go to schoolはなぜ無冠詞か:「本来の機能」説に欠けたもの
1 go to school と go to the school の違い
英語では「学校に行く」を go to school と言い、school には冠詞をつけません。同じように、go to church、go to bed、go to prison なども無冠詞で使われます。
一方で、勉強以外の目的で学校に行くときは、go to the school のように the をつけることがあります。たとえば、保護者が面談のために学校を訪れる場合や、修理業者が設備の点検や修理のために行く場合です。
2 「本来の機能」説とその問題点
この違いは、ふつう「その場所を本来の機能としてとらえるときは無冠詞になる」と説明されます。つまり、school を「学校という建物」ではなく、「勉強する場」として見ると、go to school になる、という考え方です。
ただし、この説明には大きな弱点があります。「本来の機能」で説明できるなら、図書館・レストラン・スーパーなど他の施設も同じように無冠詞になりそうですが、実際にはそうなりません。
3 library や restaurant にはtheを使う
たとえば、図書館は本を借りたり読んだりするための施設ですが、英語では go to library とは言わず、go to the library と言います。レストランも、食事をするために行くのが本来の使い方ですが、go to restaurant ではなく go to the restaurant です。スーパーについても同じで、買い物に行く場合は go to the supermarket となり、無冠詞にはなりません。
では、無冠詞になる名詞と、the が必要な名詞の違いはどこにあるのでしょうか。
4 無冠詞になる名詞の共通点
実は、無冠詞になる名詞には、長い期間にわたって、定期的に、しかも長時間過ごす場所 だという共通点があるのです。
たとえば school は、一度行って終わる場所ではありません。ふつうは何年にもわたって、月曜から金曜まで、毎日長い時間を過ごします。church も、伝統的には、信仰を持つ人が長いあいだ毎週日曜日に通い、礼拝のために何時間も滞在する場所です。bed も同じで、人は長年にわたって、ほぼ毎晩そこで何時間も過ごします。prison もまた、服役中は毎日24時間生活する場所です。
5 the がつく名詞の特徴
これに対して、library、restaurant、supermarket は、ふつう必要な用事を済ませたら出ていく場所です。図書館は本を借りたくなったときに行く場所で、長期間にわたって、定期的に、長時間過ごすのは一般的ではありません。レストランも、食事のために立ち寄る場所であって、食べ終わったら出ていくのが普通です。スーパーも、ある程度くり返し行くことはあっても、買い物が終わればすぐに出る場所であり、長時間滞在する場所ではありません。
このように、無冠詞になる名詞には「長期間・定期的・長時間過ごす場所」という共通点があると考えられます。そして、この特徴から、なぜ無冠詞になるのかを別の角度から説明することもできます。
6 「内部にいる」という感覚
その鍵になるのが、「内部にいる」という感覚です。
数えられる名詞とは、ふつう、はっきりした形をもち、他のものと区別して一つのものとして捉えられる名詞です。たとえば、ペンやコップは、それぞれ明確な輪郭をもった独立したものとして存在しているので、数えられる名詞になります。
ところが、ある場所の内部に入り込んでいるときには、その全体を外から見て、一つの独立したものとして捉えにくくなります。刑務所がその典型です。刑務所の中に収容されているあいだ、その人は外に立って「刑務所という建物全体」を眺めることはできません。ベッドも同じです。ベッドに入って眠ろうとするときに見えるのは天井や壁であって、ベッドを一つの独立した物として外から眺めているわけではありません。
7 無冠詞が表すもの
つまり、内部にいるときには、その場所全体を外から見渡して、一つの独立した対象として捉えにくいのです。これが、go to school が無冠詞になる理由です。その代わり、これらの語では、その内部で営まれる生活や活動に意識が向くことになります。「本来の機能」とは、このような文脈で理解するべき概念なのです。
8 まとめ
まとめると、go to school の school が無冠詞になるのは、単に「学校の本来の機能」を表しているからではありません。むしろ重要なのは、school、church、bed、prison などが、人がその内部で長期間・定期的・長時間過ごす場所であり、そのために外から一つの独立した対象としてではなく、内部で営まれる生活や活動の場として経験されるという点です。
これに対して、library、restaurant、supermarket などは、ふつうは用事を済ませたら出ていく場所であるため、建物や施設そのものが意識されやすく、the を伴って表されます。したがって、「本来の機能」という説明は、それだけでは不十分であり、その場所を外から眺める対象として捉えるのか、それとも内部に身を置いて経験される場として捉えるのか、という視点を補ってはじめて、無冠詞の使い分けをより適切に説明できるのです。
