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キャサリン・ジョンソンの名言 第5話「私たちの関心は、彼らを連れ戻すことでした」

**「みんなの関心は、彼らを目的地に送り届けることでした。私たちの関心は、彼らを地球に連れ戻す方でした」**
> ―― キャサリン・ジョンソン

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## 物語

1970年4月、アポロ13号は月を目指して、宇宙空間を飛行していた。乗り込んでいたのは、船長ジェームズ・ラヴェルをはじめとする三人の飛行士。アポロ11号、12号に続く、三度目の有人月面着陸を目指す任務だった。

だが、月まであと少しという地点で、機械船の酸素タンクが爆発する。船内の電力と水、そして生命維持に不可欠な酸素までもが、深刻な不足に見舞われた。月面着陸は断念せざるを得ず、飛行士たちの目標は一つに絞られた。生きて、地球に帰ること。それだけだった。

ヒューストンの管制センターは、かつてない緊張に包まれた。飛行士たちは、電力を極限まで節約するため、司令船の機能をほぼ停止させ、本来は月面着陸用の小さな着陸船に避難していた。この着陸船を、そのまま地球への帰還船として使わねばならない。誰も想定していなかった、綱渡りの帰還計画だった。

このとき、決定的な役割を果たしたのが、キャサリンが以前から準備していた、ある備えだった。彼女はかねてより、もし船内のコンピュータが故障した場合に備え、宇宙飛行士がたった一つの星を目印にして、自分たちの位置を手動で確認できるような、観測手順と航法図を作成していた。当時は、使われる機会が来ないことを願うような、いわば保険のための準備だった。

その備えが、まさかの形で必要とされた。電力を節約するため、飛行士たちは船内の多くの機器の電源を落とさざるを得ず、通常の自動航法に頼ることができなくなっていたのである。キャサリンが用意していた手順に従い、飛行士たちは窓の外に見える一つの星を頼りに、自分たちの位置と進むべき針路を、自らの手で確かめていった。

管制センターとキャサリンたちの計算チームは、刻一刻と変化する状況の中、地球へと戻るための軌道を、何度も計算し直し続けた。求められていたのは、月へ、あるいはどこか別の場所へ向かうための計算ではなかった。ただ一つ、三人の飛行士を、確実に地球へ連れ戻すための計算だった。

後年、この時のことを振り返り、キャサリンはこう語っている。

「みんなの関心は、彼らを目的地に送り届けることでした。私たちの関心は、彼らを地球に連れ戻す方でした」

数時間に及ぶ緊迫した計算の末、アポロ13号は軌道修正に成功する。1970年4月17日、三人の飛行士は無事に地球へと帰還を果たした。誰も見ていないところで積み重ねられていた、一つの「保険」のための備えが、三つの命を救うことになったのである。

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## エピローグ ―― この言葉が生まれた背景

この言葉は、2010年に行われたインタビューの中で、キャサリン・ジョンソンが1970年のアポロ13号の危機を振り返って語ったものです。彼女があらかじめ用意していた、コンピュータに頼らずに星の観測から自機の位置を確認できる緊急時用の手順と航法図が、機体の深刻な電力不足の中で、実際に飛行士たちの生還を支える重要な役割を果たしました。

月に人を送り届けることに世間の関心が集まっていた宇宙開発競争のさなかにあって、彼女たちの本当の使命は、宇宙飛行士を無事に地球へ連れ戻すことにあったという、この言葉に込められた視点の転換は、華やかな成功の裏で危機に備え続けた、縁の下の仕事の重みを物語っています。

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*次回、第6話に続きます。*

#キャサリンジョンソン #アポロ13号 #生還 #NASA #隠れた功績

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