挫折から再出発するパティシエ奮闘ものがたり。人の心をつかむ物づくりの秘訣とは?『ベイク・ベイク・ベイク(1)』感想
あなたは普段、なにか創作活動をしている人だろうか? 合っていたらもう1つ質問したい。楽しかったはずの活動が、最近苦しくなっていないだろうか?
ここで少し立ち止まって、むくわれないと感じるようになったきっかけを思い返してみてほしい。それは「望んでいた反応を作品にもらえなかったから」ではないか。
『ベイク・ベイク・ベイク』の主人公・トロも、あなたと同じように作った物をないがしろにされた過去がある。今回は彼が、物づくりをする中で大切な気付きを得ていく物語を紹介しよう。
焼き菓子が好きで。念願の自分の店を持つようになったトロ。しかし、180cm越えの身長と怖い顔のせいで客が寄り付かないまま、閉店の危機を迎えてしまう。
ここで多くのクッキング漫画なら、キャラクターが起死回生の一手を打つだろう。だが、トロは最初から諦めて近所の子供にタダで商品を渡そうとする。
なぜ、彼はあらがわないのか? これは精神が、過去に同級生や家族から受けた仕打ちに囚われてしまっているからではないかと思う。
考えてみてほしい。あなたが頑張って作品を完成させた時、バカにする人や勝手に捨てる人がいたら、どう感じるだろう? 否定による傷をトロはずっと抱えてきたのだ。
では、傷ついた心を救ってくれるものは何か? 本作では、ヒロインのみくるがその答えを教えてくれる。たったひとりでも、自分が作った物をおいしいと言ってくれる人。それが、どれほど作り手にしみ入るかが印象的に描かれている。
また、みくるに頼まれて潰れかけのカフェを救おうとする展開にも、物づくりにおいて大切な気付きが含まれている。受け取る人を想いながら作ることで、完成品が相手の心に届くようになるのだ。これはクリエイターが一皮むけるための秘訣ではないだろうか?
カフェの再開は簡単にはいかない。それでも好きな焼き菓子づくりに胸を熱くするトロの姿は、あなたに忘れかけていた創作の楽しさを思い出させてくれるかもしれない。
試し読みはこちらから
著者:吉近 イチ / 出版社:集英社
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いつもありがとうございます。作家さんに対するリスペクトを忘れずに、好みに合う作品を探している人の役に立てるように、これからも頑張ります。