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パリ五輪男子サッカー モロッコ代表

パリオリンピックでの男子サッカーモロッコ代表というと、ハキミのオーバーエイジ選出とアルゼンチン戦での騒動は知っていても、実際のパフォーマンスはあまり知られていないのではないか?
今大会しか見ていない私が僭越ながら、準々決勝までの4試合と選手・監督を紹介し、準決勝以降の展望を書いていく。


大会経過

グループB第1節 vsアルゼンチン 2-1

強豪相手に前半から互角以上の戦いを見せると、ラストプレーで右サイドから見事に崩して先制。さらに後半立ち上がりにもPKで追加点を決めた、ここまでは良かった。
68分の失点から防戦一方になっていき、アディショナルタイム16分にアルゼンチンが4連続シュートで押し込んで同点。フランスは移民が多くこの試合にも大勢のモロッコサポーターが駆けつけていたが、逃げ切り失敗に怒ってピッチに乱入したり危険物を投げ込んでしまった。
2時間の中断の後なんと同点弾がVARで取り消しになり、残り3分を耐えて初戦に貴重な勝利を挙げた。

グループB第2節 vsウクライナ 1-2

22分に先制を許して前半を終えたものの、63分に退場&PKの二重罰により数的有利&同点に。しかし、首位通過を濃厚にしようと欲をかいて前ががりになった結果、逆に98分に失点してしまいまさかの敗戦。
全4チームが1勝1敗で並ぶ結果になった。

グループB第3節 vsイラク 3-0

前半から圧倒し19分に先制、28分に追加点。32分にイラクが早くも交代に打って出たものの、直後の36分にアブデのゴラッソで3点目。後半はコンディションに不安のある選手を早めに温存して、理想的な試合で首位通過を決めた。

準々決勝 vsアメリカ 4-0

再び前半から優勢で、29分にPKで先制。そして63分と70分の連続追加点で勝負あり。91分にもう1本PKを決めてとどめを刺した。アメリカの枠内シュートを1本のみに抑えた、ほぼ文句なしの試合。

選手・監督紹介

名前のカタカナ表記は、大会公式サイト(下記URL)で選手本人が発音したものをなるべくそのままカタカナに直したつもりです。
年齢、出場成績、所属クラブは8/4時点。

https://olympics.com/ja/paris-2024/team/morocco_fblmteam11--mar01

#1 Munir El Kajoui(ムニル・エル・カジョウィ)

年齢:35歳 ポジション:GK
今大会出場成績:スタメン4試合2完封
A代表歴:46試合
所属クラブ:ベルカンヌ(モロッコ)

現在はブヌ(アル・ヒラル、サウジアラビア)にその座を明け渡しているが、2018ロシアW杯などでプレーした前A代表正GK。グループステージでは毎試合スーパーセーブを見せてチームを救ってきた、経験豊富で頼もしいベテラン守護神。

#2 Achraf Hakimi(アシュラフ・ハキミ)

25歳 右SB
4試合1ゴール1アシスト
A代表77試合
PSG(フランス)

今大会男子サッカー2大スターの一角。ワールドクラスの攻撃的SB。フィールドプレイヤーでただ1人フル出場中であり、チームメイトへの声掛けなども含めてキャプテンとして圧倒的な存在感を示している。

#3 Akram Nakach(アクラム・ナカシュ)

22歳 左SB
(途中出場3試合)
FARラバト(モロッコ)

左利きの長身(181cm)SB。CBでもプレー可能であり、途中出場で重用されている。

#4 Mehdi Boukamir(メジ・ブカミル)

20歳 CB
4試合
シャルルロワ(ベルギー)

本職ではない右CBと左SBに挟まれているにもかかわらず、ここまでイエロー0枚の安定したパフォーマンスを見せている左CB。足元の上手さも十分。

#5 Adil Tahif(アディ・タフィフ)

23歳 CB
(1試合)
A代表1試合
ベルカンヌ(モロッコ)

Ayman El Wafi(ルガーノ、スイス)に代わって本戦のメンバー入り。イラク戦に途中出場したことで、フィールドプレイヤーは全16人が出場済み。

#6 Benjamin Bouchouari(ベンジャミン・ブシュアリ)

22歳 MF
(3試合)
23年3月A代表招集
サンテティエンヌ(フランス)

