小説:冷徹メガネと天職探しの旅 第4話 家族
第4話 家族
「チョコミントアイスしかないの?」
「奥探せば他のもあるんじゃない」
母の適当な返事を背に僕は冷凍庫を探った。
実家から2駅のところで一人暮らしをしているので土日はタダ飯を食べるために実家へ帰っている。冷凍庫には大量のアイスがギチギチに詰められている。全てチョコミント味だ。姉の灯里アカリ が買ってきてストックしたものだ。僕は姉の異常なチョコミント愛のせいで逆に嫌いになった。僕はアイスを食べるのは諦めてカントリーマームを5つ取り出して食べ始めた。
「チョコミント食べてもいいのに」
姉の灯里がチョコミントアイスを食べながら僕の隣に座った。
「チョコミントはいいや」
「変なやつ」
あなたの方が変なやつだろと思いながら僕は2つ目のカントリーマームに手を付けた。姉はチョコミントをペロペロ食べなならスマホをイジっている。家ではチョコミントを食べていつもゴロゴロしているが会社ではwebマーケターとしてバリバリ働いており、かなりの給与も貰っているらしい。
「最近仕事はどーなの?」
「良くも悪くもないよ。若干悪い」
「早く転職しなーユウにその仕事合ってないんじゃないの?給与も低いし」
「うるさいな、そんな簡単にできないよ」
「ふーん」
焼肉でも食べに行こ!ぐらいの軽いノリで転職は勧めてくる姉を見てなんだか羨ましくなった。
「私にもちょーだい」
姉は僕のカントリーマアムを2個取ってムシャムシャと食べた。甘いものばかり食べているが何故か体は細く、弟の自分でも悔しいが美人だと思う。
「カントリーマアムもチョコミント味出さないかな〜」
絶対出して欲しくないと僕は強く思った。
「今彼女は?」
「いないよ」
「だから実家にいるのね〜」
姉は笑いながら僕の背中を叩いた。
「姉ちゃんだって実家にいるだろ」
「これは親孝行よ。可愛い娘の顔を親に見せなくちゃね」
30歳を超えているのに何が可愛い娘なんだと疑問に思ったが口には出さなかった。姉は美人なのにまだ結婚の予兆が無い。自由に生きるのが好きなので、誰かと一緒に暮らす結婚生活には興味が無いのかもしれない。
「何か困ったことがあったらお姉ちゃんに言いな。アドバイスあげる」
「いらないよ」
「人生の先輩のアドバイスは大切。それに紹介してあげるかもよ〜」
「紹介!?」
姉の知人は美人が多い。僕は鼓動が早くなるのを感じた。一方で顔も仕事もパッとしない自分がそんな美人を紹介されても上手くいくイメージがつかず、勝手にテンションが上がったり下がったりした。
「どんな人がタイプなの?」
「えっ」
急な質問に僕はドギマギしてしまい思考がまとまらない。
「時間切れ〜」
姉はニヤニヤしながらリビングへ移動して、ソファにダイビングをした。ソファに横たわりなら謎の運動開始した。
「食後の運動〜」
足を開いたり閉じたりしている姉を見て少しでも期待をした自分を恨んだ。その反面悩みが無さそうな姉が羨ましいと感じた。僕は正直仕事もあまり上手くいっていない。上司との関係も良くない。プライベートでも趣味があるわけでも無く、彼女もいない。羅列していくと落ち込んでくる。楽しくイキイキと仕事をして、彼女もいるような生活は遥か遠くだ。もしかしたらそのような生活をしている人はサンタクロースのように存在せず、メディアやSNSが作りだした幻想なのかもしれない。特にかっこいいわけでも無く、誇れる強みが無い自分には間違いなく無縁の世界だ。
「また難しい顔して〜」
姉は広げた足から顔を覗かせてこちらを見ている。腹筋に力をいれているのか少しプルプルしている。同じ親から産まれたのに、どうしてこんなに顔と性格が違うのか不思議に思った。
