KAMITO KUMATO〜神と熊と〜
プロローグ
やせいのくまが あらわれた! なかまになりたそうに こっちをみている。
いや、目の前の熊はこっちにケツを向けている。こっちを向いていたらそんな冷静ではいられない。
黒々とテカった大きな毛皮の塊が、草むらからゴロンと飛び出してフリフリしている。
何度見ても、どう見ても熊だ。
頼むからこっちをむかないでくれ。熊にダッシュされたら絶対に逃げられない
けんすけは くまをなかまにしようとしている!
「チッチッチッ、こっちだよー」
「何で小声なんだよ!何で気づかれるようなことしてんだよアホか!」
あれはクマのケツだ。こっちにケツを振っている。ギラついた生命力の塊のような存在感とは裏腹に、ガサガサとか、パキパキっとか、動いている音が聞こえない。あたりには朝日が差し込み、小鳥たちの囀りが聞こえる。
「こっちは武器とかねーんだから。ホラッ!刺激すんなよ」
心拍数が爆上がり。くるなら戦うか、手に持ったトレッキングポールと熊スプレーを構えながら、熊と戯れようとしているアホなけんすけを制する。刺激すんなと言っておきながら、ぼくは記念だから、スマホで写真か動画を撮ろうと思っていた。その時、熊の後ろ姿が「撮ったらどうなるかわかってんだろうな」と殺気のようなものを放った。背筋がゾクっとして断念した。
くまは さっきをはなった
ぼくとけんすけは こんらんした
ぼくとけんすけは われにかえった
ぼくたちは すこしものたりなさげに そのばをはなれた
昔、近所にあった商店のおばちゃんの話が走馬灯のように頭をよぎる。
「おれは、山菜の穴場知ってっから、その日も山菜取りに行って、背中のカゴいっぱいに取れた帰りだ。獣道から山道に出て、もう直ぐ里に着くな〜と油断していただ。ザワッと背中に気配を感じてな。サッと振り返ると。おれが通ってきた道の5メートルくらい後ろに熊が立ってこっちをみてたんだ。お互い、バチーン!と目があってよ。しばらく見つめあった。これは目を逸らしたらダメだと感じて、何もしねーかんなー来んなよー。と、睨みを効かせながら、手に持ってるものを一つづつ足元に置きながら、ゆーっくり、そーっと、すこーしづつ後退りしたのよ。その間も熊は、ジーーっとこっちをみてんだよ。おら、そーやって何とか30メートルくらい、目をそらさないようにしながら後退りしてよ。したら、よーやく熊が目を逸らして、山の中の方に歩って離れてったのよ。それを確認してから、最後は山菜入ったカゴまで置いて、鎌だけ手に持って逃げてきただ。どーしてもダメだったら、この鎌でぶっ殺してやるって思ってたからよ。鎌は手放せなかったな〜。いやーーーーあれは生きた心地がしなかった。怖かったよ〜。クマと目があったら絶対に目を逸らしちゃなんねー」
日常的に、熊が通学路に出没するような山の中だったから、他人事ではなかった。
少しつまらなそうな、ブータレた顔のけんすけを連れて、山頂をめざした。
これは にちじょうせいかつの
じゃあくとこんめいに のみこまれた
ぼくとけんすけが みたけのしぜんに
ゆめときぼうを さがしにいくものがたり
ぼうけんのはじまり
今日は、記念すべき今年1回目のけんすけとの山登りの日だ。前日は準備をしながら興奮してしまい、酒を飲み夜更かしをしてしまったので、もちろんお酒は体内に残っている。ぼくはポカリを飲みながら、駅の改札前のシャッターがゆっくりと開く瞬間を拝みながら、旅立つのだった。
抱えたリュックに器用にもたれ掛かりながら、気がつくと待ち合わせの立川駅に着いた。私は迷いなく、無人NewDaysに直行し、おにぎり、パン、温かいほうじ茶を購入。ベンチに座って行き交う人の流れを眺めながら、早い朝食をとる。
朝食が終わると一連のルーティーンが始まる。みなさん微妙な顔で並んでいるトイレの行列に並び、用を済ませ、歯を磨き、ベンチに戻り待ち合わせの時間を待つ。余裕を持った行動で我ながら完璧だなと自画自賛してみたものの、待ち合わせの1時間前に着いてしまうのも考えものだ。性格なので仕方がない。これがすまないと安心して山を登る事ができない。
けんすけがあらわれた! ねぐせをつけてなかまになりたそうに こっちをている!
