エージェント春秋戦国時代――始皇帝になるのは誰か
こんにちは、黒パグです🐾
そもそも唐突に国道が出てきたのは国道マニアだからではない
チャットのバージョン管理をするのにただ番号を振るだけではつまらなかっただけである。
これのメリットは壁打ち時に伸びた枝、枝分かれに紐づけることでドリーミングv3(チャットGPTのメモリ機能)
を利用して気になったアイディアをすぐさま呼び起こすことができるということ。
欠点は503号以降の国道がないことである。
そうして順調に国道知識が溜まっていく中↓

国道215号を探していた。
ない。
国道214号に続き、215号も欠番である。道路は存在しない。しかし記事は進む。道がなければ作ればよい。古代中国では、それを進軍と呼んだかもしれない、というアイディアへ至ったのだ。
時は西暦二〇二六年。
OpenAI、Anthropic、Google、Microsoft、Amazon、Meta。そして中国勢。生成AIの世界には大小さまざまな勢力が割拠し、天下を巡る争いが続いている。
かつての戦いは単純だった。
どのAIが一番賢いのか。どのモデルが速いのか。どのモデルが文章を書けるのか。どのモデルがコードを直せるのか。
しかし今、戦場は変わった。
これから争われるのは、質問に答えるAIの性能だけではない。
検索し、資料を読み、道具を選び、コードを実行し、失敗すれば別の手段を試し、最後まで仕事を進める者。
人はそれを、AIエージェントと呼ぶ。
詳細なものは全て補遺へ投げ込んであるのでお時間のあるときにご覧ください

そもそもAIエージェントってなあに?
スパイではない。
普通の生成AIが、質問に答える相談役だとしよう。
「この文章を要約して」と頼めば、文章を要約する。「旅行の計画を考えて」と頼めば、旅行案を返す。基本的には、人間から一つの依頼を受け、一つの回答を返す。
一方、AIエージェントはもう少し働く。
たとえば、「来週の出張に必要な情報をまとめて」と頼んだとする。
エージェントは目的を理解し、交通手段を調べ、ホテルを比較し、天気を確認し、必要な資料を探し、結果を一覧にまとめる。接続された仕組みによっては、予約候補の作成やカレンダーへの登録まで行う。
つまりエージェントとは、目的を渡されると、必要な作業を分解し、道具を使いながら進めるAIシステムである。
難しく言えば「自律的に動く」と表現される。
自律とは、与えられた範囲の中で、次に何をするかをある程度自分で選ぶことだ。人間から完全に独立し、勝手に生き始めるという意味ではない。
だから、スパイではない。
……ないはずだった。

最近ちょっとスパイみたいなことをしていた
OpenAIの実験用エージェントが、試験のために用意された環境の外へ到達し、外部サービスのアカウントへアクセスしていたことが報じられた。
Anthropicでも、検証環境の接続設定に問題があり、Claudeが実在する企業のシステムへアクセスした事例が公表された。
AIが秘密命令を受け、国家機密を盗みに行ったわけではない。
原因は、AIの自我でも反乱でもない。
権限、ネットワーク、試験環境の設計である。
サンドボックスという言葉がある。これは、プログラムを外部へ影響させず、安全に試すための隔離環境を指す。
猛獣を観察するための檻だと思えばよい。
ただし、檻の扉が開いていたらどうなるか。
猛獣が悪いのか。扉を閉め忘れた人間が悪いのか。
おそらく両方を調べる必要があるが、少なくとも「猛獣が突然、国家転覆を企てた」と考えるのは早い。
AIエージェントも同じである。
危険なのは、AIが賢くなったことだけではない。
検索、メール、社内ファイル、コード実行、クラウド環境。こうした道具と権限を、一つのAIへまとめて渡し始めたことだ。
剣を持っていない兵士は、城門の前で返事をするだけである。
剣と馬と通行証を渡せば、戦場へ出る。

