オウンドメディアや広報/PRがAIをどう使うか?―具体的な使い方を書いてみた
AIが登場してからの約2年間、実際の現場でどう活用すべきか試行錯誤を重ねてきました。そこで気づいたのは、AIは「万能の執筆者」ではなく、「強力だが限界のあるアシスタント」だということ。上手に使えば仕事の質と効率は飛躍的に高まりますが、使い方を誤ると仕事の質が落ち、結果として人間の心に届かない内容になってしまいます。
先日PR界隈の方々の内々の会議で感じたのですが「そもそも前提となるAIの使い方の情報」つまり「AIの意味や位置づけ」を明確にした「まとまった情報」があった方がいいなと感じました。なのでこのnoteを書いてます。
多くの企業や組織が直面している問題は「AIをどう活用するか分からない」から「AIに頼りすぎてダメになった」とか「やっぱAIが書いたのは平凡で面白くない」など色々あります。どれも的はずれな話しです。
広報・PR担当者、オウンドメディア運営者が、実際にどのようにAIを活用するか。その具体的な手法と限界、人間にしかできない価値について、深掘りしたのを書き残しておきたいと思います。熱量高めの1万5千字超。ココロに余裕があるとき、隅から隅まで読んで頂ければ嬉しいです。
池松潤/Jun Ikematsu
コミュニケーションデザイン/事業計画/エクイティストーリー/エンタープライズ営業コンテンツ/マーケティング/コンテンツなど。スタートアップCEOの壁打ち相手。慶応義塾大学卒/博報堂を経てスタートアップの若手と世代間常識を埋める現役58歳。ときどき婦人公論.jpにコラムなど。 ⇒ https://lit.link/junikematsu
1. AI時代のライティング ―変わるものと変わらないもの
AI登場によって何が変わったのか(作業効率や制作プロセス)
PR・広報・オウンドメディアの現場にAIが本格的に導入されて、私たちのライティングプロセスには大きな変化が生まれました。かつては文章作成のすべての段階に多くの時間と労力を費やしていましたが、今やAIは私たちの強力なツールとなっています。
これはアニメ・攻殻機動隊でサイボーグ化した人間に、生身だけの人間では太刀打ちできない状況に似ています。AIで知的・強化された人間に、AI無しの人間はビジネス競争では勝負にならない状況が生まれています。
まず、作業効率の面で劇的な変化がありました。AIを活用することで、下書きの作成時間が従来の3分の1以下に短縮されるケースも珍しくありません。特に定型的な文章やプレスリリースの基本構造、企業情報の要約などは、AIが短時間で下地を作成できるようになりました。
また、制作プロセス自体も変化しました。従来の「リサーチ→構成検討→執筆→推敲→校正」という直線的なフローから、AIを活用した「大枠設計→AIの概要提案→人間による編集・価値付け→AIによる推敲支援→最終調整」という協働型のプロセスへと移行しつつあります。
―具体的には以下のような変化が見られます

このような変化により、「どのような文章を書くか?」という技術的な部分よりも、「なぜこの内容を伝えるべきか?」「どのような価値を提供するか?」といった本質的な部分に注力できるようになりました。これは劇的な変化です。使ってない人に伝えるために例えるならば「戦争で、AIやドローンによって戦闘方法が激変した様子に似ている」と言ったらニュアンスが伝わるでしょうか。それほどの大きな変化が生じています。
2:変わらない「人間ならではの価値」とは
AIの導入によって効率化された部分がある一方で「人間にしかできない価値」も明確になってきました。
最も重要なのは「共感を生み出す」感情表現です。記憶に残る表現とでも言いましょうか。AIは膨大なデータから学習した「一般的に適切な感情表現」は書けますが、特定のターゲット層の微妙な感覚や、時代の空気感を捉えた表現は、その場に身を置き、同じ時代を生きる人間だから書けるのです。AIは感情を判断できますが、的確に生み出すことはできません。人間の感情や機微は無いのです。
また、独自の視点や切り口の発見も人間の強みです。AIはデータに基づく一般解を提示することは得意ですが、まだ誰も気づいていない視点や、データには表れない直感的な気づきは、人間の経験や感性から生まれます。企画力はAIがもっとも苦手な部分です。特に「グッと刺さる見出し」や「思わずシェアしたくなる切り口」の発見において顕著です。
文脈に応じた適切な表現のさじ加減も、人間の専門性がまさる部分です。企業や組織の置かれている状況、社会的背景、ターゲット読者の特性など、複雑な要素を総合的に判断して「今、この状況で、どのように伝えるべきか?」という繊細な調整は、AIでは難しい領域です。
そして何より、責任と倫理的判断は人間が担うべき部分です。発信する内容がどのような影響を持つか、どのような反応を呼び起こす可能性があるか、社会的責任を果たせているかなど、最終的な判断は常に人間が行うべきものです。