2年連続でレギュラーを務め、サンテティエンヌの1部復帰に貢献。中盤ならどこでもプレー可能。

#7 Eliesse Ben Seghir(エリース・ベン・セギル)

19歳 左WG
スタメン2(途中出場2)試合
A代表4試合
モナコ(フランス)

今年3月にブラヒム・ディアス(レアル・マドリー、スペイン)と同じタイミングで、フランス世代別代表を抜けてモロッコ代表を選択。
名前発音の録音で2回繰り返す間のpause(間を空ける)まで読んでしまうと、プレー面でもイラク戦から小休止中。エル・ハヌースが出場停止の準決勝では、本職である2列目中央での出番が来るのか?

Eliesse Ben Seghir PAUSE
Ilias Akhomach DOS

#8 Bilal El Khannouss(ビラル・エル・ハヌース)

20歳 OMF
4試合2アシスト
A代表14試合
ヘンク(ベルギー)

カタールW杯の3位決定戦クロアチア戦にスタメン出場でA代表デビューを飾った。広い範囲に動いて顔を出し、細かな技術と駆け引きで相手守備陣を幻惑するトップ下。準決勝スペイン戦は累積警告により出場停止。

#9 Soufiane Rahimi(ソフィアン・ラヒミ)

28歳 CF
4試合5ゴール
A代表20試合
アル・アイン(UAE)

日本のサッカーファンにとっては、ACL決勝2ndレグで横浜Fマリノス相手にDFラインの裏を攻略しつづけて大活躍したことが記憶に新しい。今大会はここまで全4試合で得点中であり、オーバーエイジで招集されたエースとして最高の仕事ぶりを見せている。

#10 Ilias Akhomach(イリアス・アホマシュ)

20歳 右WG
3(1)試合1ゴール
A代表3試合
ビジャレアル(スペイン)

筆者が推しつづけて5年、出会った時は15歳、今では20歳のオリンピアン。
右サイドからドリブルを主に相手守備陣を切り裂いていく。アルゼンチン戦では、カタールW杯王者のオタメンディ(ベンフィカ、ポルトガル)を翻弄して2得点に関与。

FCバルセロナ(スペイン)の育成組織ラ・マシア出身かつ、23年10月までスペインU21代表の一員だったため、準決勝スペイン戦は多くの元チームメイトと対戦する特別な一戦になる。

0:19~

#11 Zakaria El Ouahdi(ザカリア・エル・ウアディ)

22歳 左SB
4試合1アシスト
ヘンク(ベルギー)

オーバーエイジでハキミが加わったこともあり、本職の右SBとは逆サイドで出場中。左SBが本職でないとは思いもしないほどのパフォーマンスを見せており、ちゃんと調べてみて驚いている。

#12 Rachid Ghanimi(ラシッド・ガニミ)

23歳 GK
23年6月A代表招集
FUSラバト(モロッコ)

A代表招集歴もありながら、実はU-23代表では親善試合に1試合出場しただけ。今大会も含めて第2GKにはなかなか出番が来ないのが常であり、それでもチーム内で果たすべき役割がある。

#13 Yassine Kechta(ヤシン・ケシュタ)

22歳 MF
(4試合)
23年3月A代表招集
ル・アーブル(フランス)

タルガリンとはクラブも代表も年齢もポジションも一緒。MFの控え1番手として全試合に途中出場中。

#14 Oussama Targhalline(ウサマ・タルガリン)

22歳 DMF
4試合
24年6月A代表招集
ル・アーブル(フランス)

ボール保持時にDFラインへ降りて攻撃の起点となり、淡々とゲームメイクしている司令塔。ウクライナ戦でPK&退場を誘発した、3ラインの中央を貫通させてフィールドプレイヤー10人全員を無力化したグラウンダースルーパスは圧巻だった。

#15 Mehdi Maouhoub(メディ・モオーブ)

21歳 CF
(3試合)1ゴール
カサブランカ(モロッコ)→ディナモ・モスクワ(ロシア)

モロッコリーグで2年連続、シーズン後半に大活躍。昨季は19試合8得点(122分/点)。俊足のラヒミとは異なり、大柄(185cm)なフィジカルを活かすタイプのCF。

