見出し画像

病院建設の裏側:法外な見積もりを元エンジニア事務長が見抜いた話

病院経営において、設備導入やシステム選定の意思決定は避けて通れません。しかし、もしその判断基準が「業者の言いなり」になっていたとしたら?
かつてエンジニアとして設計に携わっていた筆者が、病院事務長として直面した「見積額を10分の1に削減したエピソード」を紹介します。ソクラテスの説いた「無知の知」を切り口に、医療経営における学びと専門知識の重要性を考えます。

1. 異業種からの転身と病院運営

私は現在、地方の民間病院で事務長を務めていますが、キャリアのスタートは医療業界ではありませんでした。大学卒業後の5年間は電気設計エンジニアとして、空調制御やファクトリーオートメーションの設計に従事していました。
その後、異業種である医療の世界へ転職しましたが、モノづくりから事務職への転向は戸惑うことも多く、基礎がない分、常に学び続ける必要性を痛感しています。
さて、今回のコラムでは、以前勤務していた病院で新病院建設プロジェクトに携わった際のエピソードをお話ししたいと思います。

2. 病院建設プロジェクトの「気づき」

新病院の建設は、私にとってエンジニアとしての経験を活かせる貴重な機会でした。基本設計の段階から全国の病院を見学してアイデアを収集し、設計会社や建設会社の担当者と詳細な議論を重ねる日々を送っていました。 そんな建設プロセスの最中、ある高額設備の導入をめぐり、疑問を感じる出来事がありました。 当時検討していたのは歯科設備の導入です。設備会社の担当者から見積書と設置図面が提示され、一通りの説明を受けましたが、どうしても気になる箇所がありました。一部の機器に対して、法外とも思える価格が計上されていたのです。

3. 「国立病院向け金額」???

私はその法外な見積もりを見た際、すぐに担当者を呼び出し、こう切り出しました。
「私は以前この業界にいたので、この金額がおかしいことはわかっていますよ」すると担当者は驚きと動揺を隠せない様子で、さらに墓穴を掘るような返答をしたのです。
「あ、あの、これは国立病院向けの金額で出してしまいました……」
民間病院である当院に対し、国立病院向けの非常に高額な価格をそのまま提示していたことが判明した瞬間でした。このように二重価格が存在する実態を目の当たりにし、強い憤りを感じたのを覚えています。私はこの見積もりを丁重にお断りし、この件については自ら設計を行い、製作は前職の後輩が経営する会社へ依頼することを決断しました。
結果として、当初の見積額の約1割という費用で機器を導入することができ、大幅なコスト削減を実現しました。久しぶりに図面を引く楽しさや、自分が設計したものが実際に稼働するのを見た時の達成感は、エンジニア経験者ならではの喜びでした。

4. 知らないばかりに「損」をする

この一件を通して、私が身をもって学んだことがあります。
それは、「知らないだけで損をする」という厳しい現実と、「知識は最強の武器になる」ということです。
病院事務長は、設備導入やシステム選定など、数百万円から数千万円規模の意思決定を担う場面が少なくありません。十分な知識がなければ、提示された価格や提案が本当に妥当なのかを判断できず、結果として病院の大切な資源を無駄にしてしまう可能性があります。
ソクラテスは「無知の知」を説きました。自分が知らないことを自覚することこそ、学びの出発点です。今回の経験は、その言葉の重みを改めて実感する出来事となりました。

「自らの無知を自覚することが真の認識に至る道である」

医療経営の立場にある今も、知らないことはまだ山ほどあります。だからこそ、謙虚さを忘れずに学び続け、現場で活かせる専門知識を習得していくことの重要性を改めて痛感しています。

このnoteでは、同じように医療現場で奮闘されている方、そして病院経営に興味をお持ちの皆様にとって、少しでも参考になる記事を目指します。
よろしければフォローして、次回の記事も読んでいただけると嬉しいです。継続して更新していけるよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします。


いいなと思ったら応援しよう!