なかまにしてあげますか?
ぼくはNewDaysで買ったコーヒーを渡した。
けんすけは うれしそうにでんしゃにかけこんだ!
けんすけが なかまになった!
目的地は、御岳山。駅に降り立ったぼくたちの目の前には、清々しすぎるくらいの青空に、東京とは思えない澄んだ空気、杉花粉症の元凶にしか見えない山々が、立ちはだかっている。開いたステータス画面ならぬ、スマホのマップには本日のルートと、現在位置が表示されている。
御嶽駅〜高峰山〜日の出山〜武蔵御嶽神社〜休憩〜御岳滝本駅バス停
大きな橋から見える谷底の川は、これから始まる波乱に満ちた「ぼくたちのぼうけん」を暗示するかのように、渦巻いて激しく流れていた。
立派なのにペタンコリュックのけんすけ、パンパンリュックのぼく、準備は万端だ。
ぼくらのぼうけんは まくをあけた!
れいが あらわれた
最初の目的地は高峰山山頂だ。レアなアイテムが見つかるわけではないが、直接御嶽神社に行ってしまうより山に登ってる感を味わえる。期待に胸を膨らませ、僕達はまっすぐ歩みを進める。
・・・ いきどまりで すすめない
ねっとの むこうがわに いけそうだ
ねっとに さいくを みつけた!
隠し扉だ!出発早々に旅が終わってしまうところだった。
イノシシに注意!とか、熊に注意!という看板が立っている。ここから先はモンスター・・・ならぬ野生動物がいる、という人が決めた境界線のようだ。野生動物からすればそんなの知らねーよだし、ぼく的には、家を出たら外敵注意な感覚なのだが。せかいはひろい。
隠し扉を抜けると、急な斜面に細い獣道のような登山道が現れる。所々、足元に何かのうんこが落ちている。2本のトレッキングポールを伸ばし、既に息切れしているけんすけに一本渡す。
「ほら、けんすけ!お前膝おかしいんだから使えよ。心許ないけど、万が一熊が出た時これで多少防御もできるかもな〜」
「お〜〜・・・はあ!はあ!・・・」
「早すぎだろ」
「あ〜やべえ〜・・・はあ!はあ!」
すずめばちが あらわれた
すずめばちは ほかのことに きをとられている
ぼくたちは しげきしないように よけてすすんだ
10分も登り振り返ると、遥か下の方には出発地点の御嶽駅や越えてきた橋、渦巻く川が小さく見える。だんだん息切れも聞こえなくなり、無言で黙々と道なき道を進んでいく。前だけを向いて進んでいると、けんすけが、遠く離れてしまうので、時折振り返りながらペースを調整して足を前に進める。
「あ、あ〜これはしんどいな〜。けんすけ大丈夫?」
「・・・・・南無妙法蓮華〜・・・・・」
「なにぶつぶつ言ってんだよ。こえーよ」
「何も聞こえなかった?・・・ぶつぶつ・・・」
そういえば、こいつは、こういうやつだった。出会った大学の頃からだ。
「やばい!やばい!やばい!早く車止めて!止めて!」
キーッ!!!バタン!!だだだ!
「ちょっと!おいけんすけ!!おい、まて!!!」
急いでぼくも車から降りてけんすけを追った。
「けんすけ!急に車降りてダッシュすんなよ」
「見えなかった?バックミラー、後ろの席にさ、すげー顔してこっち睨んでんの!やべーよあれ」
夜寝れなくて峠にドライブに行った時の事だ。気づいたら霊が後部座席から睨んでいたらしい。その他、心霊写真事件やら、ロフトに住まう霊事件やら色々あった。
れいが あらわれた!
