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冷徹メガネと天職探しの旅 第27話 アメリカ


第27話 アメリカ

新宿は相変わらず人が多い。夏の流れるプールぐらい混んでいる。流れを読んで移動しないと目的地につかない。やっとのことで約束の喫茶店に到着をした。天神さんは奥の席で座って紅茶を飲んでいた。
「お待たせしました」
「私も今来たところです」
天神さんは紅茶をしたに置いた。メガネが少し曇っていた。
「最終面接まで残り1週間程度でしょうか」
「そうです」
天神さんの改まった質問に少し緊張をした。
「逆質問について何か考えていますか?」
「逆質問?」
予想をしない質問に僕はドギマギした。店員さんが注文を取りに来たのでコーヒーを頼んだ。
「面接の後に聞かれる何か質問はありますか?です」
「そういえば必ず聞かれましたね」
面接担当が締めの前に必ず聞いてきたのを思い出した。
「逆質問への答えは採用を決定づけることがあります」
「そんなに重要なパートなんですか?」
最後の決まりきったフレーズ、グリコのオマケレベルだと思っていたので驚いた。
「逆質問では応募者の志望度の高さと価値観を計っています。答えるのは何とでも言えますが能動的な質問にこそ隠せない志望度と価値観が現れます」
「志望度の高さと価値観ですか?」
店員さんがコーヒーを運んできた。僕は話の続きが気になりコーヒーには手をつけなかった。
「面接時に自己PRをした後に面接官から質問が無かったらどう思いますか?」
「それは自分に興味が無いと思いますね。だって自己PRと履歴書、職務経歴書だけだったら全然わからないでしょ」
天神さんが紅茶を飲む。
「逆質問も一緒です。質問をしなければ会社側はこちらに興味が無いと考えます。そして逆質問は能動的な行為になり自由度が高いので応募者が本当に知りたい質問となり価値観が明確になります」
天神さんの難しい言葉に戸惑いつつも僕は手帳をカバンから取出しメモをした。
「どんな逆質問をすればいいんですか?」
「最終面接では会社の魅力と学ぶべきことを聞いてください」
「会社の魅力に関しては一次面接や会社HPにたくさん書いてありますけど…」
「役員が感じている魅力を聞いて下さい。面接で受かるパターンがあります。それは何かわかりますか?」
「受け答えがしっかりできたとなですかね」
「面接官の話す時間が長ければ長いほど採用の可能性が高いです」
天神さんは紅茶を口に運ぶ。
「どういうことですか?」
「面接官が長く話すということは、見極めではなくてアピールに入っているということです。そして面接官も人間です。好印象を持った人材を採用したいと思います」
「長く話すことと好印象はどう関係あるんですか?」
僕はノートに書くのを止めて聞いた。
「自分の話を聞いてくれる人と自分のことばかりを話している人でしたらどちらが好かれますか?」
「それは前者です」
僕はハッとして、天神さんの目を見た。
「面接でも同じです。面接官が話す時間が長いほうが好感度は上がります」
「具体的にはどんな質問をすればいいんですか?」
「具体的な質問方法は会社が難しい局面をどのように乗り越えたか、プロになるには、魅力の3つになります」
僕はノートに急いで書き写した。天神さんは僕の手が止まるのを待っていた。
「会社の難しい局面、例えば震災やコロナなどの外部要因による難しさが良いでしょう。これはどの会社にも当てはまり、武勇伝となります」
武勇伝と聞いてオリエンタルラジオが頭に浮かんだ。
「2つ目は役員の経験領域にもよりますが、大抵が自分自身が目指す職種を経験している可能性が高いです。そこでどうすればプロになれるのか?成果を上げれるか聞いて下さい」
「なるほど…」
「例えば成功者と食事をしてその秘訣を聞く機会はありますか?」
「成功者の知り合いなんていませんし、そんな機会ありません。実際に話しきけるならワクワクします」
天神さんはゆっくりと紅茶を飲んだ。
「この質問はまさに成功者の話を間近で聞くチャンスとなります。面接を成功させるための質問ですが、自分自身の為にもなります」
その話を聞いて絶対その質問をしようと思った。最終面接は緊張で受けるのが憂鬱な気分だったが今は逆に楽しみになっていた。
「そう考えると最終面接も何だか楽しくなってきました」
ウキウキとして答える僕とは裏腹に天神さんは少し浮かない顔をしていた。
「最終面接に関して不明点や心配なことはありませんか?」
僕は左上に視線をやり考えるが特に思い浮かぶことは無かった。
「大丈夫だと思います」
天神さんはナプキンで口を拭う。
「これから1ヶ月間会うことはできません。Zoomでの対応も難しいです」
「えっ!どういうことですか?まだ内定出てないですよ」
僕は混乱をして少し大きい声を出してしまった。
「3ヶ月ほどアメリカに行きます」
「アメリカ!?」
急な話題に僕は混乱した。
「アメリカでの就職に挑戦する転職者を支援する会社を起業します。その足がかりとして一度アメリカに渡ります」
スケールの大きさに圧倒された。
「Zoomも時間帯が合わないので難しいですよね」
「ラインでの対応は可能です」
アメリカでバリバリと働く無表情で働く天神さんが想像できた。
「大切な時期に直接のサポートが出来ず申し訳ない」
天神さんは頭を下げた。僕は天神さんが頭を下げるなんて夢にも思わなかった。
「大丈夫です!最終面接のコツも教わりましたし、あとは自分がやるだけです」
僕は胸に拳をあててニッコリ笑った。
天神さんは頭を上げた。
「それにしてもアメリカで起業なんてスケールが大きすぎますよ」
天神さんは少し口角を上げて微笑んだ。
天神さんとカフェで別れた僕は新宿東駅に向かった。最終面接に向けて天神さんがいないのは何だか大きな後ろ盾を無くしたようでやはり少し心許無かった。僕はポケットに手を入れ新宿の人混みを歩いた。トイレに寄って鏡の前で僕は息を大きく吐いた。この後T子と会う予定を立てていたので気分を一新したかった。鏡の前で笑顔を作った。ぎこちないがしょうがない。時計を見ると待ち合わせの時間まで5分をきっていた僕は慌ててトイレから出て待ち合わせ場所に向かった。





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