面接で6問質問するだけで、そのIT企業が技術とエンジニアに誠実かどうかがわかる。 〜学生さんに贈る「面接逆質問」22個のこと
現在就職活動に取り組んでいる学生のみなさん、こんにちは。
就職活動って、本当に大変ですよね。世の中には無数の会社があって、どこを選ぶかも無数の選択肢。悩みが尽きない毎日だと思います。
そんなとき、会社を見極めるもっとも大切な場のひとつが面接です。本稿では、エンジニアを目指すみなさんに向けて、面接時の質問のコツを少しだけ共有します。
私自身、エンジニアとして、会社員として、そしてコンサルタントとして、いろいろなIT企業を内側から見てきました。そこで感じてきたことを、これから広い世界に飛び出していくエンジニアの卵のみなさんへ、ささやかな贈り物として渡したい。そんな気持ちで書いた記事です。
テーマは、エンジニア面接で使える「逆質問集」。面接って、企業があなたを選ぶ場に見えて、実はあなたが企業を選ぶ場でもあります。最初に入る会社の技術文化は、その後の数年の伸び方を大きく左右します。だからこそ、こちらから質問を投げて、会社の姿勢を確かめる時間を、ぜひ持ってほしい。
紹介する22個は、それぞれ狙い・良い答えの例・危険な答えの例・その答えが示す組織の欠陥まで踏み込んで書きました。気になるところから、気軽に読んでみてください。
新卒の就活中の方はもちろん、もし今、第二新卒として転職活動を進めていて他社の面接に臨む場面でも、そのまま使える内容です。
面接は、お互いにフェアな立場で行うもの
質問集に入る前に、大事な前提を一つだけ。
面接は、企業側があなたを値踏みする場ではありません。企業とあなたが、お互いに「一緒に働けるかどうか」を対等に確かめ合う場です。企業があなたを選ぶのと同じだけ、あなたも企業を選ぶ権利があります。
どうか、面接に臨むみなさんは「選ばれる側」のマインドセットだけで臨まないでください。「私も企業を選ぶ」という当たり前の姿勢を、忘れないでほしいのです。
この記事で紹介する22個の質問は、その姿勢を実践するための、具体的な道具です。
なぜ「あなたからの逆質問」が武器になるのか
多くの人は、面接を「質問される側」として準備します。でも私がエンジニアや会社員として働き、コンサルタントとして多くの会社の内側を見てきた経験から言うと、成長環境を見抜きたいなら、こちらから具体的な質問を投げるほうがずっと有効です。
理由はシンプル。採用ページや会社説明には、企業にとって都合のよい言葉が並びます。実際の技術文化は、現場に具体的な質問をぶつけてみないと見えてきません。
紹介する質問には共通の設計思想があります。「直近半年から3年の、具体的な人・事例・数字を教えてください」と聞くことです。抽象論で逃げようとする組織を、具体でしか答えられない形に持っていきます。
技術に投資して若手を育てている組織なら、直近の固有名詞や数字がすらすら出てきます。逆に、新卒を作業者として扱ってしまう組織は、次の3パターンのどれかになりがちです。
ひとつ、そもそも答えられない
ふたつ、「特にない」「やっていない」で終わる
みっつ、具体例がなく「風通しがいい」「アットホーム」のような抽象論しか返ってこない
私自身、若い頃にこの3パターンをきちんと見抜けず、悔しい思いをしたことがあります。だからこそ、みなさんには早いうちに気づいてほしい。
以下、22個の質問を「狙い」「良い答えの例」「危険な答えの例」「その答えが示す組織の欠陥」の4点セットで見ていきましょう。
前提:伸びるIT企業は、技術とエンジニアに関して誠実である
私が会社員時代に見てきた組織、そしてコンサルタントとして関わってきた数多くの会社を通じて実感しているのは、伸びているIT企業は技術とエンジニアに関して誠実だということです。
ここで言う「誠実」とは、次の3つが揃っている状態です。
技術と向き合うことを、日々の業務のなかで手を抜かない
エンジニアという職能に対して、対等な人格として敬意を払う
技術やエンジニアに関する事実を、都合の悪いことも含めて歪めずに語る
この3つは、成長しているIT企業を見渡せば、規模や業態を問わずほぼ例外がない共通項です。
大事なのは、この姿勢は経営層だけの話ではないということ。現場のエンジニアも、部課長も、経営層も、同じ姿勢を持っていて初めて「誠実な会社」と言えます。経営層だけ誠実でも現場に浸透していなければ嘘。現場だけ誠実でも経営が技術を軽視していれば、若手は伸びません。
