アンソロピック「Project Panama」とMetaの裁判記録を調べてみたらヤバい資料が沢山出てきた
「紙の書籍は、ネットに無いから大丈夫」そう思ってました。
でも、数百万冊の物理的な書籍が「裁断」され、「スキャン」され、そして「産業廃棄物」として捨てられていた。海賊版サイトからダンロードしてた。
きっかけはこちら▼
ワシントン・ポスト/2026年1月27日掲載
“Inside a tech company’s secretive plan to destroy millions of books”
「テック企業の極秘計画―数百万冊の本を破壊する内幕」
https://www.washingtonpost.com/technology/2026/01/27/anthropic-ai-scan-destroy-books/

そこで、アンソロピック「Project Panama」とMetaの裁判記録を調べてみたらヤバい資料が沢山出てきました。AIの激しい競争と、企業の儲けのためなら手段を選ばない事実が、裁判記録から出てきます。SlackやEメールのスクショなど。アンソロピックやMetaの内情が生々しく書かれてました。
当初は「裁判記録って紙で保管されているから、個人じゃ調べられないなぁ」と思いこんでたんですが、無料サイトがあった!
で。調べてみた備忘録です。誰でも調べられるし、AI使えば簡単に知りたいことを抽出できます。
Bartz v. Anthropic PBC (3:24-cv-05417)
https://www.courtlistener.com/docket/69058235/bartz-v-anthropic-pbc/
Kadrey v. Meta Platforms, Inc. (3:23-cv-03417)
https://www.courtlistener.com/docket/67569326/kadrey-v-meta-platforms-inc/
Bartz v. Anthropic訴訟
と
Kadrey v. Meta訴訟
は別裁判なのですが、密接な関係にあります。
しかし判決は異なるのです。
・Anthropicは和解
・Metaはフェアユースで勝訴
調べれば調べるほど、AI業界は大金が動く滅茶苦茶な世界でした。
池松潤/Jun Ikematsu
コミュニケーションデザイン/事業計画/エクイティストーリー/エンタープライズ営業コンテンツ/マーケティング/コンテンツなど。慶応義塾大学卒/博報堂を経て、スタートアップCEOの壁打ち相手、婦人公論.jp 動画YouTube・新規事業開発担当。AI領域も新規事業開発している。ときどき婦人公論.jpにコラムも。 ⇒https://lit.link/junikematsu
※本記事は筆者個人の見解であり、所属組織の公式見解を代表するものではありません。
0:判事が裁判記録を読めるように「封鎖解除」した
・通常、和解が成立すると文書は機密扱いとなるが、今回は判事が4,000ページ以上の訴訟文書の封印解除を命令した
・これによりワシントンポスト紙が公開文書に基づいた詳細な調査報道を行った
・裁判資料により、AI企業がチャットボットに「食べさせる」ために、書籍の購入、スキャン、そして廃棄という手段で競って書籍を入手していたことが明らかになった

1:極秘計画「Project Panama」の全貌
「購入」→「裁断」→「スキャン」→「廃棄」
購入: 古本屋や書店から数百万冊の本を買い集める 。
裁断: 「油圧式裁断機」で背表紙を切り落とす 。
スキャン: 高速スキャナーでデジタル化する 。
廃棄: 用済みになった本はリサイクル業者へ回収させる 。

内部文書にはハッキリとこう書かれていました。
「Project Panamaは、世界中のすべての書籍を破壊的にスキャンする私たちの取り組みである」
「私たちがこれに取り組んでいることを知られたくない」
驚くべき規模感
ペース: 1日最大 11,000冊
期間: わずか6ヶ月で最大 200万冊
費用: 数千万ドル(数十億円)


2:なぜ「書籍」なのか?
理由: AIの知能向上のため
・ネットの文章(SNS等)
校正されておらず、断片的で論理的でなく、ノイズが多い
・書籍の文章
編集者により校正されており、論理的で、良質な学習データとなる
・裁判で判明した事実
まず海賊版サイトからダウンロードを行った
(違法と認識して実施、裁判でも違法と判断)
その後、書籍を購入してスキャン作業を行った
(こちらは裁判でフェアユースと判断された)

3:AI企業の「狂った開発競争」
背景
AI各社は開発競争の中にあり、「良質なデータ」を不可欠としていた
書籍データの価値
・Anthropic共同創業者は、書籍データが「質の低いインターネット言葉」ではなく「上手に書く方法」をAIに教えられると理論化した
・Metaの2024年のメールでは、デジタル書籍へのアクセスは競合他社と戦うために「不可欠」であると述べられている

