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コードが書けない40代事務員が特許出願レベルのシステムを作った話

コードが書けない40代事務員が特許出願レベルのシステムを作った「CGP(Core Growth Prompting)」という手法


1. 自己紹介

私は自動車業界の小さな会社で働く40代の事務員です。

キャリアは変わっていて、自動車整備の専門学校を卒業後、自動車整備士として働き始め、社内資格のトレーナー、新車の車両品質保証、新車点検ラインでの品質検査、部署の損益分析、中古車の板金見積と、一つの業界の中で現場から管理まで色々やってきました。
もちろんITの専門家ではなく、業務でExcelとAccessを使う程度。プログラミングの勉強はちょっとだけしましたが、"Hello,World"とコンピューターに出力させた時「だからなんやねん」と思ってすぐに辞めてしまいました。
唯一ITと関わったと思えるのは、社内システムの更新の際、外部ベンダーさんとの窓口を担当したことくらい。
AIについてはChatGPTが出始めた頃から遊び半分で触っていて、noteの記事を書いてもらったり、Midjourneyで一時期画像生成を楽しんでいたくらいです。

使っていたPCは富士通のLifebook、Core i5(7200U)・メモリ8GBという7~8世代前の事務用機。現行のスマホ以下のスペックのPCです。
Google AI Studioを開いたら重すぎて動きませんでした。

そんな私が、AIとの対話だけで特許出願レベルのシステム(文章構造解析ロジックエンジン「Prime Source」)を設計し、コードを一行も書かずに実装まで至りました。その過程で生まれた手法を「CGP(Core Growth Prompting)」と名付けて、この記事にまとめます。

2. 始まりは「ソースは?」という憤り

1年ほど前から、ネットニュースのある傾向が気になり始めました。内容はそれほどでもないのに、タイトルだけ煽っている記事。ビュー稼ぎのための炎上設計。「無責任だ」と憤っていました。

品質保証の仕事をしていた人間として、根拠のない主張には本能的に違和感を覚えます。「ソースは?」「一次情報はどこ?」「現地現物で確認した?」という問いは、職場では当たり前のことでした。でもネットニュースの世界では、その問いはほとんど機能していない。

そこから出発したアイデアが一つありました。

「一次ソースとネット記事を、文章構造解析の手法で比較・分析できないか」

完璧なシステムのビジョンがあったわけではありません。この一つのアイデアだけがありました。

3. CGPとは何か

結果的に私がやっていた手法を、後から整理して名前をつけたのがCGP(Core Growth Prompting)です。4つのステップで説明します。


Step 1:コアの発見(Core Discovery)

最初にやったのは、シンプルなことでした。新しいチャットを開いて「一次ソースとネット記事を比較するスマホアプリを作りたい」と書き出し、雑談を始めました。どんな評価軸で比較するか、どう重み付けするか。会話の中で輪郭が見えてきました。

会話が煮詰まったころ、その内容(何をどう決め・何を選んで・何を選ばなかったのか、などの紆余曲折のログです)を「デザインヒストリー」として、出力してもらい、そのまま同じチャットで仕様の詳細を詰めていきコアとなるプロンプトを作りました。

これがCGPの起点です。解決したい「具体的な不満・疑問」から始めて、それを解決する最小単位のコアを作る。

Step 2:拡大解釈(Expansion)

コアが動き始めると、「これは他に何に使えるか」という問いが自然に生まれてきます。

私の例ですが、きっかけはAIへの素朴な疑問でした。機械学習の過程では、善し悪しの判断がついていない雑多なデータを大量に食わせていると知りました。
AIが好きだからこそ思ったのです。

「Prime Sourceでちゃんとクレンジングしてから食わせてあげたら、もっと良質なAIになるんじゃないか」と。

そこから、世界中のファクトチェック機関が「ClaimReview」という共通フォーマットで公開している構造化データの存在を知りました。ニュース記事を一件ずつ処理するのではなく、このデータをまとめてクレンジングして機械学習用の高品質なデータセットを作れるかもしれない。ニュース検証ツールとして作ったコアが、AIの学習データ浄化という全く別の用途に転用できると気づいた瞬間でした。

Step 3:外付け接続(Attachment)

拡大解釈で生まれた機能を、コアを変えずに外側から接続していきました。

今の私なら最初に「コアを不可侵として、この機能を追加できるか」と確認するようにしています。コアが明確だったため、必要性から追加した機能ばかりで、コアを壊しそうになった場面は特にありませんでした。コアが守られていれば、周辺はいくら育てても一貫性が保たれます。

Step 4:有機的な完成(Organic Completion)

