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冷徹メガネと天職探しの旅 第36話 面接

第36話 面接
面接は会社説明から始まった。
「会社説明はフェアの時もさせて頂きましたが、二ヶ月も前のことなのでもう一度させて頂ければと思います」
御輿さんは丁寧に会社について資料を用いて説明をしてくれた。介護関係のレンタル商品をサービス展開している企業で創立したから20年が経っている。
「今回募集しているのは営業職となります」
僕は静かにうなずいた。いつかのタイミングで人事に興味があることも言わなければならない。
「これで会社説明は終了となります。不明点もあるかと思いますが面接の一番最後にまとめてご質問を受けます」
「ありがとうございます」
僕は会社説明の冊子を閉じた。
「それでは履歴書を元にご質問を行っていきます」
御輿さんは茶色いバインダーをながめながら言った。
「よろしくお願いします」
「本日はご自宅からどれぐらいかかりましたか」
午前の9時に出て10時前には会社前に到着していたことを思い出す。
「1時間程度です」
「通勤時間に特に問題はありませんか?」
「現在の会社も1時間程度かかっていますので特に問題はないかと思います」
「わかりました」
「それでは学歴と職歴に関して質問させて頂きます」
御輿さんはバインダーの紙に何か書きながら言った。
「中学や高校時代に何か部活はやっていましたか」
「陸上をやっていました」
「そうなんですね!短距離と長距離どちらですか?」
「1200mという中距離をやっていました」
「今でも走っているのですか」
「朝時間がある時は走っています。頭がスッキリするので」
「体力もつくし精神的にも良いですよね」
御輿さんはにこやかに言った。
「大学はなぜ経済学部を選ばれたのですか」
「正直に言うと。何か強い思いが在ったわけではなく。漠然と経済のことを学びたいと思いその学部に決めました」
「ありがとうございます。大学時代のサークル、ゼミ、アルバイトについて教えてください」
「サークルはバスケットボールをやっていました」
「陸上関係ではないんですね」
「友達に誘われて、バスケットサークルに入りました。でも球技はあまり合わなくて最後まで上達はしませんでした」
僕は笑いながら伝えた。
「ゼミやアルバイトはどうですか」
「ゼミは地域経済の活性化について学びました。フィールドワークを行い現地で実際に商店街などの取材をして知識を深めました。アルバイトは居酒屋で3年間働いていました」
「就職活動の時は何を軸にしながら会社を探していましたか」
僕は記憶が朧気になっている大学時代の就職活動を思い出していた。リクルートスーツに身を包んだ緊張した顔の自分が頭に浮かんだ。
「就職活動の軸はお客様との関りがある職種で、喜んでいただける商品、特にIT関連を取り扱いたいと思いました」
「なぜお客様との関りがある職種を目指そうとしたのですか」
大学生時代の居酒屋アルバイトでのお客様との接客が思い出だされた。
「大学時代の居酒屋アルバイトの影響です。お客様とコミュニケーションを取りながら仕事をするのが楽しくて、向いているかと判断したからです」
「なるほど」
御輿さんはゆっくり頷きながらメモを取っていた。
「なぜIT関連を取り扱いたいと思ったのですか」
「これも居酒屋アルバイトでの経験が元です」
話していると何だか大学時代はアルバイトしかしていなかった気持ちになってくる。実際大学の授業の記憶は殆どなく、アルバイトの記憶で埋められている。
「居酒屋で働いているとき、最初は直接お客様に注文を聞きにいっていたのですが、メンバーもそれほど多くない居酒屋だったので忙しい時間帯は本当に大変でした。ある時期から店長がタブレッドでの電子注文を導入しました。最初はお客様もタブレッドでの注文に困惑されて何度も説明に行く場面があり、導入して逆に仕事が増えたのではないかと感じることもありました。しかしお客様も慣れてくると質問も少なくなり注文を取りに行く必要はなくなり仕事がかなり楽になりました。お客様と話す機会が減り残念な気持ちはありましたが、それ以上に業務が効率化されたことに感動を覚えITの世界で働きたいと思いました」
「なるほど。ご自身の原体験が元になっているのですね。IT企業は沢山あると思うのですがその中でもなぜ現職を選ばれたのですか?」
「IT業界を調べていると今後はAIが伸びていくということがわかりました。そこでITの中でもAI業界に絞り、今取り扱っている商品が会社の電話受付をAIで対応するという商品です。業界や仕組みは違いますが居酒屋でのタブレット注文と本質的には似ておりお客様の業務効率化、仕事の軽減をサポートできると思い入社しました」
ここまでの話は天神さんと何度も話し合い決めた内容だ。実際に面接でも何度も話している内容なのでスラスラと言葉が出てきた。まるで何度も練習をしたセールストークのようだ。御輿さんは大きく頷きながら話を聞いてくれている。
「今はどんな仕事をしているか具体的に教えてください」
「BtoBの営業となります。新規50%、既存顧客50%となります。中小企業の社長様や事務職の方が顧客となります」
「なるほど。新規顧客はどのように取りに行っているのですか」
「電話でのアポイントがほとんどです。リストを上から順に電話をしていきます。AIを取り扱う会社なのに少し原始的です」
僕は笑いながら言った。御輿さんも微笑んでいた。
「荒田さんが仕事で工夫をして上手くいった点を教えてください」
「はい」
どのエピソードを持っていくか少し考えた。
「まずはターゲットリストの選定から行いました。やみくもに連絡するよりも新規の技術に興味がある方を中心にターゲットとして選出しました。またこちらからのアポイント電話だけではなくWEB上でのSEO対策、AIセミナーの実施により質の高いリードを取れるような施策を提案し実施しました」
これも天神さんと振り返りをして出たエピソードだった。売り上げを上げるために必死にやり、様々な失敗を繰り返して成功した数少ない話を研ぎ澄まして作った。
「荒田さんは企画をするのが得意な人なんですかね」
御輿さんは自問自答するように、少し考えこむ顔をした。
もしかして何か間違った方向性の答えをしてしまったのかも知れない。
急に緊張度が増してきて、心臓がドキドキと鼓動するのを感じた。


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