあ
それに病気になる子どもたちが
増えてるようだ
何が起きたんだろうと
町の人は不思議に思っていました
そしてようやくあることに気が付きました
そうか
野良猫を町から追い出したからだ
町の人たちは
そうだそうだとうなづきました
悪いことをしたなあと思いました

野良猫たちは
初めみんなに嫌われていましたが
ネズミを捕ったりして
町の人の役に立っていたのです
そのことに町の人が気づいてからは
お地蔵さんの祠には
野良猫が好きな食べ物が
供えられるようになりました
お地蔵様の水を
野良猫が飲んでいても
よしよしと
笑顔で見守っていました
お地蔵さんのお水を飲みに
いろんな色をした野良猫が来ました
あるときなどは
黒い子猫を三匹連れた親猫も来ました

お地蔵さんは
子どもたちだけでなく
野良猫たちの命も
守っていたのです


2018/10/12 記

参考1(猫とネズミに関して教えられたツイート)
築地の閉場で喧伝される「ネズミ問題」に関する個人的な考察)
8:07 - 2018年10月7日
https://twitter.com/nezumi32/status/1048952966214873088

参考2(このツイートを読んだのが 書くヒントになりました)
まじさんのツイート 22:08 - 2018年10月9日
https://twitter.com/mazy_3/status/1049889460954038274