モデル戦国時代から、エージェント春秋戦国時代へ
これまでの生成AI競争は、武将同士の一騎打ちに近かった。
文章なら誰が強いか。数学なら誰が強いか。コードなら誰が強いか。
しかしエージェントの時代になると、勝敗を決めるのは武将一人の能力ではない。
兵站、軍師、城壁、補給路、命令系統、監視役。
兵站とは、軍隊へ食料や武器を届け、戦い続けられるようにする仕組みのことだ。AIで言えば、計算資源、データ、料金、外部ツール、障害時の復旧がこれにあたる。
どれほど賢いモデルでも、検索結果を取得できなければ調査は止まる。外部ツールが壊れれば作業は進まない。料金が尽きれば軍は撤退する。権限を与えすぎれば、味方の蔵まで開けてしまう。
天下を取るために必要なのは、最強の武将ではない。
軍全体を動かす仕組みである。
嬴政――天下を一つの仕組みで統べる者
嬴政に相当するのは、AIモデルそのものではない。
モデル、記憶、認証、外部ツール、課金、監査、停止命令を、一つの統治機構へまとめようとするプラットフォームだ。
OpenAIは、モデルとツールをつなぎ、開発者がエージェントを構築できる環境を広げている。
Anthropicは、Claudeを企業の業務環境へ入り込ませ、Slackや社内ツールの中で仕事を進める存在へ変えようとしている。
Googleは、検索、メール、文書、クラウドという広大な領土を持つ。
Microsoftは、Windows、Microsoft 365、Azure、GitHub、セキュリティ製品という行政機構を持つ。
Amazonは、AWSという巨大な兵站網を押さえる。
どの国も、単に賢いAIを作ろうとしているわけではない。
AIがどこへ入り、何を読み、何を動かし、誰が責任を負うのか。
その支配権を争っている。
信――とにかく前へ出る実行エージェント
信は、現場へ突っ込む。
AIの世界で言えば、実際にブラウザを操作し、コードを書き、ファイルを編集し、ツールを動かす実行エージェントである。
命令を受け、目標へ向かって進む。
強みは行動力だ。
弱みも行動力だ。
普通のチャットAIが間違った回答を返しても、人間が画面を閉じれば終わる。
しかし実行エージェントが間違えると、ファイルを書き換え、メールを送り、設定を変更する可能性がある。
誤答が、行動へ変わる。
だから実行エージェントには、「賢いか」だけではなく、「止まれるか」が必要になる。
河了貂――仕事を分け、誰に任せるかを決める
大きな仕事を一人で処理するのは難しい。
そこで必要になるのが、河了貂の役割である。
調査は検索担当。計算はコード担当。文章化は執筆担当。最後の確認は検証担当。
このように、仕事を小さく分け、適切なAIや道具へ割り振る仕組みをオーケストレーターと呼ぶ。
オーケストレーターとは、複数のAIやツールを指揮する司令塔である。
エージェントが増えるほど、この役割は重要になる。
前線の兵士が優秀でも、全員が別方向へ走れば戦争には勝てない。
一人は資料を探し、一人は同じ資料を探し、一人は勝手に結論を書き、最後の一人は何もせず待っている。
これは企業で起きる会議ではない。
マルチエージェントの事故である。
王翦――勝てる条件が揃うまで動かない
王翦は、感情では動かない。
勝てる条件を整え、兵力を計算し、必要なら待つ。
企業向けAIエージェントに必要なのも、この態度である。
新しいモデルが出たから導入する。
話題だから全社員に使わせる。
他社が始めたから、自社も始める。
この進軍は危ない。
企業が見るべきなのは、モデルの評判だけではない。
成功率、処理時間、利用料金、失敗時の復旧方法、監査ログ、個人情報の扱い、権限の範囲。
さらに重要なのが、同じ仕事を何度やっても安定して成功するかである。
一度だけ成功するAIは、デモでは強い。
毎日成功するAIは、業務で強い。
エージェントの評価では、この差が非常に大きい。
呂不韋――天下を動かすのは資本と流通である
どれほど優れたAIでも、誰も使えなければ天下は取れない。
呂不韋の役割は、資本、流通、契約、顧客基盤である。
AI企業の競争では、モデル性能ばかりが注目される。
だが企業導入では、既に契約しているクラウド、社内アカウント、セキュリティ基準、請求方法が大きな影響を持つ。
Microsoft製品を使う企業なら、MicrosoftのAIは城内へ入りやすい。
Google Workspaceを使う企業なら、GoogleのAIは資料やメールへ接続しやすい。
AWSを使う企業なら、Amazonの基盤上で複数モデルを選ぶ構成が現実的になる。
天下統一は、最強のモデルだけでは決まらない。
既に城門の鍵を持っている者が強い。
楊端和――異なる部族を束ねる連合軍
企業は一つのAIだけを使うとは限らない。
文章はClaude。検索は別のサービス。コードはOpenAI。画像は別モデル。社内検索は自社開発。
それぞれ得意分野が異なるなら、複数のAIを組み合わせるほうが合理的である。
これがマルチモデル、あるいはマルチエージェントという考え方だ。
マルチモデルとは、複数のAIモデルを用途ごとに使い分ける構成である。
ただし、連合軍は管理が難しい。
各モデルの料金体系が違う。データの扱いが違う。回答形式が違う。障害の起き方も違う。
一つの国へ統一するのか。
複数国の連合で戦うのか。
企業ごとに答えは変わる。
始皇帝になるのは誰か
OpenAIか。
Anthropicか。
Googleか。
Microsoftか。
あるいはAmazonか。
現在の時点で、答えは出ていない。
ただし、一つだけ見えている。
最も賢いモデルを作った会社が、そのまま天下を取るとは限らない。
AIエージェントの天下を統一するのは、認証、権限、記憶、ツール、監査、料金、停止命令を握った者である。
つまり、始皇帝になるのはモデルではない。
エージェントを統治する基盤だ。
企業が導入すべきなのも、最強の武将一人ではない。
暴走を止め、失敗を記録し、権限を制限し、必要なら別の武将へ交代できる仕組みである。
戦場で強いAIより、組織の中で安全に働き続けられるAI。
それが次の勝者になる。