#16 Abde Ezzalzouli(アブデ・エザルズーリ)

22歳 WG
3(1)試合1ゴール1アシスト
A代表15試合
ベティス(スペイン)

一昨季にオサスナ(スペイン)でラリーガ7位、コパデルレイ準優勝の原動力となり、U-23AFCONでもモロッコを優勝に導いて得点王に輝いた。昨季はベティスで苦戦したものの、今大会ではウクライナ戦の後半から本職の左WGで起用されはじめて復活の気配あり。

イリアスとは22/23シーズンにバルサB(スペイン3部)でチームメイト。


#17 Oussama El Azzouzi(ウサマ・エル・アズージ)

23歳 CB
4試合
A代表5試合
ボローニャ(イタリア)

本職は守備的MFであり、ボール保持時のポジショニングやコンドゥクシオン(運ぶドリブル)では相手のプレスを恐れぬ大胆さを見せている。

#18 Amir Richardson(アミ・リシャードソン)

22歳 CMF
4試合1ゴール
A代表7試合
レンヌ(フランス)

ドラフト全体4位指名でNBA入りし、8年間プレーして4度オールスターに選ばれた元プロバスケットボール選手の父を持つ2世アスリート

サッカー界では超長身(197cm)である選手がMFをやっている時点で極めて異例だが、父親譲りの動きのしなやかさを見ればそれも納得。
長い手足を活かしたボール奪取やボールキープが上手く、イラク戦の先制点のようにゴール前へ飛び出してヘディングシュートも打てる。
一見の価値あり

監督 Tarik Sektioui(タリク・セクティウィ)

47歳
モロッコはカタールW杯に続いてパリ五輪でも直前の監督交代を敢行し、今年3月に就任。
モロッコのサッカーというとカタールW杯の守備的なスタイルが思い浮かぶかもしれないが、今大会ではタルガリンとエル・アズージを起点に強力な2列目へボールを届けていく、ボール保持を軸にした攻撃的なスタイルを構築している。
ウクライナ戦までは白のポロシャツを着用し1勝1敗3得点3失点、イラク戦からは紺のスーツ青のネクタイを締めて2勝7得点無失点。勝負服を身に纏い4連勝を目指す。

今後の展望

準決勝 vsスペイン

8/5(月) 日本時間25:00(現地時間18:00)~

ポゼッションサッカーの本家であるスペインに対して、モロッコは今までと同様にボール保持で真っ向勝負に挑むのか、それともスペインにボールを譲って前線3枚のスピードやドリブルを活かすカウンターを狙うのか。まずはこの戦術的判断に注目である。
ただ、モロッコの両翼右イリアス、左アブデは2人ともスペイン出身でラリーガのクラブに所属しており、特徴をよく知られている相手にも活躍できるだろうか。
モロッコはA代表出場歴のある選手を8人スタメン起用して質の高いサッカーを見せている反面、選手交代で勢いづけるのは難しいことが弱点である。スペインのような選手層の厚い相手には、なんとか90分で決着を付けたいところだ。

3位決定戦/決勝

vsエジプト or フランス
3位決定戦 8/8(木) 24:00(17:00)~
決勝     8/9(金) 25:00(18:00)~

エジプトと当たることになれば、昨夏のU-23AFCON決勝再戦となる。その時は延長戦の末に2-1でモロッコが勝ったとはいえ、オーバーエイジなどによりお互い選手が入れ替わっているので過去の対戦はあまり参考にならないだろう。

開催国フランスは優勝候補筆頭である。モロッコにもフランスのリーグ・アンでプレーしている選手が6人いるため、特徴をよく知っている同士の対戦となるだろう。メダルのかかった試合ではフランス国民だけでなく世界中のスポーツファンがチケットを持っているだろうが、これまでとは異なり観客の後押しを受けられないことも予想される。

オリンピックの男子サッカーが23歳以下の大会となった1992バルセロナ五輪以降、アフリカ勢ではガーナが銅メダル、カメルーンが金メダル、ナイジェリアが金・銀・銅を獲得している。モロッコもこの3か国に続くことができるだろうか。
そして、今大会のメンバーは将来A代表でアフリカサッカーの新たな歴史を作っていくはずだ。この大舞台での経験を得て成長していく姿に期待したい。

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