けんすけは じゅもんを となえた
れいを たおした かもしれない
「まったく、何も聞こえなかったな。なんかいた?」
「後ろから声かけられたんだよ。おーいって」
「聞こえなかったでしょ!おーいって、大きい声でさ。いるよ、まじで、この辺、あーおなかすいた・・・ぶつぶつ・・・・」
まだお経を唱え続けている。ぼくは気にせず前を向いて山頂を目指す。適材適所というやつだ。
「今日は霊がわきたってんのかね?やたらしつこくね?」
「コンビニなかったもんなー。お腹すいた〜」
けんすけが おなかをすかしている
けんすけに あいてむをつかいますか
けんすけに なっつばーをつかった
けんすけは かいふくした
「霊はどうなった?もう大丈夫なん?」
「とりあえず、今んところ」
「けんすけの腹と、霊どっちが大丈夫なんだよ」
「どっちも・・・」
トレッキングポールを突きながら慎重に進む。先の方から熊鈴の音が聞こえる。綺麗な鶯の鳴き声、人を少し小馬鹿にしているよな雉鳩の鳴き声、登山道の右斜面からはチェーンソーのけたたましい響きが聞こえる。
けんすけは しずかになった
MPがありません
ぼくたちは ひにちじょうを まんきつしている
くまがあらわれた
会話にならない会話をしながら、急ぐ必要のない旅路を急いでいる。うっそうとした登山道に所々朝日が差し込み始める。もう直ぐ最初の山頂が近い。熊鈴のおじさんの後ろ姿が先の方に見える。
突然、背後からけんすけの気配が消えた。振り返るとけんすけが、明るくなりかけた斜面の下の方を覗き込んでいる。息を殺すように、微動だにしない。
「なんだよ。またすごいのでちゃった?」
「・・・」
「おーい、取り憑かれた?」
「しーっ!くま!くま!」
「うそでしょ!」
「あっ」
けんすけが、薄暗い斜面下の方を指差す。
くまが あらわれた!
くまは こちらにケツを ふっている
ぼくたちは うごけなくなった
あたまのなかが たくさんのことを かんがえている
冒頭に戻った。そういえば、熊鈴のおじさんは熊に気づかなかったようだ。遥か先の方から熊鈴の音がかすかに聞こえる。
「よく気がついたよな。音全然しないし。無音だったな。熊。なんでわかった?」
「気配!」
「ドヤ顔かよ!いやー感動だったわ!けんすけが聞いた声って、もしかして御嶽神社の神様が、熊きーつけろよーって教えてくれてたのかもね」
「今日はさー、きっと神様に呼ばれたんだな。来るべくして来たって感じだな。熊に会えたのも、無事にすれ違えたのも、必然だったんだな。神様すげーよ。御嶽神社でちゃんとお参りしてお礼しないとね」
れいかとおもったら かみさまだった?
ぼくたちは かみさまに たすけられた?
ぼくたちは まんぞくかんと こうふんを てにいれた
高峰山の山頂は爽やかな風が吹いている。ぼうけんが終わった気になっている。まだまだ先は長いのに。
ぼくたちは、伝説のまんぞくかんと究極のこうふんを手に入れ、すこし帰りたくなっていた。しかし熊がいるところに引き返す訳にはいかない。しかたなく高峰山の山頂から、日の出山展望台へ向かって歩みを進めた。
おねーちゃんのケツが あらわれた
けんすけは つかれてきた
けんすけは おねーちゃんの わだいをつかった
「あー疲れた。あれだな、キレイなおねーちゃんの、ケツを追いながら山登りてーよ!ケツがねーと元気でねー」
「あー、ケツだけじゃなー」
「こう、こういう感じのさ」
「どいーいう感じだよ。あ、あそこ!キレイなおねーちゃんじゃね?」
「おっ!マジか!っしゃ」
おねーちゃんのけつが あらわれた
わだいだけで ぼくたちは かいふくした
ひごろの すとれすが やわらいだ
さっきまで後ろを歩いていたけんすけは、はやる気持ちを押さえ、ケツを追うために僕の前にでてペースをあげた。
「はえーよ!」
返事はない。
おねーちゃんを おいかけた
おねーちゃんは おばちゃんだった
ぼくたちは ことばを うしなった
けんすけは くずれおちた
こうきこうれいしゃたちが あらわれた
ぼくたちは気持ちを切り替えるのが早い。次なるお宝を求め、日の出山展望台へまた歩み出す。
「はいっ!すみませんっ!靴の紐結び直してましたっ!!!」
「今はそんな事をする時ではないっ!そんな事は休憩の時にやれっ!」
「はいっ!!!すみませんっ!!!」
突然響き渡る大声に、ハッと我に返る。
こうきこうれいしゃたちが あらわれた
こうきこうれいしゃたちは もめているようだ
ぼくたちは げんじつに ひきもどされた
ぼくたちは すこし いやなきぶんになった
ぼくたちは げんきなあいさつ こんにちわで こうげき
こうきこうれいしゃたちは なにもしなかった
後ろから、けんすけの声が聞こえる。
「俺さ、あーいう態度のやつすげーイラつくんだよね。なんだあれ。山に来てあれかよ」
「あのイキってたじーさんね。鬼軍曹みたいな。そんなことは休憩の時にやれ!って言ってたやつ」
「そうそう。せっかく山に来てんだし、なんのために登ってんだよって。みんなで来てんのにさ、楽しくねーじゃん」
