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家と。これからの私たちと / 中古マンション フルリノベ実況中継 Vol.22【完結】

想像を超えた「体験」の物語を買った

無事に入居を果たした私たち。

工期が延びたこともあり、すっかり季節も変わり、温かい春を迎えました。 今はただ、この真新しい空間で過ごす喜びをかみしめています。

振り返ると、とても濃厚な期間でした。1年前には予想すらしていなかったことの連続です。

私は「中古マンションフルリノベ」の経験を経て、単に「家」という箱を買っただけでなく、これまでの人生にはなかった「体験」も買うことができたのだと実感しています。

もともと不動産、金融、建築、どれをとっても素人だった私。

しかしこの1年は、毎日が勉強でした。 不動産屋さん、リノベ業者、管理会社、そしてマンションの管理組合や理事会。毎日のように交渉を重ねてきました。

「フルリノベーション」されたのは、マンションの一室だけではく、私自身でもあったのかもしれない、そう感じています。

新しい生活が始まる

新しい暮らしに一番満足しているのは、間違いなく妻でしょう。

今回のプロジェクトの発起人は妻です。理想の空間と間取りを手に入れた彼女は、毎日とてもご機嫌に過ごしています。 目に見えて表情が明るくなりましたし、何より家にいる時間が増えました。

これまでは集中して作業したいとき、近所のカフェに行くことが多かった妻。 しかし今は、お気に入りのLDKが最高のワークスペースになっています。

「なんか毎日、いいアイデアがどんどん浮かぶんだよね」

実は妻は最近、自身の事業をスタートさせました。 新しい家で、こだわりのこの空間でアイデアを練る日々は、彼女にとって最高に充実しているようです。

そして、住み始めてからの変化が一番大きかったのは、未就学児の娘です。

以前は人見知りを発揮していた娘ですが、新しい環境にはすっかり慣れました。 築30年超のヴィンテージマンションということもあり、周囲の住民にはシニア世代の方が多くいらっしゃいます。

娘は今や、すっかりマンションの人気者です。 エントランスですれ違う「おじいちゃん、おばあちゃん」たちに毎日愛され、とても楽しそうに過ごしています。

試練が結んだ「同志」との絆

そして、私自身にも、人間関係の嬉しい変化がありました。マンションの住民の一人として、また、管理組合の一員としての生活が始まったのです。

あの緊張の総会で、新参者の私を追及してきたベテラン住民の方を覚えているでしょうか。 マンションへの愛に溢れる「いい人」なのは理解していましたが、正直なところ、少し怖いという印象も持っていました。

しかしその後、あの大がかりな断熱工事について、親身になって相談に乗ってくれたこともあり、今ではマンションの未来をともに見据える「同志」になりました。

彼を語るうえで、どうしても欠かせないエピソードがあります。

リノベ中、彼と立ち話をした際、少し現場の様子を見て、ご自身の経験からアドバイスもくれたことがありました。 私としてはリノベ業者を最も信頼していたので、最初はあくまで参考程度に聞くつもりでした。

ですが、プロである業者の見解と、ベテラン住民さんからのアドバイス。 修繕の根本的な方針や費用感については、ほぼ完全に一致していたのです。

これにはリノベ業者も舌を巻いていました。

「すごいですね、その住民の方。元々ゼネコンなどで働いていた建築のプロではないですか? マンションには、そういう方が修繕計画をリードしているケースも多いんですよ」

後日、ご本人にその推測を伝えてみると、ワハハと大笑いされました。

「いやいや、こちとらただの住民だよ」 「マンションに長く住んでいると、色んなトラブルが起きる。その度に業者と交渉して立ち回っているうちに、すっかり詳しくなっちまったのさ」

そして、私の肩をポンと叩いてこう言いました。

「君もいずれ、そうなるよ(笑)」

素人がプロ顔負けの建築知識を身につけてしまうほどの、長年にわたるマンションの歴史。 これから始まる暮らしを想像すると、嬉しいような、ちょっと恐ろしいような、なんとも言えない複雑な気持ちになります。

さらに彼は真剣な顔に戻り、こう続けてくれました。

 「これから若い力が必要な場面も多くあるだろうし、みんな君には期待しているんだよ」「その時は、よろしく頼んだよ!」

その言葉を聞いて、苦笑いするしかありませんでした。どうやら私は、とことんプロジェクトに巻き込まれ、いつの間にか当事者にされてしまう星の下に生まれているようです。

そして最後には「自分事」として、オーナーシップを持って問題に立ち向かっていくであろう自分の性格も、痛いほど分かっています。

マンション購入、想定外のトラブル、そしてフルリノベーションを経て。 私もまた、このマンションを愛する住民の一人になっていました。

ベテラン住民たちとともにマンションを守るために試行錯誤する。それも決して悪くない日々なのではないか。 そんなふうに感じているのもまた、事実です。

受け継がれる文化と、これからの私たち

季節は巡り、新しい出会いも始まっています。

実は、私たちのリノベ工事中、別の部屋を売却して引っ越していった住民の方もいました。 マンションが適切に管理されているおかげもあり、私たちが買った部屋と同様、すぐに次の買い手が見つかったそうです。

これから少しずつ、このマンションも世代交代が進んでいくのでしょう。

「今度引っ越してくる方もリノベしてから住むのかな?」
「多かれ少なかれリフォームするとは思うけど…どうだろう」

妻とそんなことを話していた、ある週末のこと。 マンションのエントランスを出ようとした私たちの目に、見覚えのあるロゴがプリントされた車が飛び込んできました。

車から降りてきたのは、首にタオルを巻き、分厚い図面の束を抱えた見慣れたリノベ業者。あんなに感動的なお別れをしたというのに、引っ越しからわずか数週間であっさり再会してしまったのです。

リノベ業者は「いやあ、また来ちゃいました」と笑いながら、私たちにこう頼んできました。

「新しく入居される方が、リノベの参考に実際のお部屋を見たいと仰っていて」
「あと、リノベで大変だったことも含めて、お話も伺えたら嬉しいそうです。お願いできますか?」

私たちは迷わず、「もちろん大丈夫ですよ」と答えました。

完成した綺麗な空間だけでなく、ここに至るまでの泥臭い挑戦も紹介できたら。そんな風に思ったのです。

決して良いことばかりではありませんでした。けれど、他の何にも代えがたいほど濃密だった時間。

大変な苦労もすべてひっくるめて、フルリノベーションは本当に稀有な経験だったと、今なら胸を張って言えます。

リノベを進めながら少しずつ書き記していた『中古マンション フルリノベ実況中継』。これから中古マンションリノベに挑戦する人々にとって、私たちのこの記録が、少しでも前を照らす道標になることを祈って。


これで『中古マンション フルリノベ実況中継』は完結となります。 これまでお読みいただき、本当にありがとうございました。

今後の更新は今のところ未定ですが、またふらっと書き始めるかもしれません。

「家づくり」という人生最大のプロジェクトはリノベが終わっても続きます。これからもどうかお付き合いください!

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