★禁断の智慧の実マガジン創刊に寄せて
魔方陣は、ただ数字が並んでいるだけの図形に見える。 だが、その配置ひとつで全体が“ひとつの法則”として立ち上がる。 意味は、置き方によって突然に姿を現す。
この雑誌「魔法人(まほうじん)」という名は、 魔方陣の洒落であると同時に、 魔法に携わる者(magicians)を指す語でもある。 思想の構造を扱う者は、必然的に“魔法人”となる。
ここでひとつだけ、最初に断っておきたい。 現在、異世界転生ものなどで“魔法陣”と呼ばれている図形の多くは、 実際には 魔法円(Magic Circle) のことであり、 魔方陣(Magic Square)とはまったく別物だ。 魔術の基礎をかじった人間なら誰でも知っている区別だが、 創作の世界ではしばしば混同されている。 この雑誌名は、その混同とは無関係に、 あくまで 魔方陣の構造性 を洒落として用いている。
もともと「魔法人」は、 オカルティスト達、魔術師やウィッカンが愛読している“架空の雑誌”として、 わたしの脳内だけに存在していた。ただの遊びだった。 誰にも見せるつもりのない、内側だけの魔方陣。
そして、「魔法人」の思想的な母体でもある。 “禁断の智慧の実”という言葉は、 わたしが価値を置いてきた思想そのものを象徴している。 触れてはいけないものに手を伸ばす衝動、 知ってしまったがゆえに戻れなくなる感覚、 その危うさと甘美さを含んだ言葉だ。 雑誌「魔法人」を一言で言い表すなら、 この言葉以上にふさわしいものはない。
noteで毎日書き続けているうちに、 その運用が自然と“雑誌の形式”を帯び始めた。 俯瞰してみれば、 すでにそこには「特集」があり、「読み切り」があり、「連載」があり、 魔方陣のように配置された文章群があった。
ならば、この形をそのまま雑誌として立ち上げたほうが、 今の有料マガジンよりもずっと面白い。 そう思ったのが、この創刊号の切っ掛けだ。
創刊号の特集は「異世界転生とTSの欲望」。 軽い娯楽の皮をかぶったこのジャンルには、 現代人の深層に潜む“欲望の配置”が刻まれている。 魔方陣の数字のように、 欲望はいつも、どこかに規則正しく並んでいる。
この雑誌は不定期刊だ。 魔方陣が必要なときにだけ描かれるように、 必要なときにだけ現れる。
もし、この配置に触れてみたいと思うなら、 どうぞページをめくってほしい。
