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【CF挑戦中!】デッドエンド。 —メスガキ無双冒険譚— 第56話:撃ち抜いて

 イヴァがコンテナから飛び出して爆発で攻撃する。しかしアンドロイドはイヴァに急接近してそれを回避すると、接近の勢いのまま蹴りかかる。鞄でガードしようとするイヴァだったが、その刹那、鈍い金属音。鞄を握るイヴァの左腕にはいつの間にか鎖が巻き付き、ガードできずに蹴りがみぞおちに食い込む。
「がはっ」と血を吐き出した直後、イヴァは吹き飛ばされて壁に激突した。

「ぐ……生成能力だ! 足を止めるな!」

「はいっ……!」

 レーザービームでイヴァにトドメを刺そうと掌を向けるアンドロイド。ひかりは拳銃に電気エネルギーを込めたレールガンで横からその腕を撃ち抜く。逸らされた掌から明後日の方向にレーザーが放たれ、その隙をついてイヴァが急接近し鞄を振りかぶった。さっきの戦いで使った、パイルバンカーだ。
 左手に巻き付いていた鎖は水蒸気の爆発で砕いたのだろう。水を被ったように濡れている。一瞬で立て直し、アンドロイドの意識が銃弾に逸れるだろう完璧なタイミングで隙をつく。流石にクラスⅠは格が違うと、そんなことを一瞬考えて。しかしその幻想は一瞬で打ち砕かれた。

「なっ……!?」

 アンドロイドの眼前に現れた分厚い金属製の壁が、放たれたパイルバンカーを完璧に防いだ。そしてそのまま、パイルバンカーを振り抜いて隙を晒すイヴァの頭上に巨大な金属の塊を生成する。
 ──潰される。瞬時にそう判断したひかりは身体能力を強化し、全速力でイヴァを抱えて回避した。ちょうど、最初のレーザー攻撃から助けてもらったのと同じように。
 すかさずアンドロイドの周囲に無数の機関銃が現れ、こちらに掃射される。ひかりはバリアを張って銃弾を防ぎながらコンテナの影に隠れるが、ガリガリと削り取られるような着弾音からしてそう長くは持たないだろう。

「はぁっ、化け物……!」

 クラスゼロの強さを思い知らされるばかりだった。能力で生み出したただの傀儡が、クラスⅠとⅡの二人を相手に優位に立つばかりか圧倒している。
 勝てるのかと不安がよぎるが、イヴァの顔を見て、戦意を奮い立たせる。
「全てに決着をつけたい」。そのイヴァの願いを叶えたい。だから、こんな奴相手に苦戦している暇はない。

「……イヴァさん。私が隙を作ります。一気に畳みかけますよ」

「よし……任せたよ!」

 エネルギーを拳銃に集中させる。ひかりの周囲、特に拳銃を持つ右手の周りの空気から黄色い電流がバチバチとスパークし、強烈なエネルギーに僅かに空気が歪む。
 大きな音がして、とうとう機関銃がコンテナの一部を貫通し始めたようだ。完全に貫通してからの、一瞬が勝負。ひかりはその一瞬に全てを懸けて、確実に命中させられるよう、両手で拳銃を構えた。

「ハハハハハ……ッ! 惨めだな、俺を裏切った報いだ。その仲間(カス)と一緒に、何もかも奪われて死んじまえェッ!」

 銃弾の嵐の中、アンドロイドの声が響く。
 その瞬間、ひかりの中で何かが切れた音がした。

 刹那、雷鳴。周囲にスパークする稲妻はその勢いと力を増し、足元の床を抉り取る。感情が爆発しているようで意識はクリアで、全てがスローモーションのように見えた。
 そして弾丸の嵐がとうとうコンテナを完全に破壊し、穴が開く。遮蔽物はもはやなく、無数の弾丸がひかりたちに襲い掛かる。
 しかし、それらがひかりたちを貫くことはなかった。ひかりが展開したオーロラ状のバリアがそれら全てを完璧に防ぎ切ったのだ。
 弾丸の嵐が止んだ時アンドロイドが目にしたのは、輝くオーロラの中で、紫電する拳銃を構える青髪の少女。さながらそれは、まばゆい光を放つ魔法のトーチカだった。

「イヴァさん……あのふざけた奴を、ぶちのめしに行きますよっ!」

 引き金を引く。アンドロイドは自身とひかりの間に十枚にも及ぶ壁を展開。硬さで弾き、柔らかさで勢いを殺し、熱で焼き切る。様々な目的で作られたのだろうその壁の数々。ひかりの拳銃から放たれたフルパワーのレールガンはそのことごとくを貫き、粉砕し、アンドロイドの体をも貫いた。

 遅れて強烈な轟音が響き渡る。
 ひかりが目にしたのは、右肩口から先を吹き飛ばされ、隻腕になりながらも反撃を試みるアンドロイド。
 アンドロイドが目にしたのは、真正面から突っ込むひかりの姿。
 だからだろう。アンドロイドはひかりに向かって左手を伸ばし、そして、爆音と共に突如死角から現れたイヴァに殴られ、吹き飛ばされた。

「ありがとう、ひかり……! さぁアルケー、お前の負けだ!」

 水蒸気によるジェット噴射。壁を蹴り、走り、天井から急降下し、床から天井に飛翔する。そしてその勢いのまま、すれ違いざまにアンドロイドを殴り、蹴る。目にもとまらぬ猛攻に、アンドロイドはひかりに撃ち抜かれた右肩口から電気が漏れ出し、体表を抉り取られ、吹き飛ばされる。
 ガタガタと手を震わせながら自身を囲むようにキューブ上の壁を展開するアンドロイド。

「ひかり! トドメ行くよっ!」

「はいっ!」

 イヴァが鞄を強く握ると、黒い鞄は機械音と蒸気を立てながらその様相を変える。そしてイヴァが思い切り鞄を振り下ろすと、爆音と共に発射されたパイルバンカーが、分厚いキューブをぶち抜いた。
 残ったエネルギー全てでもう一度レールガンを放つ。威力は少し落ちたが、壁に守られていないアンドロイドの左肘から先を完全に破壊し、もはやアンドロイドに手はない。

「イヴァ……! 命も尊厳も、奪われるのがお前の運命なんだよォッ!」

 しかしアンドロイドは口を思い切り開くと、その中から銃身をあらわにした。ひかりにエネルギーは残されていない。

「イヴァさんっ!」

「それでも。僕は……ッ!」

 最後の爆音。同時に銃声。銃弾が頬をかすめながらも、イヴァは吹っ飛ぶように死角に回り込んで。そして、左拳を力強く振り抜いた。
 鈍い金属音と共にアンドロイドのこめかみから内部まで拳が貫き、そして、アンドロイドは沈黙した。「バッドアップルに来い。直接殺してやる」。そう言い残して。

「……イヴァさん。バットアップルって」

「西部合衆国最大、いや世界最大の先進都市だね……そんな都会にいてなお、目撃情報がなかったとは。合衆国政府もアルケーの傀儡だね」

 ため息を吐くイヴァの姿が、とても悲し気に見えて。ひかりは声をかけようとしたが、やめた。それは旅の仲間が揃った時に言いたかったから。
 あなたに限って何かあるとは思いませんけど、無事でいてくださいよ。さだめ。
 そう願って、ひかりはイヴァと共に、再びバベルチップへ戻っていくのだった。


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デッドエンド。|稲荷文庫|note

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