全社員の姿勢が一致していることが、誠実さの実質的な証拠です。
質問を後半面接で部課長やマネージャ層に投げるのは、彼らが偉いからではありません。技術と組織の両方に責任を持つ立場で、答える義務があるからです。
彼らの答えから誠実さが感じられないなら、その会社の全社員の姿勢もまた、そこから大きく外れないと考えたほうがよさそうです。
この前提に立つと、これから紹介する22個、とくに最初の6問は「あったらいい質問」ではなく「誠実な会社なら答えられて当然の質問」に見えてきます。
質問集を使うタイミング
質問リストに入る前に、いつ・どう使うかを整理しておきましょう。
1. 投げるのは、二次面接以降の後半面接
一次面接は、人事担当や若手社員が対応することが多いです。技術的負債や離職率を聞いても正確な答えは返ってきません。二次面接以降、部課長やマネージャ層など、技術と組織の両方に責任を持つ人が出てきたときが投げどきです。
2. 投げるのは、面接後半の質疑応答の時間
面接前半のあなたが質問される時間帯に割り込んで投げると、流れが不自然になります。ほとんどの面接は後半に「何か質問はありますか」の時間があるので、そこで投げましょう。
「いくつか気になっていることを、逆質問させてください」と一言添えると自然です。
3. まず6問、時間があれば深掘り16問
22個すべてを投げる必要はありません。まずは「まず投げる6問」を優先。この6問で会社の姿勢は十分に見えます。時間や場の雰囲気に余裕があれば、気になる領域の深掘り質問を追加してください。
4. 答えをメモしていい
面接中のメモを遠慮する方が多いですが、真面目に答えている会社ほどメモを取る姿勢を歓迎します。「あとで見返したいので、メモを取らせてください」と一言断って、遠慮せず書き留めましょう。答えの具体度の差は、後で見返すと明確になります。
5. 複数社を並べて比較する
1社ずつ単独で評価するよりも、同じ質問セットを複数社に投げて比較したほうが、姿勢の差が浮き彫りになります。「あの会社は具体名がすぐ出たけれど、この会社は抽象論だった」という対比が、あなたの判断を助けます。
準備ができたら、いよいよ質問リストに入ります。
まず投げる6問。ここで会社の姿勢が見えます
会社の姿勢は、早めに見えたほうが判断がラクになります。
この6問は、後半面接に出てくる部課長やマネージャ層に投げてみてください。彼らは技術と組織の両方に責任を持つ立場なので、真面目に技術に投資している会社なら規模を問わず即答できるはずの内容です。
逆に、新卒を作業者として扱ってしまう会社では、この6問のどこかで言葉に詰まったり、抽象論に逃げたりします。
6問中3問以上で「答えられない・特にない・抽象論」が出たら、その会社はいったん候補から外して考えてみてもよさそうです。以降の16問は、この6問を通過した会社をさらに深く見ていくためのものです。
1. 経営層または技術リーダーが、直近半年で社外に技術を発信した実績を教えてください。カンファレンス登壇、技術ブログや書籍の執筆、OSSへの貢献、業界団体での発表、社外勉強会での講演など、どの形でも構いません
狙いは、技術の意思決定層が「技術と真面目に向き合っている人」で構成されているかを、直近半年の実績で確かめること。技術に対して誠実な会社では、意思決定層の誰かが社外に技術を発信している姿がよく見られます。
答えの速さと具体度が、その会社の技術への向き合い方を雄弁に示します。
良い答えの例は、経営層や技術リーダーの名前と、直近半年の登壇イベント名・記事タイトル・OSSプロジェクト名などが3秒以内に具体的に出てくること。会社の規模が小さくても、CTOやリードエンジニアが社外の場で技術について語っているなら、その組織は技術に本気です。
危険な答えの例は、「登壇はしていません」「そういう活動はしていません」「把握していません」で終わる、あるいは答えに詰まること。「外向きの活動より社内の仕事に集中しています」という言い訳は、技術で外に立てる人材が組織にいない告白と受け取ってよいでしょう。
