ここで書いていきたいこと
長く、人事と組織の仕事をしてきました。
私にとってこの仕事は、
制度を整えることや、
人を配置することだけではありませんでした。
ずっと心のどこかで見つめてきたのは、
人はどんなときに前を向くのか。
組織はどんなときに、静かに、でも確かに変わり始めるのか。
そんな素朴な問いでした。
実家が工務店だったこともあり、
幼いころから図面を読むことが身近にありました。
一本の線の向こうに、まだ見ぬ空間を思い描くこと。
目には見えないけれど、そこに生まれる暮らしを想像すること。
その感覚は、いつしか建物ではなく、
人と組織へと向かっていったように思います。
二級建築士の資格を持っているのも、その名残かもしれません。
これまで、総合電器、外資系消費財、
リテール、教育、技術商社・上場企業グループなど、
異なる文化と事業構造を持つ組織で、
人事・組織開発の仕事に携わってきました。
採用、人事制度、労務、育成、組織開発、
人的資本KPIの設計まで、
制度と現場、経営と人をつなぐような
役割を担ってきました。
けれど、どの現場でも感じてきたのは、
制度だけでは人は動かない、ということでした。
仕組みを整えても、言葉を尽くしても、
思うように届かないことがある。
その一方で、ほんの少し関わり方が変わるだけで、
人が息を吹き返したように動き出し、
組織に新しい風が通る瞬間もある。
私は、その違いがずっと気になってきました。
なぜ、同じように制度を整えても、
人と組織は動く会社と動かない会社に分かれるのだろう。
なぜ、提案が生まれる職場と、
沈黙が続く職場があるのだろう。
その答えを、経験だけでなく、
理論やデータからも確かめたくて、学び直しを重ねてきました。
MBA、法学の学びを経て、
いまは人的資本経営とイノベーションを、
実務と研究の両方から見つめています。
人的資本経営という言葉を耳にする機会は、
この数年でずいぶん増えました。
けれど、本当に大切なのは、
開示を整えることや、制度を並べることだけでは
ないように思うのです。
その先にあるのは、
戦略に必要な行動が、現場で本当に起きているかどうか。
人が挑戦できているか。
提案が拾われているか。
越境や対話が生まれているか。
私は、そんな静かで本質的なところに、
人的資本経営の核心があると感じています。
そして最近は、働くことを考えるたびに、
人はどんな役職に就くか以上に、
どんな暮らしを望み、どんな時間を生きたいのか が
大切なのではないか、と感じるようになりました。
慌ただしさのなかで
何かを成し遂げることだけではなく、
自分の感覚を置き去りにせず、
だれと、どんな関わりを持ち、
どんな言葉を交わしながら日々を重ねていきたいのか。
仕事のことを考えることは、
暮らしのことを考えることでもあるのだと思います。
このNoteでは、
人事のこと、組織のこと、
学び直しのこと、働くことの意味、そして人生の遠回りや、
日々の暮らしのことも、少しずつ書いていきたいと思います。
積み重ねてきた経験や、
立ち止まりながら考えてきたことが、
どこかで誰かの仕事や生き方に、
そっと役立つことがあればうれしいです。
ここでは、答えを急がず、
人と組織のあいだにあるものを、
ていねいに言葉にしていけたらと思っています。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