「ホント。神様のバチが当たるよな。」
「あ、もっと水持ってこないとダメだなー。なくなっちゃった」
「ほら、予備あっから。やるよ」
「まじで?いいの?さすがだね。」
けんすけのリュックはいつもペタンコだ。決して流行りのウルトラライトの装備に凝っているわけではない。たまに帰り際におすすめの日本酒が出てきたりする。「これうまいから飲んでみてよ」とか、言ってくる。やまのぼりにきたんだよな?と言いたくなるが、無駄なツッコミなので言わない。なれっこだ。ぼくは、こういうイレギュラーにどれだけ対応できるかを考えて装備を揃えている。けんすけの場合はほぼ予想通り。
マップを開いて現在位置とルートをチェックする。問題ない。ペースも平均より早い。ぼくたちおじさんパーティーにしては、かなり良い。龍の髭と呼ばれる尾根伝いに、日の出山の展望台を目指す。関東平野が一望でき、写真撮影や手持ちのアイテムで回復もできるポイントだ。
けんすけに ふこうがふりかかった
けんすけが つかれている
けんすけが せなかを おしてほしそうにしている
ぼくは けんすけの せなかをおした
すすむぺーすが あがった
ぼくは ひごろの うんどうぶそくが すこしかいしょうした
「ほらほら!もう少しだよ〜」
「あ、あ、あ、もう、ダメだ、膝が、ハハ、ハ、」
「けんすけおじいちゃん!しっかり!まだまだ御嶽神社は先なんだから、しっかり!」
「あ、あ、あ〜やった〜」
ここは本当に東京なのか。太陽が、青空が、風が、登り切った達成感と共に、僕達の心に吹き込む。
ぼくたちは ぜっけいしゃしんを てにいれた
きたくして かくにんすると ぴんぼけしていた
束の間の休息の後、最後の気力を振り絞り歩みを進める。ぼくたちは、すれ違う登山者の皆さんに、元気いっぱいの「こんにちは!」をしまくった。折れそうになる心を鼓舞するかのように。
「こんにちわーーーっ!!!」
「こんにちゎ」
ゆるい下り坂になり足取りも軽くなる。テンポよく進む。調子に乗ってきたぞ。すごいスピードだ。
「おねーちゃんのケツ・・・」
「まだ言ってる」
「そんでさ、○○のおねーちゃんがさ。かわいいくてさ〜。ほんとかわいい〜の」
「あれ?さっきまでのケツは?」
ぼくは一瞬の緊張を見逃さなかった。振り返ると同時。
「・・・あぅっ!!!」
ガサンツ!!!普段出さないような声と共に、歩き初めの子供が前のめりに転ぶように、まるでスローモーションのように、けんすけが盛大にころんだ。
お、おっさんがその転び方はないだろう・・・。
つうこんのいちげき!
けんすけは てんにケツをむけて たおれた
ぼくは わらいそうになった
「大丈夫か!?」
「痛っで〜〜」
けんすけは てとあしを すりむいた
けんすけは てとあしを だぼくした
とてもいたそうにしている
ぼくは けんすけに いろいろなあいてむをつかった
けんすけは すこし かいふくした
けんすけは すこし おちついた
「そのバッグ何でもでてくんね。サバイバルできるよねそれ」
「こーいう時のために、装備はちゃんとしておかないといけないのだよ。感謝しとけ。」
「マジでやられた。いって〜。木の根っこにつま先ハマった」
「おねーちゃんのケツ、ケツって言ってっから、不謹慎だ!って、御嶽神社の神様のバチが当たったんだよきっと。」
「だなー。神社でしっかり謝んねーとな。」
けんすけに てんばつが くだった
きんとれと そうびの じゅうようせいを つうかんした
武蔵御嶽神社 にたどりついた
さっきからずっとけんすけの背中を押している。じみーな登り坂はどんどん急になっていく。
「あ〜。らくちんらくちん」
「全体重かけんな!お〜!あと少しだ!あ〜」
「あ〜。すげ〜らくだ〜」
鳥居と、手水舎が見えた。
ふれんちぶるどっぐが あらわれた
ふれんちぶるどっぐは こっちをみている
ふれんちぶるどっぐは すごくみている
ふれんちぶるどっぐは かいぬしに つれていかれた
目的地の直前に立ちはだかる、フレンチブルドッグ。立ち姿が勇ましい。ラスボスかと思わせるほどのふてぶてしい顔と可愛さに、ぼくたちは吸い寄せられる。気づいた飼い主さんは、僕達を避けるように連れ去って行ってしまった。
気を取り直し、手を清めて、鳥居をくぐり、目の前にそびえる最後の階段を登り始める。時々振り返ると、死にそうになりながら、手摺りに掴まりながら、遥か下を這い上がってくるけんすけが見える。もう少しで旅は終わる。
ぼくたちは おさいせんを ていねいにいれた
ぼくたちは いのりを ささげた
ぼくたちは きがはれた
ぼくたちは すがすがしさを てにいれた
お参りと神様への謝罪を済ませたぼくは、けんすけを待っている。神社から見える下界の写真を何枚も撮っている。この素晴らしい景色がうまく撮れない。この感動を伝えられる写真が撮れない。お参りしても写真は上手に撮れなかった。スマホを地面に叩きつけそうになっていると、お参りが済んだけんすけがやって来た。
「さ、いきますか!」
「んだね。いきますか!」
さあ さいごのたたかいだ!