その答えが示す組織の欠陥は、技術の意思決定層が「技術を語れない人」で構成されていること。半年間、経営層と技術リーダーの誰一人として社外に技術を語れる場を持たなかった組織で、あなたが技術者として伸びるのはけっこう厳しいです。この1問で答えに詰まる会社なら、以降の21問を聞くまでもありません。
2. 社内に、社外からも実力を認められているエンジニアはいますか。技術書の著者、カンファレンスの登壇者、OSSのメンテナ、業界団体の委員など、どんな形でも構いません
狙いは、社内に目標となる一流のエンジニアがいて、会社がそういう人を大切にしているかを確かめること。Q1が経営層や技術リーダーを見るなら、こちらは現場のトップ層を見る質問です。
良い答えの例は、そうした人が具体的に挙がること。「登壇や執筆はしていないが、この分野の実装ではこの人が第一人者」といった、社内で実力を認められている人物が語られるのも十分です。
危険な答えの例は、一人も名前が出てこない、あるいは「うちにはそういう人はいません」で終わること。
その答えが示す組織の欠陥は、強いエンジニアがそもそもおらず、いても外から評価される活動を会社が後押ししていないこと。手本にできる人がいない環境で高い水準を目指すのはなかなか難しく、技術の水準は周囲の水準に引きずられます。
3. 過去1年で向き合った技術的負債と、それをどう返したかを、具体的なシステム名を挙げて教えてください
狙いは、コードの健全性に投資する文化があるかを、直近の具体で確かめること。動いているシステムを継続的に改善する意思がない組織では、若手が入る頃には「触れば壊れるから触るな」の暗黙ルールが支配しています。
良い答えの例は、特定のシステムや機能名を挙げたうえで、どんな負債があり、誰が主導し、どんな手順で返したかが具体的に語られること。返しきれていない負債についても、認識と計画が語られれば十分です。
危険な答えの例は、「技術的負債は特にありません」「動いているものは触らない方針です」「余裕がなくて手が回りません」。
その答えが示す組織の欠陥は、負債を負債と認識する目を持たないこと。「特にない」と即答する組織は、負債を測る物差しそのものを持っていません。あなたはその物差しを教わる機会を持てないまま、何年も過ごすことになります。
4. 直近1年で起きた障害の中で、原因の振り返りをどう行ったか、実際の事例を1つ教えてください
狙いは、失敗を個人の責任に還元する組織か、仕組みを直す組織かを、直近の実例で見ること。「非難なきポストモーテム」の考え方が根づいているかを試します。
良い答えの例は、実際に起きた障害の概要、振り返りの場を持ったこと、原因を「人のミス」ではなく「なぜそのミスが仕組みで防げなかったか」に置いて再発防止策を打ったことが語られること。
危険な答えの例は、「担当者に厳重注意しました」「特に振り返りはしていません」「大きな障害はありません」。
その答えが示す組織の欠陥は、失敗を個人の責任に還元する文化。この文化の下では若手はミスを隠すようになり、組織として学びが積み上がりません。「大きな障害はない」と言い切る組織は、障害を認知していないか、認知しても記録に残さないかのどちらかで、どちらも危険度は同じです。
5. 直近3年で、技術やエンジニアのために会社が投資した具体例を、金額感がわかる形で教えてください
狙いは、技術への投資が言葉だけか、実際の支出を伴っているかを規模で確かめること。「技術を大切にしている」と言う会社は多いですが、金額で語れる会社は限られます。
良い答えの例は、開発基盤の刷新、ツールの導入、教育への支出、採用の強化など、具体的な投資事例と、金額規模やチーム体制が語られること。
危険な答えの例は、「特に思いつきません」「コスト削減が優先で」「エンジニアの時間で吸収してきました」。
その答えが示す組織の欠陥は、技術やエンジニアを投資対象ではなく、削るべきコストとして扱っていること。3年間、技術に投資した記憶が思い出せない組織は、これからの3年も投資する予定がありません。あなたはコストとして扱われる側に回ります。
6. 直近3年で入社した新卒エンジニアの人数と、そのうち今も在籍している人数を教えてください。辞めた方の主な理由もわかれば教えてください
狙いは、若手が定着する会社かどうかを、数字で確かめること。制度も文化も、若手が辞めていく事実の前では意味を持ちません。この一問は抽象論では逃げられない、最強の踏み絵です。
