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小説:冷徹メガネと天職探しの旅 第22話 面接対策

第22話 面接対策
「面接日はいつですか?」
画面越しに天神さんが聞いてくる。画面越しでも冷静さは変わらない。
「複数日提示されていますので、面接対策をして来週ぐらいから受けていこうかと思います」
今日は火曜日なので短いが1週間程度あれば準備ができそうな気がする。
「今週中に全て面接を受けて下さい」
天神さんは表情を変えずに言った。
「今週中ですか?!まだ準備もできていませんし、4社もあるんですよ」
「準備は履歴書と職務経歴書作成時にほぼ完成しています。4社あるなら1日に複数社受けて下さい」
無理を言う人だと改めて感じた。
「枠が複数個あると思わないで下さい。他にも候補者がいます。同じレベルの場合は面接が早く進んだ人が採用されます」
他の候補者がいる。その響きが僕をドギマギさせた。
「わかりました。今週中に受けます」
僕は渋々了承をした。
「それでは面接調整ができたらまた電話を繋いで下さい」
「今からですか?」
天神さんはすでにLINE通話を切っていた。何もかも急で強引な人だ。僕が優柔不断で遅すぎるのかもしれないが。手帳を取り出して仕事のスケジュールを確認する。企業から送られてきた日程を見ながらパズルを組み立てるように面接を調整した。
30分程度で4社の面接調整が終わった。やればできるもので木曜日の午後に2社、金曜日の午前に2社とした。半休を取ることで対応ができそうだ。天神さんからZoomのURLが送られておりPCを立ち上げてアクセスをした。
「面接調整は終わりましたか」
「無事終わりました。うまく組むことができました」
天神さんの画面背景は海外風のオフィスになっている。
「さっそく面接対策を初めていきたいと思います。面接対策で重要なのは大まかな流れを知ることと面接官がどんな目的を持って質問をしてくるか知ることです」
「大まかな流れと目的」
僕はノートにメモをした。
「まずは大まかな面接の流れをお伝えします。最初に挨拶とアイスブレイク、履歴書に沿って入社理由、仕事内容、退職理由を聞かれます」
やはり履歴書が元になって話が進んで行くようだ。
「そして最後は志望動機と事務事項を聞かれて終わりです」
「事務事項とはどのようなことでしょうか」
「健康問題、入社可能日、通勤、今後の流れ等です」
「事務事項に関してはそのまま答えればいいので特に難しく考える必要はありません」
僕は少しホッとした。
「面接の最初に簡単な自己紹介や自己PRを求められることがあるので、これは準備しておいてください」
自己PRは一番苦手だ。僕は急に気分が暗くなった。
「自己PRは何を話せば良いんでしょうか。苦手意識があって」
「氏名を言った後に簡単な経歴と長所、志望理由を伝えて最後によろしくお願いしますで締めます」
天神さんは朝ご飯の目玉焼きの作り方を説明するような簡潔さで教えてくれた。自分が自己PRを言っている場面を想像して緊張をしてきてしまった。
「それでは面接のポイントについて説明します」
「その前に聞いてもよろしいでしょうか」
「何でしょうか」
「面接で緊張してしまいそうなんですが、対策はありますか」
天神さんのように優れた能力や自信がある人にはわからないかもしれないが、僕みたいな凡人には緊張が大きな壁となる。
「荒田さんはお客様に商品説明をする時に緊張をしますか?」
予想外の質問が来たので少しうろたえてしまった。
「商品説明をする時には今はそれほど緊張はしません。何度もやっていることですし・・・そうか面接も何度も練習すれば緊張をしなくなるのか」
僕は1人で納得してしまった。
「違います」
天神さんは表情も変えずに言った。
「何度も言って慣れたこともあると思いますが、一番はベクトルが自分ではなく相手に向いていることです」
「ベクトルですか?」
「緊張をするのは失敗をしたらどう思われるか気になるからです。商品説明の時に自分がどう思われるかよりお客様が購入して頂けるかを考えるでしょう」
確かにその通りだ。お客様の反応を考えながら話しているから自分がどう思われるか、傷つくなんてことは考え無い。
「面接でも一緒です。自分がどう思われるかより、面接官に意識を集中して話せば緊張はしません。また練習をやりすぎると不意に想定外の質問が来た時にフリーズしてしまうのであまりガチガチに練習して固めるのは辞めましょう」
僕はノートに相手に意識を向ける、ガチガチに固めないと書き込んだ。
「緊張しない方法わかりました。ガチガチに固めないのなら面接対策はどうすれば良いのですか」
「話は戻ります。面接官が知りたいのは2つだけ。この会社で活躍してくれるか?長く勤めてくれるか?だけです」
えらくシンプルな答えだと思ったが特に何も言わなかった。
「どの質問の裏には2つの意図どちらかが含まれています」
「どの質問の裏にもですか?例えば通勤時間はどうですか」
通勤時間はベーシックな質問だ。深い意図などあるのだろうか。
「通勤時間は長期的に通えるかどうか確認するための質問です。これは長く勤めてくれるか?パターンの質問です」
天神さんはシルバーのコップに注がれた飲み物を飲む。
「それではこれから模擬面接を行います。志望度が1番高いY社を想定します」
僕は急いでY社の求人表とHPをまとめた箇所をノートで探す。
「それではいきます。まずは簡単な自己PRをお願いします」
突然始まった模擬面接、僕は姿勢を正して画面に向かい真剣に語りかけた。

天神さんとの模擬面接は1時間程度行った。ベーシックな質問と受答えの後には答え合わせを前半。質問者の意図を天神さんは丁寧に説明をしてくれた。後半は違う企業を想定した問答を実施した。質問者の意図がわかった状態なので答えやすかった。気がついたら時間が過ぎていた。
「これで面接対策は終わります。何か質問はありますか?」
「1次面接と最終面接の違いを教えて下さい」
「まずは1次面接に集中して下さい」
天神さんの視線が厳しかった。模擬面接で手応えを得て気が大きくなっている自分を見透かされたようだ。
「すいません」
「模擬面接で問題はありません。このままの調子で行ってください」
天神さんの褒め言葉に僕は瞬きの数が増えてしまった。
「ありがとうございます」
「それでは」
天神さんはすぐにZoomを切って離脱していった。部屋の温度が上がっているように感じた。

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