AIは強力なツールですが、最終的に伝えたいメッセージの本質や、それを受け取る人々との距離感を設計するのは人間の役割です。AIをツールとして使いこなしながらも、人間ならではの感性と判断力を磨き続けることが、これまで以上に重要になっています。重要な点は、AIの奴隷になるか、ツールとして使いこなすか?の視点を持つことです。
3.:AIを活用したリサーチと企画のプロセス【実践編】
―「視点の漏れ」をなくすためのAI
リサーチと企画プロセスは基盤となる重要なステップです。しかし従来は、人力でしたから、リサーチの深さと広さ、時間的制約によって「視点の漏れ」が生じることが避けられませんでした。
AIを活用することで、この「視点の漏れ」は劇的に軽減できるようになりました。例えば、特定のテーマについてリサーチする際、AIに「このテーマに関して考慮すべき異なる視点と関連ニュースを30個挙げてください」と指示すれば、自分では思いつかなかった「切り口」や「関連トピック」を従来は約2〜3日かかっていた読み込み分析作業を、1〜2時間程度で得ることができます。
具体的な活用法として、「ステークホルダー分析」があります。商品やサービスに関するコンテンツを作成する際に、AIに「この商品に関わるすべてのステークホルダーとその関心事を列挙してください」と指示することで、顧客だけでなく、取引先、社内の他部門、規制当局、さらには地域社会など、多様な利害関係者の視点を網羅的に把握できます。
また、競合分析においても視点の漏れを防げます。「この業界で成功している企業のコンテンツ戦略における共通点と相違点を分析してください」と指示することで、自社の盲点になっている戦略やアプローチを発見できることもあります。
ただし、AIによる視点の提案はあくまで「可能性の示唆」であり、その中から実際に価値のある視点を選別し、深掘りするのは人間の役割です。AIの提案の中には、ハルシネーションという的外れなものや、表面的なペラい文章も含まれる場合があるため、批判的思考やAIに対して教育的な視点を持って精査することが重要です。
―効率的なAI・ディープリサーチの活用法
※AI・ディープリサーチとは、AIがユーザーの指示に基づいて、複数の情報源から自動的に情報を収集・分析・レポート生成する機能です。
AIのリサーチは、「階層的なアプローチ」をします。まず広く浅く情報を収集し、次に特定の領域を深掘りしていくという方法です。AIのディープリサーチの構造をざっくりと理解しておくと特性が把握しやすくなります。

このような方法で、従来なら人間が数日かかっていたリサーチを、数十分から数時間に短縮できるようになりました。
また、効果的なディープリサーチのために以下のテクニックも有用です

AIを使ったリサーチの最大の価値は、膨大な情報を短時間で整理し、人間が思考するための「足場」を提供することです。この足場をもとに、人間は創造的な思考や批判的分析に時間を割くことができます。
4:企画立案での「AIの限界」を知る
AIはリサーチや情報整理において強力なツールですが、企画立案においては明確な限界があります。特に「刺さる企画」や「文章の起承転結の転」を生み出す上では、AIはあくまでアシスタントに留まります。現在の段階ではココがネックです。このことを知っているか、知らないかで、使いこなし方が変わります。
AIの企画立案における限界点