「けんすけさ、じつはこれが目的で御岳山にしたべ」
「たりめーよ。これを食わずして一年は始まらねー」
「同じく!・・・最初の計画は何だったんだ」
決戦の時は近い。少し並んで、順番を間違えられたり、案内された席が激狭だったり、数々の試練を乗り越えようやく席に辿り着いた。
「うい〜」
「うい〜」
「〜〜〜たまんねぇ」
くるみうどんが あらわれた
くるみうどんは なかまをよんだ
びーるが あらわれた
ぼくたちの こうげき
かいしんのいちげき!!!
実に呆気なく、真の目的は達成された。
「お!いいよいいよ」
「いやいや、今日は出すよ」
「いやいやいや。それは悪いって」
「いやいや・・・ほんとにいいの?アザース」
「ご馳走様でしたぁ〜」
「ありがとうございましたぁ〜」
余韻に浸る間もなく、レジの前で無駄なやり取りをして、お店のおばちゃんに笑顔で見送られながら、いそいそと店を出た。目的は達成されたのだ!外には行列ができていた。
疲労困憊、満身創痍、ずたぼろの僕達は、ケーブルカーを待っている。けんすけはソフトクリームを食べながらベンチにもたれて遠くを眺めている。ぼくは水を飲んでいる。
ぼくたちは よいんに ひたった
「転んだ時の怪我どう?」
「あ〜。これは・・・明日・・・・・ママ〜ってなるやつだな」
「ブッ!!!ママ〜???奥さんに?」
「そう。うるさいっ!って怒られるけど」
「ソロソロ、ケーブルカー並ぶか」
ケーブルカー乗り場の行列は予想を超えていた。
けーぶるかーは まんぱいだった
ぼくたちは さみしそうに そのばをさった
ゆだんが てきだった
ぜつぼうのふちに おとされた
エピローグ
「しゃーない、ケーブル諦めて、最後気合い入れて下山すっか」
「けんすけ大丈夫なん?いろいろガタガタじゃん」
「最後までかっこよくキメねーと。気合いだな!」
「絶対無理なやつだな。それ」
けんすけの ひざが カクカクになった!
ぼくは けんすけに かたをかした
つっかえぼうに なったままげざんした
「人という字は、人と、人が支え合って・・・」
「ざけんな。こっちは大変なんだよ」
途中、同窓会の集まりで御岳山に来ましたっていう感じの、60代位のおじさん集団がいた。それをしばらく黙ってみていたけんすけが、ぼくの肩に手を乗せたまま言った。
「俺あーいうやつらすげー嫌いなんだよ。ちょーしこいてて、偉そうにしてて」
ぼくは、心の中で、それ特大ブーメランじゃね?とツッコミを入れてみたけど、声に出さなかった。
ぼくたちは なかまになりたそうに
ばすていのおじさんをみている
おじさんがてまねきしている
ぼくたちは うれしそうに ばすにかけこんだ
ぼくたちは せかいを すくえなかったが
にちじょうの じゃあくと こんめいからは
すこしだけ かいほうされた きがした
ゆめときぼうのかけらを てにいれた
それでもせかいは かわらない
「じゃあ またらいげつ」
