【連載小説】『お喋りな宝石たち』~竹から生まれし王子様~第一部 第七話「祖母の気配」
第七話「祖母の気配」
「いえ、それは祖母の願いのようですし、
気になさらないでください」
瑠璃はそう言ったが、
存在を知っていたら会って話をしてみたかった。
淋しそうに笑うのを見て、伍代が話を続けた。
「九十歳前後の方ですと、戦時中に子供時代を過ごして、
戦後も大変だったと思いますから、
余り語りたくはなかったのかもしれませんね」
「そうですね」
「あ………でも、エリスさんと初めて出会ったのは、
竹林だったと言ってました。
だからこの家が気に入っていたのかも………
両親も息子さんの事は知っていたみたいです。
時代が時代ですから、
もしかしたら奉公に出したか、
何か一緒に暮らせない特別な理由があったのかもしれないですね」
瑠璃は祖母の暮らしを、
室内を見つめながら考えていた。
丁寧な暮らしをされていたんだろう。
整理整頓されているのを見て、
私とは真逆だなと小さく微笑んだ。
「では、ここの鍵をお渡ししますね。
気になるようでしたら、
鍵のお取替えをされてもいいですよ」
「有難うございます。
でも、祖母と伍代さんは親子の様だったとお聞きしました。
私も一人ですし、合いかぎをお預けしたいんですけど、
よろしいですか? 」
瑠璃の言葉に伍代は笑うと、
「私もひとり者ですから、
娘のお家と思ってお預かりします」
と鍵を渡した。
あれから更に三日後。
休日に瑠璃はやってきた。
会社の近くに月極で借りるとしたら、
今住んでいるアパートの家賃半分が消えていく。
車の維持費、ガソリン、税金………
どっちが得なんだろう。
貯金だって暮らすのに手一杯で、ほぼゼロに等しい。
どうしようかな………
瑠璃は家の中に入り、
LDKの中にある4畳半ほどの小さな和室に座った。
寝転がるとイ草のにおいがした。
祖母は何を考えていたんだろう。
私にこの家をどうして欲しいんだろう。
そんな事を考えている内に、
ウトウトと眠ってしまったらしい。
目が覚めるとお昼を過ぎていた。
その時何かの気配を感じ、
瑠璃は慌てて起き上がった。
ど、泥棒?
その気配は瑠璃の背後を周り、
小さな仏壇の置かれた床の間で止まった。
お、おばあさん?
瑠璃は目の前に立つ凛とした姿の女性に、
目が釘付けになった。
なんというか、
中世の映画に出てくるようなドレスを身に纏っていた。
父によく似た女性だ。
恐らく祖母なのだろうがその姿は若かった。
彼女は瑠璃の方に向き直ると、
ある方向をさすように腕を伸ばした。
不思議と恐怖感はなく、
自分より若い祖母の姿を見つめていた。
彼女は消える直前、瑠璃の頭に手を乗せると優しく微笑んだ。
瑠璃はしばらくぼう~っとしていたが、
ハッと我に返ると立ち上がり、
祖母の姿を探した。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければサポートをお願いします!
いただいたサポートは物作りの活動費として大切に使わせていただきます。