良い答えの例は、入社人数と在籍人数の数字がすらすら出て、辞めた場合はその理由(キャリアチェンジ、進学、家族の事情など個別の背景)が率直に語られること。悪い会社でも理由を分析している姿勢が見えれば、改善の意思の手がかりになります。
危険な答えの例は、「正確な数字は把握していません」「入社してすぐ辞める人が一定数います」「若手の離職は業界全体の課題です」。
その答えが示す組織の欠陥は、若手が辞め続ける事実を数字として管理していないか、管理していても向き合えないこと。3年で半分以上が辞める組織で、あなただけが例外的に伸びると期待するのは、統計的に無理があります。
この6問に真面目に答えられた会社は、候補として残す価値があります。
1〜2問で「答えられない・特にない・抽象論」が出た会社は要注意、3問以上で同じことが起きた会社は、もうそれ以上聞かなくて大丈夫です。
ここから先の16問は、この6問を通過した会社を、さらに深く見ていくためのものです。
技術力・品質への姿勢を深掘りする質問
7. コードレビューは、直近半年で誰がどんな観点で行っていますか。レビュー1件あたりの平均コメント数もわかれば教えてください
狙いは、品質を担保する文化と、フィードバックが飛び交う土壌があるかを直近の具体で確かめること。
良い答えの例は、レビュアーの名前や役割、観点(読みやすさ・設計・セキュリティなど)、平均コメント数、直近で議論になったレビューの中身が語られること。数字とエピソードが両方出てくれば実質的に機能している証拠です。
危険な答えの例は、「動けばOKにしています」「レビューは特にしていません」「レビュアーは決まっていません」。
その答えが示す組織の欠陥は、コードの品質を仕組みで守る発想がなく、若手が正しいフィードバックを受けて伸びる機会がほぼないこと。技術的な判断力は、レビューでの往復を通じてしか鍛えられません。
8. テストや静的解析は、開発フローにどう組み込まれていますか。カバレッジや直近の指摘件数も教えてください
狙いは、品質を仕組みで守っているか、人の注意力頼みかを数字で確かめること。
良い答えの例は、自動テストやリンターが人のレビュー前に回る運用が語られること。カバレッジの目安、直近1か月の指摘件数、CIが落ちた頻度など、数字が出てくれば実装されている証拠です。
危険な答えの例は、「手動で確認しています」「特に自動化はしていません」「テストは書ける人が書いています」。
その答えが示す組織の欠陥は、品質が属人的で、若手が学ぶべき「型」がないこと。自動化がない現場では、若手はレビュー前に指摘されるべき初歩的なミスを本番障害という形で学ぶことになります。
9. 開発環境の構築やデプロイは、どのくらい自動化されていますか。新入社員が環境構築にかかる時間はどのくらいですか
狙いは、単純作業を仕組みで減らし、本質的な学びに時間を割けるかを時間で確かめること。
良い答えの例は、環境構築が数十分から半日で完了する仕組み、デプロイのボタンを押せば本番に反映される流れが語られること。
危険な答えの例は、「新入社員は3日かけて手順書を追いながらセットアップします」「デプロイは深夜に手作業で」。
その答えが示す組織の欠陥は、仕組み化への投資を惜しみ、単純作業を人の時間で吸収させる発想。若手の時間は雑用に消えます。
学習・成長の仕組みを深掘りする質問
10. 直近1年で、チームのメンバーが業務時間内に学んだ技術は何ですか。誰がどの技術を学んだか、名前を挙げて教えてください
狙いは、学習が「個人の努力頼み」か「組織の仕組み」かを、実在の人と技術名で確かめること。
良い答えの例は、メンバーの名前と学んだ技術(言語・フレームワーク・ミドルウェアなど)が具体的にペアで語られること。
危険な答えの例は、「各自が自主的にやっています」「業務時間内は難しい」「特に把握していません」。
その答えが示す組織の欠陥は、学習コストを個人に押し付ける構造。業務時間外の学習を前提にする組織では、家庭やプライベートに余裕のある人だけが伸び、それ以外は停滞します。
11. チーム内で知識やノウハウを共有する仕組みはありますか。それは会社主導で始まったものですか、現場のエンジニアが自発的に開いているものですか
狙いは、知識が個人に閉じずチームに蓄積されているかと、その活動が現場の意欲から生まれているかを一度に確かめること。