4:違法性の認識 /Anthropic
Ben Mann 共同創業者
2021年6月、海賊版サイト「LibGen」から個人的に大量ダウンロードを実施
「故意に著作権法に違反している」と明言するサイト「Pirate Library Mirror」が登場したとき
▼
「just in time!!!(ちょうど間に合った!!!)」と喜び、社内で共有した

5:違法性の認識 /Meta
社員の懸念
Meta従業員は数回にわたり、許可なく書籍をダウンロードすることは著作権法違反の恐れがあると懸念を伝えていた。
経営層の関与
2023年12月の内部メールによると、「MZ(マーク・ザッカーバーグCEOと思われる)へのエスカレーション」の後に、この慣行が承認されたと記されている。ただし、マーク・ザッカーバーグ本人はこれを否定している

6:AI企業の既成事実化戦略
専門家の見解
コーネル工科大学 ジェームズ・グリメルマン教授
・巨額投資をした後では後戻りできない状況を自ら作り出した
・競争圧力により「閉じ込められ」、倫理的判断ができなくなった
・急速で賭け金の高い競争環境が、法的・倫理的配慮を後回しにさせた

7:Alsup判事の判決/「AI学習(利用)自体は合法。入手方法は違法」
AIのトレーニング利用は「本質的に変革的(transformative)」であり、元の作品を複製・代替するものではなく、新しいものを創造するため、フェアユースの範疇であるとした
和解の争点は「どのように素材を入手したか」であり、「開発に使ってよいか」ではなかった 結果: 技術進化に法整備が追いつかない間に既成事実を積み上げ、後から「変革的利用」で正当化する戦略が成功した形となった

8:日本人著者(小説家)の被害
現状
検索すると多数の日本人著者の書籍が含まれていることが判明
確認
・和解サイト、海賊版サイト(LibGen)、Books3メタデータで確認できた

9:制度の穴がある/作品は使われているけど和解金は…
問題点
作品は使われているが、和解金を受け取れないケースが多い可能性が高い
日本語書籍の多くは無断使用された可能性があるが、和解金の受取条件を満たさない「制度の穴」がある
和解金受取の条件
・ISBN または ASIN を持つこと
・米国著作権局への登録があること(初版から5年以内等)
・LibGen または PiLiMi に存在した証拠があること
実際に学習に使われた「Books3」データセットには、上記条件を満たさない多数の書籍(特に日本語書籍)が含まれており、これらは補償されない可能性が高い

10:タイムスケジュール
・2026年2月9日
オプトアウト(和解拒否・離脱)の最終期限
・2026年3月30日
和解金請求期限(参加する権利の行使期限)
・2026年4月23日
最終承認公聴会(裁判所が和解を最終承認するか決定)

11:「書籍・日本語データの無許可利用」とは
「AI学習の是非」以前に、そもそも「入手」と「複製・保存」の段階に問題がある。
1:【入口】入手:
海賊版サイト(LibGen, Books3)から無許可ダウンロード。
これは違法と判断された
2:【変換】複製・保存
ライブラリへの保存
3:【利用】AI学習
AIモデルの訓練に使用。これは判決では合法(変革的利用)とされた

12:AI時代の言語データと言語主権
言語データとは:
・AIが賢くなるための「燃料」
・書籍、SNS、会話ログ、辞書など。
・AIはこれを食べて日本語のニュアンスや常識を学ぶ
言語主権とは:
国家主権の言語版
・日本語を誰がどう学習し、何が「標準」となるか
・海外AIモデルによって日本語の意味や文化が勝手に要約・改変されないか
・データが一方的に吸い上げられて終わらないか、という懸念

英文・裁判記録4000頁を調べられる時代
これまでは、こうした情報は専門家や大手メディアしか扱えませんでした。しかし今は、誰でも一次情報(裁判記録など)にアクセスし、AIを使って「何が起きているのか」を詳細に分析できる時代です。
「Project Panama」のような裏側の事実は、待っていてもニュースのヘッドラインだけでは見えてきません。巨大企業の「ブラックボックス」を知るための個人の武器にもなるのがよく解りました。
1. 裁判記録はココで読める
PACER(有料・公式)
https://pacer.uscourts.gov/
事件番号:3:24-cv-05417
CourtListener(無料)
https://www.courtlistener.com/
Bartz v. Anthropic PBC (3:24-cv-05417)
https://www.courtlistener.com/docket/69058235/bartz-v-anthropic-pbc/
Kadrey v. Meta Platforms, Inc. (3:23-cv-03417)
https://www.courtlistener.com/docket/67569326/kadrey-v-meta-platforms-inc/
2. 「アンソロピック訴訟して和解後どうするか」の公式サイト
https://secure.anthropiccopyrightsettlement.com/
・和解契約書全文
・裁判所命令
・FAQ
・請求フォーム



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