【大分トリニータと共に戦った4年】 企業がスポーツ支援する事の難しさ
SBI損保では2020年から4シーズンに渡り、サッカーJリーグ「大分トリニータ」のユニフォームスポンサーを務めてきました。僕は、民間企業がプロスポーツチームのスポンサーになることは、スポーツ振興の意味で重要な取り組みであり、地方創生や子供の教育などの観点からも有益だと考えています。企業にとってもブランディングや企業イメージの向上につながりメリットがあります。
一方で、投資効果を具体的な数値に換算しにくく、売上アップに直結しないことも。上場会社であれば増収増益を求める株主から否定的な意見が出されることもあります。企業がスポーツ支援を継続することの意義と課題について、僕なりに整理してみました。
スポーツ支援の意義
企業のスポーツ支援には主に以下の4つの観点がある。
① 地域社会への貢献(地方創生)
地元チームやゆかりのある地域のチームを支援することで地域経済の活性化に寄与。地元住民の一体感・誇りを育み、地方自治体との連携強化にもつながる。
SBI損保が大分トリニータのスポンサーを引き受けたのは、「日本の保険制度の基礎を築いた福沢諭吉のゆかりの地」が大分だったことがきっかけだ。
② 子ども・青少年の健全育成
スポーツを通じた教育的効果(礼儀、協調性、努力など)。地元の子どもたちに夢や希望を与えると共に、スポーツ教室やイベントへの企業参加でCSR(社会貢献)活動の強化にも繋がる。
SBI損保では「親子サッカー教室」を開催したり、試合前のパフォーマンスを地元小中学校のチアリーダーにお願いした。
③ ブランディング・企業イメージ向上
試合中の露出や報道による知名度の向上。地元に根差した「応援される企業」というイメージづくりが出来、「社会貢献企業」としてのステータスを形成できる。
SBI損保の場合も、ユニフォームの「SBI」ロゴマークがテレビ中継で繰り返し映し出され、地元新聞やテレビニュースでも取り上げられた。
④ 社員の士気向上・社内エンゲージメント
応援活動が社員の一体感を生み出す。社員参加型イベントなどでモチベーションアップにもなる。
SBI損保でも社員に無料チケットを配布したり、「SBI損保スペシャルデー」などのイベントでは、大勢の社員が現場対応するなど一体感の醸成ができた。

スポーツ支援の課題
一方で、スポーツ支援には避け難い課題(デメリット・懸念)もある。
① 費用対効果の不透明さ
スポンサー料が高額な割に、直接的な売上増加につながりにくい。ブランド価値や知名度向上を数値で評価するのが難しく、明確なKPIを設定しづらい。
② 株主からの圧力(特に上場企業)
「広告宣伝費」としての妥当性を問われがち。業績悪化時には真っ先にコスト削減対象となる。また、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資との整合性も問われる場合がある。
③ 契約継続の難しさ
チームの成績によってスポンサー価値が上下する。不祥事やトラブルが起きた際に企業イメージに悪影響を及ぼすリスクもある。
④ 支援の「見える化」不足
地域や顧客から「この企業がスポンサーである」ことが認知されにくい。単なるロゴ掲載では意味が薄れ、企業側から積極的な発信が必要。
スポーツ支援の実例とその評価
ではスポーツ支援で企業価値を上げている成功事例はどこか。数字上の比較ではなく僕の主観になってしまうが・・
① 日清食品 × テニス(錦織圭選手)
内容:錦織選手が無名のジュニア時代から支援。
成果:世界で活躍するトップアスリートへの成長により、世界的なブランド露出。
海外メディアでも「日清」のロゴが認知され、グローバルブランド戦略に貢献。日清の“攻めの姿勢”と“若者支援”のイメージ向上に成功。
ポイント:単なる広告ではなく「ストーリー性ある長期支援」が功奏した。
② 川崎重工業 × ヴィッセル神戸(サッカー)
内容:地元神戸のチームを長年にわたり支援。
成果:地域との結びつき強化。世界的スター、イニエスタ加入により、グローバルでの露出も拡大。社員の誇り・地域企業としてのブランド力向上。
ポイント:地元との共生と、グローバルな話題づくりの両立に成功。
③ Red Bull(レッドブル) × 多種スポーツ
内容:F1、スノーボード、BMX、eスポーツなど幅広く支援。
成果:スポーツと“攻めたブランドイメージ”の一体化。自社イベントを開催し、メディア化・コンテンツ化。若者への絶大なブランド認知。
ポイント:支援=メディア戦略として成立させている好例。
金融機関・保険会社のスポーツ支援の実例
金融機関に絞っても、実は多く企業がスポンサーを務めている。
<バスケットボール/Bリーグ>
・千葉ジェッツふなばし 千葉銀行
・川崎ブレイブサンダース 川崎信用金庫
<サッカー/Jリーグ>
・Jリーグ 明治安田生命
・FC東京 きらぼし銀行
・浦和レッズ 埼玉りそな銀行
・川崎フロンターレ SMBC日興証券
・横浜F・マリノス 横浜銀行
・柏レイソル アフラック生命保険
・ヴィッセル神戸 楽天グループ(銀行・証券・保険)
<プロ野球>
・セパ交流戦 日本生命
・読売ジャイアンツ 三井住友銀行
・北海道日本ハムファイターズ 北海道銀行

スポーツ支援を継続する上での課題
スポーツ支援には地域や社会への大きな価値がある一方で、ビジネス的な投資効果をどう説明・可視化していくかが大きな課題であると言える。SBI損保は僕の社長退任と共にユニフォームスポンサーを終えた。個人的には残念な気持ちもあるが、4シーズンに渡ってJリーグのクラブチームを支え、大分の皆さんに貢献できたと考えれば、悔いはない。
トリニータの運営会社である大分フットボールクラブの小澤社長にユニフォームスポンサーを降りることを伝えた際、「継続できなくて申し訳ない」という僕の言葉に対して「お詫びの言葉など不要です。4年間の感謝の気持ちしかありません」と言葉を返してくださった。とてもありがたい言葉だった。
スポーツ支援の素晴らしさと難しさを経験できた4年間。これからのSBI損保もこの経験を是非活かしてほしい。
(注)この投稿記事はディスクロージャー資料やメディア報道など公知の情報に基づいて記載していますが、文中の見解や評価はあくまで僕自身の個人の意見であることを念の為に追記します。この投稿が多くの方の参考になれば幸いです。
