アサヒィ!スゥーパァーどぅぅらあ“ぁ”ぁぃ
こんにちは、黒パグです🐾
子どもがまだ小さかったころ、夜泣きがひどかった。
何をしても泣き止まない。
抱っこしても、あやしても、部屋の中を歩き回っても泣き続ける。
こちらも寝不足で、そろそろ限界だった。
そんな夜だった。
ギャン泣きする子どもの向こうで、つけっぱなしのテレビからCMが流れてきた。
アサヒィ!
スゥーパァーどぅぅらあ“ぁ”ぁぃ!!
子どもが泣き止んだ。
偶然だと思った。
しかし、次に夜泣きしたとき、試しにやってみた。
アサヒィ!
スゥーパァーどぅぅらあ“ぁ”ぁぃ!!
また泣き止んだ。
理由はわからない。声の高さがよかったのか、妙な勢いが気になったのか。それとも、寝不足の父親が突然ビールのCMを全力で再現し始めた光景に、赤ちゃんなりの危機感を覚えたのかもしれない。
それから一年近く、子どもが夜泣きするたびに、わが家ではスーパードライが連呼された。
深夜のリビングで、私は何度も叫んだ。
アサヒィ!
スゥーパァーどぅぅらあ“ぁ”ぁぃ!!
商品の宣伝をしているわけではない。
ただ、寝たいのである。
子どもを泣き止ませたい一心で繰り返しているうちに、発音、間の取り方、語尾の伸ばし方まで磨かれていった。
子どもが大きくなった今でも、私はこのモノマネができる。
しかも、かなり完璧に。
本来なら必要のない技能である。履歴書にも書けない。仕事にも使えない。
けれど、その声を出すと、家族はあのころを思い出す。
夜泣きする子ども。
寝不足の父親。
テレビから偶然流れてきたCM。
そして、突然静かになった部屋。
妻は今でも、事あるごとにスーパードライを買ってくる。
味が好きだからかもしれない。飲み慣れているからかもしれない。
けれど、きっとそれだけではない。
スーパードライは、わが家にとって家族の一コマに置かれていた飲み物だからだ。
飲み物の記憶は、味だけでは残らない。
缶を開ける音や、食卓の風景や、そのころ一緒にいた人。ときには、夜泣きしていた子どもを一瞬で黙らせたCMの声まで、全部まとめて一本の中に残っている。
だから今日も、冷蔵庫に銀色の缶がある。
そして私は、今でも完璧に言える。
アサヒィ!
スゥーパァーどぅぅらあ“ぁ”ぁぃ!!
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