短編小説 「ぬりかべ」
ほんとにもう、頭に来る。
身体は貧弱だし、
すばしっこいし、
止まったと思えば、またすぐに走りだす。
なんで後先を考えないの。
そっちへ行ったら池に落ちるでしょう。
その角を曲がったら、車にはねられるでしょう。
なんで、わからないの。
未来を見る方法なんて、
学校でも習ったでしょう。
私はもう、
あなたたちの家族が泣く姿は見たくないのよ。
みんなには、
天寿をまっとうしてほしいのよ。
なんでそんなに生き急ぐの。
私の姿も見えない。
声も、届かない。
だから私は、
わざわざあなたたちの前に
壁を塗って、
進めないように
しないといけないんでしょう。
「あれ? 前に進めないぞ?」
って、
当たり前でしょう。
私があなたの前に、
かべを塗ってあげてるんだから。
もう。
ほんとに。
毎日毎日、嫌になっちゃう。
少しくらい、
感謝しなさいよね。
そう言いながら、
私は今夜も、
人間のために
かべをぬる。
