キングガルフ(大東音響)/裏モノ連チャン機編-40-【4号機】(パチスロ連チャン機烈伝 第40回)
■「アラブの石油王」という、あまりに立派な渾名の記憶
『アラブの石油王』――当時、この台にはそんな大層な渾名までついていた。人気の裏基盤連チャン機として名を馳せ、石油王の呼び名に恥じぬ出玉感には、確かに凄みがあったと記憶している。しかし、後発のリズムボーイズという台が登場したことで、爆裂王としての座は、いつの間にかそちらに持っていかれてしまった感が否めない。栄枯盛衰というのは、裏モノの世界にも容赦なく訪れるものなのだと、今振り返ってしみじみ思う。それにしても、「石油王」という渾名とは裏腹に、図柄に描かれたアラブ人のあのやる気のなさには、今思い出しても笑いがこみ上げてくる。何しろ、寝っ転がっているのだ。石油王を名乗るのであれば、もっと豪奢に、堂々とした佇まいであってほしいものだが、あの図柄のアラブ人は、まるで昼寝でもしているかのような、実に脱力した表情でリールの中に収まっていた。この図柄と渾名との間の、なんとも言えないミスマッチこそが、この台の記憶を、いっそう味わい深いものにしているのだと思う。考えてみれば、当時のパチスロ台の図柄というのは、こうした「渾名と実際の絵柄との落差」が、妙な愛嬌を生み出すことが少なくなかった。豪華さを演出したいのであれば、もっとそれらしい図柄をデザインすればよいものを、なぜか脱力感のある、どこかコミカルな絵柄を採用してしまう。この緩さこそが、当時のパチスロ業界全体に漂っていた、ある種の牧歌的な空気を象徴していたようにも思う。今のように緻密に作り込まれた液晶演出や、版権キャラクターの表情管理が徹底されている時代とは違い、あの頃はこうした「ちょっとした抜け感」が、むしろ台の個性として愛されていたのだ。連チャンの性質については、私は状態モノではなかろうかと感じている。状態モノとしては、万枚スペックを備えていた台だったことは間違いない。しかし、この台にまつわる私の実戦記憶は、決して華々しいものではなかった。むしろ、遠征の苦労と、肩透かしに近い結果の方が、今も鮮明に残っている。
パチスロ連チャン機烈伝 第41回 キングガルフ(大東音響)/裏モノ連チャン機編-40-【4号機】
※ 2026年07月29日03時44分
■第一章:厚木から大磯への、あの遠い道のり
キングガルフという台の設置店は、神奈川県では、私の住んでいた厚木市には存在しなかった。この台を打ちたいがために、私は大磯まで遠征することになった。地元の方であれば、すぐにピンとくるネタだろう。そう、川沿いにあったあのお店の話だ。小腹が空いたときには、国道1号を渡ってマクドナルドを買い、それを頬張りながら実戦を続けていたことを覚えている。結局、あのお店での実戦は、たった一回きりで終わってしまった。厚木から見ると、大磯という場所は、なんとも中途半端に遠い距離にあった。私は小田原民ではないので、近道というものを知らなかった。平塚まで国道129号を南下し、そこから1号国道を大磯まで走るという、今にして思えば、かなりの遠回りをしていたことになる。デリ車を走らせるようになった今の私であれば、横を斜めに突っ切るように走れば、かなりの時短ができることも分かっている。しかし、あの当時の私は、そんな道の知識を持ち合わせていなかった。若かったあの頃の私にとって、大磯までの道のりは、単なる移動時間以上に、遠く感じられるものだったのだ。こうした「距離」という要素は、当時のパチスロという趣味において、想像以上に大きな意味を持っていた。今のようにカーナビやスマートフォンの地図アプリで最短ルートを瞬時に検索できる時代とは違い、当時は自分の知っている道だけを頼りに、遠回りを承知の上で走り続けるしかなかった。この「知らないがゆえの遠回り」というのもまた、あの時代特有の、ある種の味わいだったのかもしれない。今こうして振り返ると、あの遠回りの道中の記憶――国道129号の景色や、平塚を経由して1号線に合流する感覚、そして大磯の川沿いに近づいていくときの、あの独特の高揚感――も、実はキングガルフという台そのものの記憶と同じくらい、私の中で鮮明に残っている。目的地に着くまでの過程そのものが、一つの物語として記憶に刻まれる。これもまた、遠征という行為が持つ、隠れた魅力の一つなのだろう。
■第二章:独占状態の朝一、そして静かな当たり
