【連載小説】『お喋りな宝石たち』~竹から生まれし王子様~ 第一部 第一話「宝石王国」
《あらすじ》
十四石の宝石に守られ、地球に落とされた竹から生まれた男の子。
彼の運命と彼を守る宝石たち、そして彼を拾った女性のファンタジー。
主人公蒼川瑠璃は宝石王国の子孫。
老舗の天然石専門店で働いている四十歳。
彼女と小さな王子と宝石の妖精、そして子犬。
瑠璃は王子を守る為?
魔法使いとなり、多くのものと戦うことになる?
そんなふわっとした物語です。
*この物語はフィクションです。実在の人物や団体、地名などとは一切関係ありません。
第一話「宝石王国」
「な、なんてこと………」
宝石王国リソスの女王サピロスは娘リノンの抱く赤子に、
恐ろしいものでも見るような目で言った。
「今すぐその子を殺しなさい。
この王国に置いておくことはできません。
あなたにも分かっているでしょう」
「い、嫌です。私の子です」
亜麻色の髪の美しい女性は、
青い目を潤ませながら母を見つめた。
「あなたに無理なら私がします。
その子を私に」
「で、出来ません」
リノンは手を差し出す女王を拒否し、
赤子を抱きかかえ後退りする。
「そうやってその子を守っても、
この王国では殺されます。
いつまでも隠しおおせるものではありませんよ。
生まれたことが不吉なのですから。
貴方だけでなく結局その子も、
無残に殺される運命しか残されていません」
ただ泣きつくす娘に、
「そのホールに投げ捨てれば、
時空に飲まれて苦しまずに亡くなるでしょう」
女王は冷たく言い放った。
オーロラに囲まれた鍾乳洞のような入り口には、
どこと繋がっているのか、
禍々しい黒い空間が蠢いていた。
リノンは生まれて間もない赤子を、
もう一度そっと抱きしめると、
母に気づかれぬよう胸元にある物を忍ばせた。
『神様。どうかこの子をお救い下さい』
リノンは祈るように赤子を空間に吸い込ませた。
「不吉な子………
大昔にも一度このようなことがあったのですよ。
あの時もあの子はあなたの様に子供をかくまい、
結果この国を亡ぼすところでした。
この国は契約の上で成り立っています。
それを違える事があってはならないのです。
私はこの国を守らねばなりません。
これでこの国も安泰です」
女王はもう一人の赤子を抱き上げると、
大切に崇めるようにあやした。
「この子こそ、我が国の真の跡継ぎです。
さぁ、祝いの宴の準備を始めなさい。
今夜は国を挙げての祝いの日です」
女王の笑顔にリノンは涙を流した。
「ごめんなさい…」
その涙は宝石となって、
床に零れ落ちた。
天然石専門アクセサリーショップ。
ここは全従業員たった五名の、
小さな老舗のお店だ。
この辺りはアクセサリー店が多く、
売り上げをあげている所もあるが、
反対にここの様に流れに乗れず、
潰れかかっている? ような老舗もあった。
そうはいっても、
アクセサリー自体の売り上げはいいので、
社長も含めて皆でちまちま商品を作っていた。
「今日はネット注文が多かったですね」
画面を確認していた翠が言った。
新入社員が入ってこないので、
最も若い三十歳の秋川翠が商品を入力していた。
彼女は翠と書いてスイと読む。
翡翠の翠。
社長が彼女が面接に来た時、
「これはうちに入りなさいと、
宝石の神様が言ってるんだよ」
と嬉しそうに話していた。
「皆さん、珈琲淹れましたよ」
蒼川瑠璃はトレイを手にデスクに置いた。
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