展覧会
またひとつ展覧会が終わった。
冬に決まった夏の展示。
路面にあるギャラリーの白い空間は、過去に数回の展示経験があり、気配のすべてがおおらかな印象だ。
ギャラリーセレクトによる3人での展示だが、壁は十分な広さだ。
思いっきりやろう。
今描きたい景色がある。今回は偶然性を頼らず自分で描ききりたい。
それなりの大きさで時間の厚みも欲しい。他の小さい作品を牽引するようなものを描こう。それを叶えてくれるのは油彩しかない。
画材をそんな思いで選んだ。
半年間2つのキャンバスの世界と行き来した。
久しぶりの油彩は画材の匂いに慣れるまで少し時間がかかった。水性の画材とは全く異なる濃淡の表現に戸惑いながらも、少しずつ思い出したり独自の感覚を掴んでいく。布を使って筆跡を消すとふわふわとした画面が現れて優しい光にとろけそうになる。それでも心と対峙すると何かが本当ではない。足して足して何層にも重なって風合いが増していく。納得するまで。
制作期間中、毎朝目覚めたらすぐ心にどう映るか確かめた。
まず、白樺の絵を描いた。以前描いたアクリル画に時とともに見えるようになった景色を更新するように上描きした。
危うい世界情勢の報道を耳にしながら。戦争で亡くした愛馬の気配を悲しく美しく書いた小説を読んで、心に宿った景色でもある。全ての無垢な魂の行先は穏やかでありますようにと。

Oil on canvas
H45.5×W53cm
それよりひとまわり大きなサイズのキャンバスに湖を描いた。
心の静かな場所を可視化しておきたかった。
わたしの心はうるさい。いつもなにかに揺れて自分を責めたり慰めたりしている。ざわめきや境界は森の木々で表現した。
鳥を飛ばすのは想定外だったが仕方ない。
もうすぐ娘が私たちの元を離れ未知へと飛び立とうとしている。隠しようのない祈りの衝動だから。
夏が来て、無事展示できた。
西陽が射し込む時間は心躍る。
会場のガラス作品を通って壁にプリズムが現れ刻刻と移動する。おしゃれなイラスト作品も一層ドラマチックに存在感を放つ。
路面側に展示した湖の作品には一筋の光が射し、絵の世界がキャンバスから飛び出したみたいだった。

Oil on canvas
H53×W65cm
ー泉の底に一本の匙夏了るー 飯島春子
お世話になったギャラリーの店主が、「どうしてもこの句が浮かぶのです」と、湖の作品にくださった俳句だ。何かが伝わったと、安堵することができた。
厳しい暑さの中、お越しくださる来廊者には本当に申し訳なくも心から感謝する。毎回の方もあれば初めてお目にかかる方がある。作品をお迎えいただく先は様々だ。ギャラリーには偶然や必然が混在し、想像を超えた体験がある。
搬出後に見上げた夜空の雲間から満月間近の月が出た。ご一緒した作家の方と共に、優しい光を受けて展覧会は幕を降ろした。
少し休もう。そして次は何を求められているのか、どんな風に創ろうかわくわく考えるつもりだ。