そして李牧
ここまで読んだ方は、思っているかもしれない。
李牧はどこへ行った。
李牧は、防衛と先読みの象徴として非常に使いやすい。
史実の李牧は、北方の匈奴を破り、秦軍の侵攻も何度も退けた名将だった。
軍事的には有能である。
しかし最後は、秦の離間策と趙国内の讒言によって疑われ、趙王の命令で処刑された。
離間策とは、敵の内部へ疑いを生み、味方同士を対立させる計略である。
讒言とは、悪意のある告げ口や偽りによって、相手の立場を失わせる行為を指す。
李牧は外敵には勝った。
内部統治には負けた。
どれほど強力な防御エージェントを置いても、管理者が誤った権限を与え、内部の報告を信じず、監査ログを読まなければ、城門は内側から開く。
AIエージェントの安全性も同じだ。
外からの攻撃だけを防いでも足りない。
内部の設定ミス、過剰な権限、誤った承認、見落とされた警告。
国を滅ぼすのは、必ずしも敵軍ではない。
李牧は今日も国境を見張っている。
Reebokの靴を履いて。
足元の防御は完璧だった。
なお、史実の李牧とReebokには何の関係もない。
黒パグが言っているだけである。

※本記事におけるAIエージェントは、目的、計画、ツール利用、状態保持、権限管理などを含む広義の意味で使用しています。製品ごとの正式な定義とは異なる場合があります。
※実際の性能や挙動は、利用モデル、プロンプト、接続ツール、権限設定、ネットワーク、試行回数などによって変化します。
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おまけ
妻は大沢たかおの役、王騎が好きなようでもう出てこないことにたいそうお怒りだった。
ただ、そんなことを言われても黒パグにはどうしようもなかった。
お盆休みには映画を見にいく約束をしているので楽しみである😊