完成のタイミングは設計しませんでした。「このコアでできることのアイデアが自分の中で枯渇したな」と感じた時、それが完成でした。

完璧を目指しませんでした。「実用レベルで十分な堅牢性・耐ハルシネーション性・低レイテンシーであること」を完成の定義にしました。何をもって完成とするかを自分で決める、これもCGPの重要な判断の一つです。

4. 外注できる部分と、センスが問われる部分

CGPで開発を進める中で、はっきりと二種類の作業があることに気づきました。

AIに任せられた部分

プロトタイプをテストする中で、意図通りの結果が出ないことが何度もありました。その度に、コアや外付け機能の矛盾がないか、LLM視点で誤解・意訳している部分がないかをAIに確認してもらいました。コードは一切書けないので、実装はAIがなければ不可能だったと断言できます。

自分が決めなければならなかった部分

一番難しかったのは「何をもって完成とするか」という判断でした。AIは提案はしてくれますが、完成の定義は自分で決めるしかありません。「完璧はあり得ないので、実用レベルで十分であること」と腹を括ったのは自分です。

過去の仕事が活きた場面

自動車整備士として叩き込まれたトラブルシューティングの思考——症状から原因を構造的に追いかける習慣——が、システムの設計で大きく役立ちました。技術の知識ではなく、問題を構造化する思考です。

一つだけ正直に言うと、コードが書けない状態でシステムが動いているのは、元整備士としては正直恐ろしかった。仕組みを理解した上で整備してきた人間にとって、理屈が分からないものが動いているというのは本能的な不安があります。
それでも動いているという事実が、その不安を上回りました。

5. CGPプライマーという副産物

Prime Sourceを作った経験から「コードが書けない人間でも、対話からそれなりに筋のいいプロトタイプを再現性高く作れる」という手法の原型ができました。

最近、別のアプリ(3行日記+ヘルスケア連携アプリ)を作り始めて確信しました。「きっと今後アプリを作っても、自分はこの方法をメインにやるだろう」と。
そこでAIに「私のバイブコーディングの方法をLLM目線でやりやすい方法で改善して。人間の労力は無視していい」という条件で整理してもらったのが、CGPプライマーです。

このプライマーの最大の実用的な価値は、新しいチャットを始めるたびにゼロから説明しなくて済むことです。基本思想が統一されるため、やり取りの再現性が上がります。

GitHubに置いてあります。まずこれを使って何かを作ってみてください。そしてゆくゆくは、あなた自身の版を作ってほしいと思っています。何を作るかによって正解は変わるので、このプライマーはあくまでも出発点です。

実際、このプライマーには「公共性が高いケース」向けの別バージョンも存在します。行政や地域社会など、複数の当事者の間で価値観そのものが対立しうる文脈では、個人開発とは前提が違うからです。そちらでは「対立を解決する」のではなく「対立を解決せず、消さずに構造化して残す」ことを核に据えて、別方式として組み直しています。つまり、正解が一つに定まらない場面でも、CGPという考え方自体は形を変えて使えるということです。両方ともGitHubに置いています。

※ CGPプライマー:[CoreGrowthLabs/CoreGrowthPrompting: 非IT技術者のためのバイブコーディング手法CGP(Core Growth Prompting)/ A vibe-coding method & primer for non-engineers building software through AI dialogue]

6. 次の記事予告——Prime Sourceのこと

CGPで最初に作ったシステム「Prime Source」は、ネット記事の信頼性を一次ソースと比較・検証する情報監査システムです。現在、22項目の特許出願の準備を進めています。

コードが書けない40代の事務員でも、AIのサポートがあればPrime Sourceくらいのものは作れます。特許出願のための資料作成や弁理士とのやり取りの準備も、AIが手伝ってくれました。
出願が完了したら、デモの公開を予定しています。

最後に

AIの普及で、技術や知識の壁が阻んでいた領域に手が届くようになりました。
今や世界は思わぬところから「野良の天才」が生えてくる環境に変わっていると思います。

学歴も専門知識も必要ない。ハードウェア面だって超かっこいい林檎のマークのPCである必要はなくて、インターネットにアクセスできる環境とクラウドLLMがあればいいんです。
本当に必要なのは、具体的な不満としつこさと、決断をするセンスだけです。あなたの中にあるそれが、今まで届かなかった場所に届くかもしれません。

おわりに、私は、台湾のシビックテックコミュニティが育んできた文化を深く尊敬しています。

Core Growth Prompting (CGP)が、ソフトウェア開発のハードルを少しでも下げ、シビックテックに参加する人の裾野を広げ、オープンソース活動の持続可能性を高め、
そして新たなシビックテックが生まれるきっかけの一つになれたなら、それ以上に嬉しいことはありません。

次回:Prime Source——ネット記事の信頼性を検証するシステムを特許出願した話

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