朝一でお店へは到着していたのだが、スロットのシマへ開店から走る者は、誰一人いなかった。ましてや、裏モノのキングガルフに走る人間など皆無だった。結果として、朝の台選びは、私の完全な独占状態となった。この状況からして、このお店はリセットモーニングを仕込んでいないのか、あるいはそもそもキングガルフという台自体に、リセットモーニングの機能が搭載されていない可能性すらあった。台の仕様も分からない以上、とりあえずは1,000円ずつカニ歩きをして様子を見ることにした。すると4台目で、無事にリセットモーニングらしき台の挙動による当たりを掴み、ビッグ4連という滑り出しを見せてくれた。しかし、そこから先は、ハマりと単発を繰り返すばかりで、最終的には出玉をノマしてヘタレ止めをしたことを覚えている。私が台を止める頃になっても、まだ他に一人しか打っている人間がいなかった。「人気がないな」というのが、あの日の率直な感想だった。雑誌では派手な連チャンが紹介されていたが、実際に打ってみると「眉唾なんだよなあ」と思わざるを得ない、そんな空気を感じながらの実戦だった。結局その日は、爆連している台を一度も目にすることなく、静かに撤退することになった。この「カニ歩き」という手法自体、当時の裏モノ実戦においては、ごく当たり前の作法だった。どの台が仕込まれているのか分からない以上、少しずつ資金を分散させながら様子を見る。この地道な作業には、決して派手さはないが、そこにも独特の緊張感があった。1,000円を投入するたびに、「これで当たりが引けるか、それとも次の台に移るべきか」という、小さな判断の連続を強いられる。この積み重ねこそが、裏モノ実戦というものの、地味だが確かな醍醐味だったのだと思う。
■第三章:興味の移り変わりと、たった一度きりの実戦
その後、キングガルフよりもリズムボーイズへと、私の興味は移ってしまった。そのため、あの日が、私にとって最初で最後の実戦になってしまったのだ。台そのものの底力は、あの程度のものではないだろうと、当時から想像はついていた。むしろ、あのお店の設定状況そのものが、腐っていたのだろうと感じている。この「一度きりの実戦で判断を下してしまう」という経験は、裏モノというジャンルを追いかける上で、決して珍しいことではなかったように思う。一つの店、一つの日の印象だけで、その台全体の評価を決めてしまう。冷静に考えれば、これは決して公正な評価の仕方ではない。しかし、遠征という行為に多くの時間と労力を費やす以上、何度も同じ台を追いかけ続けるという贅沢は、なかなか許されなかった。あの当時の私にとって、キングガルフという台は、まさにこの「一度きりの印象」だけで、記憶の中に固定されてしまった存在だったのだ。その後、5号機の時代になってから、巣鴨のスロットゲーセン、ライズさんで、この台を打つ機会があった。今度はリセットモーニングを仕込んでもらった上での実戦だった。店員さん曰く、リセットモーニングから爆連することは稀で、自力の初当たりからロングの状態に入ることがほとんどだという話を聞いた。この話を聞いて、私が朝一に訪れたあの日、キングガルフのシマだけが閑古鳥の鳴くような状態だったことにも、深く頷けるものがあった。常連の打ち手たちは皆、朝一に旨味がないことを、経験則として知り尽くしていたのだろう。思えば、この手の「常連だけが知っている旨味の時間帯」という情報は、当時のホールに通う打ち手にとって、非常に重要な資産だった。雑誌に載る攻略情法だけでは決して分からない、その店特有の癖や傾向。これを掴んでいるかどうかで、実戦の結果は大きく変わってくる。私のように、遠方から一度だけ訪れる打ち手は、こうした店特有の情報を持ち合わせていない分、どうしても不利な立場に置かれてしまう。これもまた、遠征実戦という行為が抱える、宿命的な弱点だったのだろう。
■第四章:アウェー実戦という名の、養分の物語
これはまさに、アウェー実戦の怖さだと思う。私は結局、養分にされ、他の誰かのために連チャン台を育てるだけの実戦をしていたことになる。しかし、これもまた、裏モノ実戦というものの醍醐味の一つなのだと、今の私は思っている。情報が完璧ではない時代だったからこそ、自分自身で実際に打ちながら、肌感覚を磨いていくしかなかったのだ。今の時代であれば、インターネット上のコミュニティやSNSを通じて、どの店のどの台がどういう挙動をするのか、瞬時に情報を共有することができる。しかし当時は、そうした情報網が存在しなかった。だからこそ、遠方の店にわざわざ足を運び、実際に自分の身銭を切って確かめてみるしかなかったのだ。この「情報の不完全さゆえの手探り感」こそが、当時の裏モノ実戦という行為に、独特の緊張感と面白みを与えていたのだと、今振り返って改めて思う。「養分」という言葉には、どこかネガティブな響きがある。しかし、こうして何十年も経ってから振り返ると、あの日の私が誰かのために連チャン台を育てる役回りを演じていたのだとしても、それはそれで一つの経験として、決して無駄ではなかったのだと思えるようになった。パチスロという趣味において、勝つ日もあれば、こうして誰かの養分になる日もある。この浮き沈みの積み重ねこそが、長く続けるからこそ味わえる、この趣味の奥深さなのだろう。
