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壺を割るのは、愛情表現だったのかもしれない。——ドラゴンクエスト勇者の心理学論文、書きました。


こんにちは、黒パグです🐾
学生時代心理学を学んだ記憶をほじくり返しつつリメイク版DQ7をプレイしてたら書きたくなりました。当時の記憶を思い起こしつつ。


第1幕 あなた、壺割ってましたよね
白状してください。
ドラゴンクエストをプレイしたとき、村に着いたらまず壺を割りましたよね。
タンスを開けましたよね。
住人の家に無断で入って、隅々まで漁りましたよね。
しかも一切の罪悪感なしに。
「勇者だから」でも「ゲームだから」でもなく、もはや反射として。
壺を見たら割る。タンスを見たら開ける。
それがドラクエというものだと、身体が知っていた。


そして当然のように、村人は何も言わなかった。
衛兵も来なかった。
王様もお咎めなしで「魔王を倒してくれ」と言い続けた。
みんなで、黙って、容認していた。
あなたも共犯者です。
ようこそ。

第2幕 笑えるのはわかった。でも、なんで笑えるんだろう。

「ドラクエあるある」として笑えるのはわかる。
でも少し立ち止まってほしい。
なんで笑えるんだろう、これ。

はい、器物損壊です。不法侵入です。窃盗です。アウトです。
現実でやったら一発アウトの行為を、三十年以上にわたって、何千万人ものプレイヤーが、何の疑問も持たずに繰り返してきた。
そして誰も本気で「なぜか」を考えなかった。
「ゲームだから」。
そう言って笑って、終わりにしてきた。
でも待って。
ゲームだから、では説明できないことがある。
なぜ、やめられないのか。
ツボックに裏切られても、ミミックに殺されても、また次の壺を割りに行くのか。
なぜ村人は、目の前の犯罪を、三十年間一度も止めなかったのか。
この問いに、三十年間、誰も本気で答えを出していなかった。
私は本気で考えた。
心理学の棚を全部引っ張り出して。

第3幕 心理学が出てきた

結論から言います。

勇者が壺を割るのは、強いからじゃない。
信じるのが、怖いから。
だから先に、確認する。

ドラクエの勇者を思い出してほしい。
ほぼ全シリーズに共通するモチーフがある。
孤児。または、故郷を失った者。
親がいない。安全な場所がない。
頼れる人間がそもそもいない状態から旅が始まる。
心理学にはこんな言葉がある。
「回避型愛着」。
安全基地を失った人間がとる適応戦略だ。
「どうせ裏切られる」「頼ったら危ない」という経験から、感情的なつながりより物的な確認と蓄積に自己保存の重心を移す。
人を信じる代わりに、壺を割る。
感情的な安心の代わりに、アイテムを集める。
「壺を割る」は、愛情表現だったのかもしれない。
自分が生き残るための、孤独な儀式として。

ところがここで問題が起きる。
ツボックだ。ミミックだ。
信じて開けたら、裏切られた。
「やっぱり信じたらダメだ」という証拠が、ゲームから突きつけられる。

心理学的に何が起きるか。
罰を受けると、探索行動が減るはずだ。普通は。
でもHCESの世界では逆のことが起きる。
罰を受けるほど、次の壺を割る確率が上がる。


「壊さなかったら襲われるかもしれない」という恐怖が、予防的な破壊衝動を生む。
未探索の壺が、不安の塊になる。
壊すことが、不安を消す儀式になる。
そして「何も出なかった」「何も起きなかった」、
それ自体が報酬になる。
「今回は大丈夫だった」という安堵が、また次の壺を割らせる。
これを行動科学では消去抵抗という。
一度このループに入ると、やめるのが極端に難しくなる。


(隠しアイテムの心理学的図鑑。まほうのせいすい=即時消費型、きようさのたね=恒久強化型、ちいさなメダル=希少象徴型。「核心的洞察:壺を壊す行為自体は報酬ではない。報酬の『分布へのアクセス権』を得る行為である。」)


「壺を割るのをやめられない」は、意志の問題じゃなかった。


第4幕 村人も、王様も、全員グルだった
さて。
勇者の話はわかった。
でも待って。
止めなかった村人、あなたはどうなんですか。
目の前で壺が割られている。タンスが漁られている。
見てたでしょう。
黙ってたでしょう。
「英雄だから仕方ない」って思いましたよね?


これも心理学に名前がある。
傍観者効果。
自分以外にも見ている人がいると、「誰かが止めるだろう」と責任が分散される。
でもDQの世界はさらに特殊だ。
村人全員が、勇者に英雄依存している。

介入確率のシミュレーションをした結果、
DQの世界では理論上ほぼゼロに収束した。
誰も止めない。止められない。止める気がない。
それが均衡状態として成立している。
そして極めつけは王様だ。

魔王を倒してきてくれ。
報酬は……雀の涙。
やりがい搾取の完成形だ。

勇者は感謝と使命感で動き、村人は英雄に依存し、王族はその構造を維持する。
三者が互いを強化し合う共依存のトライアングルが、ゲームの世界を安定させている。
あなたは勇者として壺を割り、
村人として黙って見ていた。
二重の共犯者だ。

第5幕 本気で論文にしました
というわけで、書いた。
「ドラゴンクエスト勇者の強迫的領土侵入行動:回避型愛着と社会的認知バイアスの境界線」
愛着理論、強迫性障害、オペラント条件付け、傍観者効果、認知的不協和。
既存の心理学概念を全部引っ張り出して、ドラクエというフィールドに写像した。
数式も書いた。シミュレーションも11本走らせた。



新症候群の名前も付けた。
HCES。Heroic Compulsive Exploration Syndrome。
勇者探索症候群。

誰も傷つけない。誰も診断しない。
「これ、人間の深層心理の地図だ」というただの構造の名前だ。
論文の前置きにはこう書いた。
真面目にふざけて、真剣にくだらない。これが黒パグ流心理学です。
数式はPDFに全部入れた。
シミュレーション図も11枚ある。
査読Q&Aも10問答えた。
本気の遊びを、置いておく。
📄 HCES論文完全版(PDF) 

📊 補遺E:シミュレーション11本(PDF) 



オチ そして第2報の予告
ひとつだけ、論文に書けなかったことがある。
なぜ勇者は、馬のフンを持ち続けるのか。
使い道がない。売れない。捨てる理由しかない。
なのに、持ち続ける。


これも心理学に説明がある。
シミュレーションKで先行実験だけ走らせた。
回避型HCESでは保持確率が0.9を超えた。
「捨てられない」は意志の問題じゃない。
蓄積された埋没コストの、必然的な帰結だ。
第2報、準備中。



黒パグです。ここまで読んでいただいてありがとうございました。
noteを始めた最初期に「妄想と科学の境界線マップ」という記事を書きました。
どこがセーフで、どこからがアウトか。
学術的に殴られないための、自分なりの地図です。
この論文は🟡ゾーンで遊んでいる。
構造的写像であって、因果の主張じゃない。
そのことを最初から知った上で、全力で書いた。
難しいことをわかりやすく。
くだらないことを真剣に。
それが黒パグスタイルです。
→ 境界線マップはこちら
https://note.com/ideal_slug1407/n/n5d3dab8c8755
#ドラクエ #心理学 #論文 #HCES #境界線シリーズ


おまけ

なんで私はまたキーファに種をあげてしまうのか!!当時後悔したんじゃなかったのか…
全然進めてないけど楽しいねDQ7
ガボが特殊能力でフロアにある宝を教えてくれる機能便利すぎ
そしてツボを割る。

おしまい

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