良い答えの例は、社内wikiや共有ドキュメント、ペアでの作業などの仕組みに加えて、有志が定期的に開いている勉強会やLT会の直近のテーマや発表者が語られること。
危険な答えの例は、「特にない」「各自が自分で管理」「会社が用意したときだけ」「最近はやっていません」。
その答えが示す組織の欠陥は、個人の知識が個人に閉じたまま消えていくこと。誰かが辞めれば、その人のノウハウは丸ごと失われます。若手が入っても学ぶべき蓄積を参照できません。
12. 新人が最初の3か月で任される仕事を、直近入社した新卒の例で教えてください
狙いは、若手の成長を設計しているか、放置か雑用要員かを実例で見分けること。
良い答えの例は、直近入社した新卒の名前や配属、最初の3か月で任された仕事の内容が具体的に語られること。小さな修正から始めて任せる範囲を広げる筋道が見えれば、育成の設計がある証拠です。
危険な答えの例は、「人それぞれです」「やる気次第で」「先輩について雑用から」「テストの手動確認から」。
その答えが示す組織の欠陥は、育成の設計が存在しないこと。3か月間テストの手動確認しか任されなかった新卒は、開発の全体像を理解する機会を持てないまま、単純作業に慣らされていきます。
13. メンター制度や、若手を育てる仕組みはありますか。直近半年で、誰が誰のメンターになりましたか
狙いは、育成が個人の善意でなく、組織の仕組みとして用意されているかを実在のペアで確かめること。
良い答えの例は、メンター制度の枠組み、実際のメンター・メンティーの組み合わせ、1on1の頻度や話される内容が語られること。
危険な答えの例は、「見て覚える感じです」「先輩に聞けば教えてくれます」「制度としてはありません」。
その答えが示す組織の欠陥は、育成が属人的で、当たり外れが大きいこと。良い先輩に当たれば伸び、多忙な先輩に当たれば放置される。この分岐点を、あなたは入社前に選べません。
14. 新卒が入社半年で書いたコードを、誰がどのように読みましたか
狙いは、若手のコードに先輩の目が入る仕組みがあるかを、実在の事例で確かめること。
良い答えの例は、実在する新卒の名前や配属、その人のコードを誰が読み、どこを指摘し、どう改善したかが具体的に語られること。
危険な答えの例は、「自分で書いてもらっています」「先輩が忙しくて時間が取れません」「動けば通しています」。
その答えが示す組織の欠陥は、若手のコードが放置されるか、逆に細部だけ直されて設計の考え方が伝わらないこと。半年間まともに読まれなかったコードを書き続けた新卒は、独学でしか伸びられません。
15. 過去に失敗した技術的な取り組みと、そこから何を学んだかを教えてください
狙いは、挑戦を許容し、失敗を学びに変える文化があるかを見ること。
良い答えの例は、失敗を率直に語り、その経験を仕組みの改善や次の挑戦につなげたエピソードがあること。
危険な答えの例は、「失敗はありません」「思い出せません」「上に怒られるので挑戦はあまり」。
その答えが示す組織の欠陥は、失敗を隠す文化か、そもそも挑戦していないかのどちらか。前者では若手が萎縮し、後者では若手が挑戦を通じて伸びる機会そのものがありません。
会社としての成長支援を深掘りする質問
16. 学習・成長への会社の投資として、直近半年で実際に使われた制度と、その利用者を教えてください。書籍購入、カンファレンス参加、資格取得、業務時間内の学習時間など、思いつくものを教えてください
狙いは、制度が存在するかだけでなく、直近半年で実際に機能しているかを利用者の名前まで踏み込んで確かめること。制度は口だけでも作れますが、「直近半年で誰が何に使ったか」まで求められると実態が浮かびます。
良い答えの例は、書籍購入補助・カンファレンス派遣・資格報奨・業務時間内の学習時間などの制度に加えて、直近半年で「誰が」「どの本を」「どのイベントに」といった利用実績が具体的に挙がること。
危険な答えの例は、「制度はありますが、最近使った人は思いつきません」「必要なら自費で」「業務が優先なので学習の時間は取れません」「特にありません」。
その答えが示す組織の欠陥は、学習コストを個人に押し付けているか、制度が形骸化していること。制度があっても半年間誰も使っていないなら、それは「使えない空気」の証拠で、あなたも入社後に使えません。
