あの夏のスイカ|人生の午後のある日
「大きくできたよ」
母からのLINEに、
立派なスイカの写真

父が育てていた畑を、
今年は母がひとりで耕した。
そのことを、
多くは語らない人だからこそ、
一行のメッセージが沁みる。
「おいしいうちに届けるね」
ほどなくして、
玄関にすいかが届いた。
包丁を入れると、
みずみずしい赤がひらく。
一口食べて、
甘さがひろがったとたん、
となりで「うんめなー」と笑う父の姿が、
ふいによみがえった。
その声があまりにも近くて、
時間の境い目がほどけていった。
母が運んできたすいかに、
父と過ごした夏が、静かに重なった。
夏の記憶を引き連れて、
身体の奥から力がみなぎる味がした。
涙のしょっぱさだけが、新しかった。

※のぞみん企画!「教えて!あなたの夏の思い出」に参加しています。
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