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どうか私の代わりに千年後に爆発して|考えすぎクラブ活動【創作】

私は虎を飼っている。
普段は9割「はなのすきなうし」のフェルジナンドみたいに温厚な奴だ。

ただ。
月に一度、月の使者という厄介者がやってきて、お構いなしに、虎の檻を開けようとする。
とはいえ、檻の戸を開けるだけでは、虎は人に襲い掛かろうとはしない。
虎だってバカじゃない。
その爪の鋭さや、牙の残酷さを知っている。
だから、戸が開け放たれたからといって、誰彼構わず飛び掛かってはいかない。むやみな殺生は己の精神を貶めるだけだ。虎にもプライドはある。

しかし。
世の中には、他人の傷口を抉り、その指先についた血でしか自分の輪郭を確かめられない者がいる。自分の内で熱を生む術を見つける努力もせず、人の灯りを吹き消す者がいる。
彼らの頭からは、黒い闇の胞子が吹き出し、その胞子は周りにどんどんと寄生していく。

その瞬間、解き放たれた私の虎は、爪と牙を研ぎ始めるのだ。
虎は、低く、低く、地響きのような音で喉を鳴らす。
「次はない」と、その黄金の眼をギラリとさせる。

闇に堕ちた者たちはなおも、人の灯りを吹き消そうと、息を尖らせる。
虎の牙が、かすかに光を反射して光る。
次に同じことをしてみろ。そうなれば、この爪と牙がお前を引き裂くだろう。
低い唸り声が、私の胸の内だけで小さな爆発を繰り返している。

彼らが虎の威を感じ取っているかどうかは分からない。
ただ、多少は大人しくなる。
虎はホッとして檻の中に戻り、丸くなってうずくまる。
虎はこう見えて、体力がない。

その爪は、相手の喉を搔き切るには十分鋭く、その牙は、相手の身体を引き裂くのに申し分ない。
また、虎には、飛びかかるに至る道理の通った確固たる理由もある。
閻魔様に問いただされたとしても、しっかりと論理立てて行った経緯を聞いてもらえれば、「うむうむ」と納得されると信じている。
そして。
もし閻魔様の決断で地獄に落とされるとしても、虎は覚悟をしている。
常に覚悟を持って、爪と牙を使うと心に決めている。

だから結局。
虎が実際に闇の者を引き裂いたことは、ない。
月の使者が来なければ、そもそも檻は開かないし、使者が去れば、虎は案外すんなり檻に戻り、うずくまって寝てしまう。

それに私の虎は知っている。
黒い闇の胞子を撒く者たちもまた、最初から闇だったわけではないことを。
どこかで傷つき、拗れ、自分の光を見失い。
他人の光を吹き消すことでしか、自分の輪郭を保てなくなってしまっただけ。

だから虎は、今日も喉を鳴らすだけだ。
威嚇だけして、結局、爪も牙も使わない。

いや。使えないのだ。
虎はこう見えて、花の香りに心を寄せている方が、ずっと落ち着く。

けれど。
たまに出遭ってしまう。
どう考えても、野放しにしてはいけない者に。
誰かの人生を壊し、誰かの尊厳を喰らい、それでもなお、自分だけを生かし続けるおぞましい者に。

そういう者を見るたび、思う。
もし世界のどこかに、千年後まで効力を持つ呪いの言葉があるのなら。
どうか私の代わりに、千年後にその者と共に爆発してくれ。
骨も、肉も、その傲慢な魂さえも木っ端みじんに引き裂いて、光さえ抜け出せないブラックホールにそのまま吸い込まれて消えてくれ。
二度とこの宇宙の塵にすら戻れないように。

私の虎は、結局、闇を蹴散らすほど暴れることもなく、ただ花の香りを楽しんで、静かに逝くのだから。




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