■第五章:大東音響というメーカーの、静かな終焉
その後、大東音響は裏モノで摘発され、検定取り消し処分を受けた機種も多かったのだが、キングガルフはその撤去対象にはならなかった。ところが、厚木界隈には設置店が存在しなかったため、その後打つタイミングは、ライズでの実戦まで訪れることはなかった。大東音響という会社は、裏モノで摘発されても、会社自体はすぐには潰れなかった。規則上、3年間は検定の持ち込みができないという制約があったが、大東音響の場合、その後は5号機を2機種発売しただけで、それ以降はスロット事業から静かに撤退してしまった。大東音響から藤興へと社名を変え、5号機の開発を続けたものの、最後に世に送り出した台がキングガルフ2だったというのも、なんとも運命的な物語だと思う。あれほど面白い台を開発するメーカーだったのに、最終的にはひっそりと業界を去っていくことになったのだ。一つだけ、気になっていたことがある。リールの止まり方だけは、決してショボくはなかっただろうか。当時、この違和感を覚えたことを記憶している。「連チャンしないのは、台そのものが壊れているのではないか」などという、余計な心配までしてしまったほどだ。結局、摘発以降、このメーカーは勢いを完全に失ってしまった。エーアイのようにしぶとく粘り、業界に覇を唱え続けたメーカーもある中で、マックスアライドの消滅と、この大東音響の撤退は、当時のパチスロファンにとって、どこか悲しい結末だったように思う。キングガルフという台の、あの硬派な7図柄と、やる気のないアラブ人図柄という、あまりにちぐはぐな組み合わせは、私自身は決して嫌いではなかった。むしろ、もう少し、あの渾名にふさわしい本気の出玉感を味わいたかった、というのが正直な気持ちだ。大東音響や高砂電器産業の裏モノは、低設定域ではほとんど連チャンしないという傾向があり、これが「クソ台豹変指数の高さ」という欠点にも繋がっていたように思う。出す気のない店に設置されてしまうと、ただの鬼吸い込みマシンとして扱われ、貯金箱として嫌われてしまう台も少なくなかった。こうしたメーカーごとの傾向の違いを振り返ってみると、裏モノというジャンルもまた、決して一枚岩ではなかったことがよく分かる。同じ「裏モノ」という括りであっても、メーカーごとに設定の使い方、連チャンの発生条件、そして店側の運用方針によって、体感できる出玉感はまったく異なるものになっていた。この多様性こそが、裏モノという文化を、単なる一過性のブームではなく、奥深い研究対象として語り継がせる要因になっているのだろう。
■一度きりの記憶が、今も色褪せない理由
キングガルフという台を振り返るとき、私の中に残るのは、大磯までのあの遠い道のりと、たった一度きりの、決して派手ではなかった実戦の記憶だ。もっと近くに設置店があったなら、あるいはあの日、もっと良い設定に巡り合えていたなら、この台に対する私の印象も、また違ったものになっていただろう。しかし、あの静かな独占状態の朝一と、ビッグ4連の後に訪れた長いハマりという、なんとも地味な結末こそが、この台を私の記憶の中に、忘れがたい存在として刻み込んでいる。パチスロという趣味は、突き詰めれば出玉の増減という数字の勝負に見えるかもしれない。しかし、こうして何十年も経ってから振り返ると、実際に心に残り続けているのは、勝った金額の多寡ではなく、あの遠回りの道のりや、閑古鳥の鳴くシマで一人黙々と打ち続けたあの朝の記憶だったりする。キングガルフという台は、私にとって「勝てなかった台」であると同時に、「アウェー実戦の怖さと、裏モノというジャンルの手探り感を、身をもって教えてくれた台」でもあったのだ。この先も、私はまだまだ裏モノについて語っていきたいと思う。皆さんの台の思い出も、ぜひ聞かせてほしい。ちょっとした酒の肴になるはずだ。思えば、こうした一台一台にまつわる記憶の積み重ねこそが、私にとっての「パチスロ史」なのだと思う。公式に記録された機種のスペック表や導入データではなく、一人の打ち手が、それぞれの台とどう出会い、どう向き合い、どう別れたかという、極めて個人的な物語の集積。キングガルフという台の名前を聞いて、ここまで長々と語れる人間は、そう多くはないだろう。しかし、だからこそ、こうして文章に残しておく価値があるのだと、私は信じている。いつかまた誰かが、この文章を読んで、自分自身の「一度きりの記憶」を思い出してくれたなら、これほど嬉しいことはない。
本稿は個人の体験と記憶に基づく考察コラムです。裏モノ(違法改造台)を推奨・助長するものではありません。
パチスロ連チャン機烈伝 第40回 キングガルフ(大東音響)/裏モノ連チャン機編-40-【4号機】
※ 2026年07月28日16時11分
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