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掌編夜話集 ep8|見抜かれた夜

夜のオシャンティに、雨の匂いが残っていた。
常連の女性がカウンターに座り、 「今日、なんか静かですね」と笑う。

「そうですかぁ? いつも通りですよぉ」
ジェイコブはニコニコして答えたが、 その声がほんの少しだけ弱いことに、 女性は気づいた。

「ジェイコブさん、疲れてる?」
「えぇ? そんなことないですよぉ」 と笑うものの、 グラスを磨く手がいつもよりゆっくりだ。

女性はしばらく黙って彼を見つめ、 やがて小さく言った。

「……無理しなくていいですよ」
ジェイコブの手がふっと止まる。

「え?」
「いつも元気にしてるけど、たまには休んでいいんですから」

ジェイコブは目を瞬かせ、 それから照れたように笑った。

「いやぁ……見抜かれちゃいましたねぇ。ちょっとだけ、寝不足で」

「ほら、やっぱり」
女性はグラスを軽く掲げた。

「じゃあ今日は、私がゆっくり飲むから、ジェイコブさんも少し休んでて」

ジェイコブは胸の前で手を合わせ、
「ありがとうございますねぇ」 と、
いつもより柔らかい声で返した。

店の灯りが、少しだけあたたかく揺れた。


ep7
懐かしい名前

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