【重要】企画立案でAIの効果的な活用法は?
とはいえ、AIを適切に活用することで企画プロセスを大幅に強化することは可能です。

よくある失敗ケースは、AIの出したアイデア群からそのまま選ぶことですが、効果的なのはAIの提案を見て「これをヒントに、もっと斜め上のアイデアを考えよう」というアプローチです。つまり人間の能力をより拡張できるので、実はAIによって能力格差が広がります。AIは能力格差を広げるツールだと思った方がいいです。
企画立案においてAIを最も効果的に活用する秘訣は、「AIにアイデアを丸投げする」のではなく、「人間とAIの対話の中からアイデアを組み上げていく」というマインドセットです。
そのときに有用なプロンプトは「本質的に考えてください」です。「因数分解は不要」や「思慮深く本質的に考えて」というのも使えます。この一言だけで、自分にない視点をもたらしてくれる場合があります。
ですからAIを単なる出発点と捉え、そこから人間の創造性と直感、経験を組み合わせることで、既存の枠を超えた企画が生まれやすくなります。どれも人間の能力次第です。だからAIを雑務をさせる感覚で扱うのではなく、自分の能力を高めるためのツールとして使いこなすことが結果の違いを引き起こします。
AIは「情報の海」から多様な可能性を引き出す「網」の役割を果たしますが、その中から「真に価値のあるものを選び」それを「磨き上げる」役割は、現段階では人間の方が得意なのです。
5. 心をつかむ「構成」は人間やった方がいい
「刺さる切り口」はAIでは作れない理由
PR・広報・オウンドメディアのコンテンツで、読者の心を掴む「構成」とか「切り口」は成功の鍵を握りますが、この領域こそAIが最も苦手とする部分で、人間の創造性が必要な領域です。
AIが「刺さる切り口」を生み出せない主な理由は、「感情の発露ができない」点にあります。AIは膨大なデータから学習することで一般的なパターンを把握できますが、特定のオーディエンスが「なぜ」そのコンテンツに惹かれるのか、その深層心理を真に理解することは困難なのです。
例えば・・・
「SDGsの取り組みについて企業が発信する際の効果的な切り口を考えてください」
とAIに尋ねると
・「環境への貢献」
・「社会課題解決のストーリー」
・「数値で見る成果」
といった一般的で無難な提案が返ってきます。そんなものは実際に使えません。しかし、本当に人の心を動かす切り口は往々にして、より具体的で感情に訴えかけるものです。こんな感じです。
・「社員の子どもたちへのインタビューから見えた未来への責任」
・「失敗から生まれた持続可能なイノベーション」
人間の経験と感性から生まれる視点は、AIだけで「ポン!」とは導き出せません。AIは「今この瞬間の文化的文脈」を完全に把握することが難しいという限界があります。
例えば、ある社会問題について昨日までの常識が今日覆される可能性があり、そのような最新の時代の空気感を捉えた切り口を生み出すには、現実の世界に身を置く人間の感性が不可欠です。
真に刺さる切り口は「誰も考えつかなかった視点」から生まれることが多いのですが、AIの提案は基本的に過去のデータに基づくため、真に革新的な発想には限界があります。データの中に存在しない新たな視点を生み出すためには、人間の「飛躍的な思考」が必要なのです。ですので人間がやるべきことは、AIを上手に使いこなして「起承転結の転」を考えることなのです。
6:起承転結の「転」を設計するのにAIを使う方法はあるか?
文章構成の基本とも言える「起承転結」において、最も難しく、かつ読者の心を掴む鍵となるのが「転」の部分と言えます。3点話法でも変わりません。この「転」は読み手の予想を覆し、新たな視点や感情を呼び起こす役割を持ちますが、AIだけで設計するのは難しいのが現状です。
しかし、AIを補助的に活用することで、「転」の効果を高める方法はあります。

しかし、これらはあくまで「転」のための素材やヒントを得るための方法であり、最終的にどの素材を選び、どのように表現し、文脈に組み込むかは人間の感性と判断が決定的に重要です。重ねて言いますが、AIは人間の能力を補完してくれますが、人間の能力の格差を広げるツールだと思った方がいいと思います。
つまり、AIが提案する「転」の素材の多くは、まだ「生焼け」の状態であり、これを心に刺さる形に「調理」するのは人間の仕事なのです。
効果的な「転」は、人間に「ハッ」と息を呑む瞬間を生み出します。これは単なる情報の転換ではなく、感情的な共鳴を引き起こすものであり、そのためには人間の共感力と感性が不可欠です。
7:「SNSシェアしたくなる記事」はいきなりAIに書けるか?
「シェアされる記事」の本質は、人間が「これは自分の知り合いにも価値があると思ってもらえる情報だ」と判断することにあります。単なる情報の価値だけでなく、シェアする側の自己表現やアイデンティティとも密接に関わる複雑な判断です。
AIにいきなり「SNSでシェアされやすい記事を書いて」と指示しても、得られる結果には限界があります。なぜなら、シェアを誘発する要素には以下のような微妙な要素が絡み合っているからです

とはいえ、AIと人間が上手に使いこなすることで、シェアされやすい記事を作成することは可能です。
スグつかえる基本的なアプローチ4つのポイント

シェアされる記事の本質は、単なる情報ではなく「共感を呼ぶ物語」にあります。AIは情報を構造化し、過去のパターンから学ぶことはできますが、真に人の心を動かす物語を紡ぎ出すのは、喜びや悩みを持つ人間だからこそできることなのです。
真に価値あるコンテンツは、AIにいきなり丸投げするのではなく、人間とAIの強みを組み合わせたプロセスから生まれます。AIは効率化と多様な視点の提供という形で貢献し、人間は感性と共感力、文脈理解という形で価値を加えるという、ツールとして上手に使いこなすのが現段階では有効なのです。しかしAIがより進化するとその考え方も変わるかもしれません。
8:「 AI×人間」ライティングフロー【2025年2月】
段階ごとの執筆プロセスと、AIの役割分担
効果的なコンテンツを作成するためには、AIと人間のそれぞれの強みを活かした役割分担が重要です。各章の執筆プロセスにおいて、AIと人間はどのように協働すべきか、具体的なフローを見ていきます。
①企画・構想段階
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