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【魚上氷】うおこおりをいずる『妄想のナツメカフェ』☘️立春/末候


カランコロン、カランコロン🎵
ナツメカフェ、朝一番のお客様。


「おはようさん」
「あっ、ハツさん、おはようございます。足元大丈夫やったですか?」
「やっと、うちから出られたわ。雪があると、私のマイカーはさっぱり役にたたんわ」


ハツさんは、シルバーカーを押してのご来店である。
推定年齢85歳、同じ町内にお住まいだ。


「ほんとに、今年はドカ雪やったから、なかなか溶けんかったもんねぇ。今お茶いれますね」


北陸のどか雪はこんな感じ


ハツさんは、いつもお茶菓子付きのお茶セット。
指定席は、カウンターの右端。
隅っこの方が落ち着くのだそうだ。
息子さんたち家族は関西方面に住んでいて、今は一人暮らしだ。


山中温泉で見かけた素敵なお店


カランコロン、カランコロン🎵
二組目のお客様。


「おはようさん、あらハツさん」
「あれぇ、ケイコさん一人かね?めずらしい」
「ううん、今日も一緒や。ちゃんとおるよ、おかかえ運転手さん」
「誰が運転手や」


ワンテンポ遅れてご主人のヤスオさんが入ってくる。
「ヤスさん、ありがとね。うちの前まで雪すかししてもろて」
ハツさんが頭を下げる。


「冬の間は体がなまるし、ちょうどええ筋トレやわ。またいつでも言うてや」
そう言いながらヤスオさんがカウンターの左端、ケイコさんが真ん中に座る。
いつもの定位置である。


「お二人は珈琲ですね」
ケイコさんとヤスオさんは隣町に住むご夫婦で、定年退職されたあと、今はハツさんの畑を半分借りて家庭菜園にはまっている。


「ハツさんは、わしらの先生やからな」
「先生やなんて、恥ずかしいわ」
「野菜のこと、どんだけ教えてもろたか、わからんよなぁ」
「ハツさんの野菜は、何であんなに美味しいんやろ」
ケイコさんが「ねぇ?」と私にふる。


そう、ナツメカフェの野菜は、ハツさんの畑のものがほとんど。
一番初めに頂いたブロッコリーに感動してからのお付き合いだ。


「ほんとに。しっかり野菜の味がしますよね」
自分の説明の下手さに顔がほてる。
「ほうれん草も、うまかったなぁ」
ヤスオさんの顔がゆるむ。


ハツさんの美味しい野菜に出会えたことがきっかけで、ランチに季節のお弁当を始めた。


地域の居場所作りを続けて行くことが私の夢♡

なぁんて、長々と「妄想のナツメカフェ」にお付き合いいただいたが、この話を書いている途中に502大学の市民講座を受けてきた。
タイトルは「産後うつに関して」


昔に比べて出産時に亡くなるリスクはぐっと減っているという安心できる話題から入った。
でも衝撃的な話を聞かされた。
産前産後に命をたつ人が増えていると。


で、ナツメカフェの話はさらに長くなった。

「あれまぁ、しばらく来ん間に、お庭のほう大変身したんやねぇ。テラス作ったの?」
ケイコさんが、立ち上がって庭の方を眺める。
「お店狭いんで、ちょっと広げました。あっちにもストーブあるんで暖かいですよ」


「あれも座ってみていいんか?」
ヤスオさんが、子供みたいな笑顔でハンモックを指差す。
「もちろんです。お客様に使っていただこうと思って準備したんですから、どうぞどうぞ」
めずらしそうにハンモックの回りを一周したあと、ヤスオさんの大きな体がハンモックの中で丸くなって揺れる。
「こりゃええわ」
「こわさないで下さいよ」
ケイコさんが首をすくめて笑う。
「今、ひざ掛けお持ちしますね」
ヤスオさんが目を閉じたまま返事をする。
「ありがと」

カランコロン、カランコロン🎵
そこに3組目のお客様。
ゆっくりとドアが開く。
赤ちゃんを抱っこしたママさん。


「いらっしゃいませ」
「あのぅ、赤ちゃん一緒だけど大丈夫ですか?」
「もちろんです」
「あらぁ、かわいらしい。女の子?」
ハツさんの顔がほころぶ。
「男の子です」
「へぇイケメンやねぇ。はい、ここどうぞ。おろしてあげたら」
ケイコさんが窓ぎわのソファーに案内する。
「こんなに近くで赤ちゃん見るの、何年ぶりやろ」
「ケイコさんとこのお孫さん、もう中学生でしたっけ?あっ、メニューどうぞ」


寝て手と足をバタバタさせている姿がなんとも癒される。
「赤ちゃんって、ずっと見てられるよねぇ」
カウンターに戻ったケイコさん、でも目は赤ちゃんに釘付けである。


「はい、お待たせしました。ミルクティーどうぞ」
赤ちゃんがぐずりだす。
「来る前にミルク飲ませたんだけど、どうしよう。うるさくてすみません」
「赤ちゃんは泣くのが仕事。あぁ、この泣きかたはおねむだねぇ」
ハツさんが自信満々に答える。「私もそう思う」
ケイコさんもうなずいて立ち上がる。
「ねぇ、ちょっと抱っこさせてもらっていい?」

「いいんですか?」
「もちろんよ。ママはゆっくりティタイムしたらええよ」
ケイコさんが慣れた手付きで赤ちゃんを抱っこして、ハツさんに顔を見せに行く。
「ほんとや、ハンサムさんや」
ハツさんが、赤ちゃんのほっぺにそっとさわってつぶやく。
「赤ちゃんのあまい懐かしいにおいやなぁ」


ケイコさんの腕の中で赤ちゃんがうとうとし始める。
「おっ!めずらしいな。カワイコちゃんがおる」
ヤスオさんの声に赤ちゃんがビクッとする。
「もう大きい声出さんといて。あっ、そうや。あとで、あそこでひと眠りしたらいいんじゃない」
ケイコさんがハンモックを指さす。
「えっ、でも」
ママが申し訳なさそうな顔をする。
「ママの方も寝不足なんじゃない?遠慮なんかいらんよ」



私たちの年代だけではなく、若いママさんたちも気軽に立ち寄れるカフェがあったらいいな。
みんな、それぞれに自分のできることをする。
赤ちゃんの笑顔だって誰かの幸せになって、お節介と幸せがつながってグルグルと輪っかのようになって行く。


妄想だけで、ちっとも実現していないが、少しでもリアルに思い描いた方が夢は実現しやすいとか。


いつもの倍ほどの長さになりましたが、
「妄想ナツメカフェ、ご来店ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております☘️」








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