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新刊『嫌われ者の正体』が問いかけるもの―深く届けることの難しさ


「読まれなければ始まらない」

しかし同時に「読んで納得してもらわなければ意味がない」このジレンマこそが、元新聞記者でありジャーナリストの石戸諭さんが『嫌われ者の正体』で問いかけていることなのではないでしょうか。そしてそれはあらゆるメディアが抱える本質で永遠の課題でもあります。

私ごときは、その課題の周辺をぐるぐる廻っているだけなのですが、これを解決するのは本当に難しい。長く広告業界で働いてきて「情報を届けること」を追求し続けてきたからこそ、SNS時代のこの課題の深さを痛感してます。

本著は、メディア転換期の影響力の正体を見極めようとした石戸さんの取材塊そのものですが、あえて一言でいうと「思慮深さ」にこの本の核心があります。この「思慮深さ」というレンズを通して、メディアの影響力や社会の反応をひも解いている。

「嫌われ者」がどのようにして議論を巻き起こし、時には誤解を招き熱狂を起こすのか。どのような構造でバズるのか。これは「転職」などで「個人の市場価値」を問われるビジネスマンの課題にも通じるのではないでしょうか。

【兵庫県知事選とメディアの構造】熱狂とアンチ生む「嫌われ者」の正体とは? ReHacQ 生配信   2024/12/16


池松潤/Jun Ikematsu
コミュニケーションデザイン/事業計画/エクイティストーリー/エンタープライズ営業コンテンツ/マーケティング/コンテンツなど。スタートアップCEOの壁打ち相手。慶応義塾大学卒/博報堂を経てスタートアップの若手と世代間常識を埋める現役58歳。ときどき婦人公論.jpにコラムなど。 ⇒ https://lit.link/junikematsu




1:石戸さんの記事を振り返る


私が石戸さんに注目したのは、いまから6年前。ハフポのニュースXでハゲタカの著者・真山仁さんの新刊「エネルギー」の対談に竹下隆一郎さんに呼ばれて出演していた時まで遡ります。

「ハゲタカ」の真山仁、日本経済のこれから【NewsX】ハフトーク 第7回



僕は大の真山仁さんファンなのですが、石戸さんのコメントに感銘を受けたのを妙に記憶してます。その後、『ルポ・百田尚樹現象』(2019年)も真っ先に読みました。

そして、沢木耕太郎さんの大ファンなので、この記事も印象深いです。

沢木耕太郎が70歳を過ぎても「文章の探求」を続けられる理由 2019.02.04

最近ではこの記事も印象深かった。

「ヒト」を切り捨て衰退した日本、じつは「2023年後半」から流れが一変していた。だから今こそ、「経営」を語ろう 2024.02.14



こうして日本人の「新聞離れ」が進んでいった…「エモい記事」を大量に生み出した新聞記者たちの悲劇的な結末 ―ネットメディアの末路を見た元新聞記者が明かす"新聞の役割" 2024/08/31


6年の歳月を経て、気づけば石戸さんの鋭い視点で取材した記事のファンになっていました。



2:「嫌われ者」が映し出す時代の姿

この本は、「嫌われ者」たちへの取材を通じて、現代社会が抱える本質的な課題を描き出しています。表面的には「バズった人」や「注目をあびた人」の取材に見えるかもしれない。しかしその本質は、私たちの社会が直面している「分断」「対立」という普遍的なテーマに深く切り込んでいるように思えます。

『嫌われ者の正体』は「見えない今」を可視化してくれる一冊だと思えてなりません。外形的には「嫌われ者」たちへの取材をまとめた本なのですが「嫌われ者」を単なる個人の性格や態度の問題としてではなく、いまの時代の構造や変化が生み出した事象として捉えています。各章で語られる本質的な視点は、思慮深さが求められる現代に欠かせない情報ではないでしょうか。

印象的なのは文章から石戸さんの気持ちが見えてくること。これは私の主観ですが、石戸さんの感情が文章から伝わってくることです。


3:「思慮深さ」という武器

本書が最も感じるのは、「思慮深さ」の重要性です。これは単なる慎重さや遠慮深さとは異なります。物事の本質を見抜いて長期的な視点で考える。必要なときには声を上げる勇気を持つことなのではないでしょうか。

日本人の「思慮深さ」は、グローバルな競争環境において意外な強みとなる可能性があります。SNSプラットフォームを使っていると陥りがちな「即時的な反応の追求」や「過度な二項対立」とは異なる、より豊かな対話が可能になるからです。

タイパや時短から生じる「端折った」情報に振り回されがちだけど、石戸さんの文章からは、「深めること」の価値を改めて教えてくれます。私には石戸さんの生い立ちに起点があるような気がしてなりません。

私達の「思慮深さ」は、欧米の「効率」でも、中国の「人口規模」でもない、独自の価値観に基づく新しい情報経済の姿ではないでしょうか。


4:『嫌われ者の正体』

目次

・プロローグ: 幼稚な極論に抗うために
・玉川徹: 権力批判は最高の素材である
・西野亮廣: 否定も批判も織り込みながら肯定しつづける
・ガーシー: 暴露で革命は起こせないという事実
・2022年の統一教会: カルトを絶対悪とするカルト的思考
・吉村洋文: 敵多き普通の男の苦悩
・山本太郎: 稀代のポピュリストの栄光と限界
・エピローグ: 思慮深さを失わないために

※試し読みはこちら



おわりに: 「読まれなければ始まらない」しかし「読んで納得してもらわなければ意味がない」


それは「どうすれば本質的なものを、より多くの人に届けられるか」という永遠の問い。

この本は、その答えに鋭い光をあてています。「思慮深さ」を持ちながら、しかし決して臆することなく発信し続けること。表層的な「いいね」や「シェア」を追い求めるのではなく、確かな取材と深い考察に基づいた発信を続けること。そして批判を恐れないこと。時には空気を読まないと批判されることを覚悟しながら、本質的な価値を追求し続けること。

この本を何度も読み返すと、新しい時代の表現者のあり方を、静かに、しかし力強く示しています。


本書は「個人の市場価値」をアピールしなければならない(転職活動中の)ビジネスマンにも通じる示唆が含まれているのではないでしょうか。ワタシ的には、特にマーケ、広報、経営企画に関わるビジネスマンの方々にオススメしたい本です。


ではまたnoteでお会いしましょう



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Jun Ikematsu / 池松潤 チップありがとうございます! よい日をお過ごしください。