17. 新卒研修は、どんな内容を、社内の誰が担当していますか。研修という形でない場合は、OJTでどう教えているかを教えてください
狙いは、育成の中身を会社が自分の言葉で語れるかを確かめること。会社の規模によっては独立した研修を組まないこともありますが、その場合でも「誰がどう教えているか」を語れる会社と語れない会社があります。
良い答えの例は、研修のカリキュラムに加えて、社内のエンジニアが講師や指導役として教えていることが語られること。OJT主体でも、担当する先輩の名前と、教える内容の設計が語られれば十分です。
危険な答えの例は、「研修会社に任せています」だけで社内の誰が関わるか説明できない、あるいは「先輩について現場を覚えてもらう」だけで内容の設計が語られない。
その答えが示す組織の欠陥は、育成を外部や個人に丸投げしていること。社内に技術を教えられる人がいないか、教える文化が根づいていないかのどちらかで、若手は自力で這い上がるしかありません。
組織・意思決定を深掘りする質問
18. 技術的な意思決定は、誰がどう決めていますか。直近で決めた具体例と、その意思決定に関わったメンバーを教えてください
狙いは、技術判断が現場の納得で進むのか、上から降ってくるのかを直近の実例で知ること。
良い答えの例は、現場のエンジニアが選定に関わるプロセスと、直近で決めた具体的な技術選定(言語、フレームワーク、ミドルウェアなど)、そこに関わったメンバーの名前が語られること。
危険な答えの例は、「上が決めたものに従います」「決定プロセスは特にありません」「発注元が指定してきます」。
その答えが示す組織の欠陥は、現場のエンジニアが技術的な思考力を鍛える場面が乏しいこと。判断せずに従うだけの経験を数年積んでも、技術者としての判断力は育ちません。
19. 開発する製品やシステムの要件・仕様は、最終的に誰が決めていますか。自社の判断で決められる範囲はどの程度ですか
狙いは、あなたたちが「何を作るか」の判断に関われる立場にあるかを、率直に問うこと。
良い答えの例は、自社で企画・仕様策定を行い、エンジニアが要件の議論に参加している具体像が語られること。委託開発でも、顧客と直接対話しながら要件を握る余地が語られれば十分です。要件を握れる会社では、設計の経験が積めます。
危険な答えの例は、「発注元が仕様を決めてきます」「上流工程には関われません」「言われた通りに作るのが仕事です」。
その答えが示す組織の欠陥は、要件の判断から切り離された「作業」だけを担う立場に置かれること。何を作るかを考える経験を積めない環境では、あなたは何年経っても実装の指示待ちから抜け出せません。
自分の未来を逆算する質問
20. 3年目のエンジニアが、実際にどんな仕事をしているか、実在する1人を例に教えてください。入社時のスキル、この3年で任された仕事の変化や乗り越えた壁、現在の担当領域まで含めて教えてもらえると助かります
狙いは、入社後の成長曲線を、具体的な先輩像から逆算すること。任される仕事だけでなく、スキルの伸ばし方や壁の乗り越え方まで聞くことで、成長プロセス全体が見えます。
良い答えの例は、実在する3年目の名前、入社時のスキル、この3年で任されてきた仕事、乗り越えた壁、現在の担当領域、直近で挑戦したことが具体的に語られること。
危険な答えの例は、「案件によります」「人それぞれです」「まだテスターや保守が中心の人もいます」、あるいは仕事内容は言えても成長のプロセスが語られないこと。
その答えが示す組織の欠陥は、3年経っても実装の裁量が任されない構造か、育成のプロセスを組織として設計・観察していないこと。3年目でテスト実行や既存機能の保守が中心なら、あなたの3年後も同じ景色になります。
21. このチームで活躍している人と、伸び悩む人の違いは何ですか。直近で活躍している1人と、伸び悩んでいた1人(匿名で構いません)の違いを教えてください
狙いは、その組織で成功する人物像を知り、自分と重なるかを確かめること。
良い答えの例は、具体的な行動特性の違いが語られること。「自ら学ぶ姿勢」「フィードバックを求める頻度」「技術への好奇心」といった観点が挙がれば、評価軸の手がかりになります。
危険な答えの例は、「まじめな人」「素直な人」「言われたことをやる人」で終わること。
その答えが示す組織の欠陥は、成功の基準が「従順さ」でしか語られないこと。技術的な成長と関係のない指標で人を評価する組織では、あなたが技術で伸びても報われにくくなります。
22. あなた自身が、この会社で働いてきた中で、技術者として一番成長したと感じた経験は何ですか
狙いは、面接官自身がその組織で技術者として成長を実感できているかを聞くこと。
良い答えの例は、具体的な技術的挑戦、乗り越えた壁、そこで得た力が語られること。面接官の目が輝けば、その会社に成長の土壌がある手がかりになります。
危険な答えの例は、答えに詰まる、待遇や役職の話にすり替わる、「休みが取れるようになったこと」「マネジメントを覚えたこと」で終わること。
その答えが示す組織の欠陥は、面接官本人が技術で成長する場を持たなかったこと。答える側が語れないなら、あなたが同じ組織で技術者として伸びる保証はありません。技術以外の話でごまかす時点で、その会社の中核は技術ではないと明らかになります。
その質問は、あらゆるIT企業に投げてください
この22個の質問は、あらゆるIT企業に対して共通に使えるものです。
大企業でも、中小企業でも。メーカー系でも、スタートアップやベンチャーでも。自社サービスの事業会社でも、受託中心の会社でも。ITのドメイン領域が違っても、都市部の企業でも、地方の企業でも。規模も業態も、立地も、この質問セットの効き目には関係ありません。
会社の規模や業態、扱っているドメインや所在地によって、「うちが受ける会社には当てはまらないのでは」と感じる場面もあると思います。でも、そうした違いに立ち止まる必要はありません。
技術とエンジニアに誠実な会社なら、規模や業態を問わず、この22個に真っ直ぐ答えられます。逆に、「うちは特別だから」「うちは例外だから」と規模や業態を言い訳にして具体で答えない会社は、その時点で誠実さから離れています。
ですから、あなたが面接に進むあらゆるIT企業に対して、遠慮せず、手を抜かず、この22個を投げてみてください。会社を選ぶのは、あなたです。相手が大企業でも地方の中小でも、あなたが問う権利は同じです。
まとめ
最後に、この記事で最も大切にしてほしいことを、もう一度お伝えします。
面接は、企業側があなたを値踏みする場ではありません。企業とあなたが、お互いにフェアな立場で「一緒に働けるかどうか」を確かめ合う場です。企業があなたを見るのと同じだけ、あなたも企業を見てください。この姿勢を持ち続けている限り、就職活動はあなた自身の未来を選ぶ主体的な時間になります。
今回の22個は、どれも「直近の具体で語れるかどうか」に組織の姿勢が表れるように選びました。
とくに最初の6問は、会社が技術とエンジニアに誠実かどうかが見える大事な6問。投げるのは、後半面接に出てくる部課長やマネージャ層です。
6問中3問以上で「答えられない・特にない・抽象論」が返ってきたら、その会社にあなたの数年を預けるのはリスクが大きいと思います。技術の会社なのに、部課長が答えられないのはかなりおかしな状態です。
6問を通過した会社に対しては、残りの16問でより深く技術文化を掘り下げてみてください。数字と固有名詞がすらすら出てくる会社と、抽象論に逃げる会社の差は、面接の10分で見えてきます。
もし第二新卒として今、他社の面接を受けている方も、この22個はそのまま活用できます。使う場面はあくまで、これから面接に進む相手の会社に対して、です。
この記事をブックマークして、後半面接の前夜にもう一度読み返してもらえたら嬉しいです。そして、最初の6問にきちんと答えられなかった会社は選ばない、と自分に約束しておきましょう。
最初の会社選びは、あなたのエンジニア人生の最初の分かれ道。選び直しの負担は思っている以上に大きいので、最初のうちに納得のいく会社を選んでほしい。私自身、若い頃に自分の選択で遠回りをした経験があるからこそ、みなさんにはできるだけまっすぐな道を歩んでほしいと思っています。
これから広い世界で活躍していくエンジニアの卵のみなさんへ、私からのささやかな贈り物として、この記事を渡します。使えるところは使い、合わないところは無視して、みなさんが自分に合った会社と出会えることを、心から願っています。
あなたのこれから続く道が、いい景色のなかを進んでいきますように。
ボン・ボヤージュ。素敵な旅を。
