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冷徹メガネと天職探しの旅 第33話 紹介

第33話 紹介
「本日もお時間頂きありがとうございました」
「こちらこそありがとう。わざわざ足を運んでくれて。おかげで疑問が解決したよ」
社長はグレーヘアーを撫でながら言った。髪形も服装も時計も全てが整っており、調和をしている。穏やかな性格も魅力的な人物だ。半年前に導入をして頂き、自分の方からフォローの連絡を入れたところ丁度、操作で不明な点があったということで訪問をした。
「ところで荒田君」
「はい」
「実は社長仲間でAIの電話受付システムの話をしたら興味を持ったのが何人か居てね。話をして貰いたいんだが」
「ありがとうございます」
社長は机に3枚の名刺を並べた。どれも代表取締役の名刺だった。
「この名刺の人間が導入に前向きだよ。私の名前を言ってもらえるとすぐ繋がるだろう」
「すぐにご連絡させて頂きます」
「そうしてもらえると助かる」
社長は爽やかに言った。
僕はビルから出るとすぐに貰った名刺の電話番号に連絡をしてそれぞれにアポイントを取った。そしてアポイントを取ったことを社長に伝えた。不思議なことに同じように紹介案件が増えてきていた。確かに商談時に軽くご紹介の依頼はしていたがそこまで本気でプッシュしたわけでない。しかし心地よく新しいお客様を紹介して頂けるお客様が少しずつ増えていた。やはり社長の繋がりは社長なのだろう。全ての紹介案件が成約に繋がることは無かったが半数は契約へと繋がっていた。気が付くと売り上げは目標数値を上回っていた。
社内でお客様への提案資料を作っていると横に同期の佐藤が座って来た。
「最近売上げいいみたいだな」
他人の売り上げを良く把握している奴だ。
「運が良かったんだよ」
「ふ~ん」
僕はそれ以上話は続けずに提案資料の作成に集中をした。
グレーヘアーの社長に紹介頂いた社長の1人とアポイントのために会社へ向かった。小田急線の世田谷代田駅で降りて歩いて5分の場所に事務所はあった。アウトドア商品の輸入をしている会社で30年以上の続いている会社だ。僕はエレベーターで事務所のある4階に向かう。中に入るとビル外見とは違い、茶色とグリーンを基調とした洗練された受付に電話と新商品と思わしきアウトドア商品と受賞歴の額が飾ってあった。僕は受付電話で社長とのアポイントの件を伝えた。少しすると中から背の高いオフィスカジュアルを着た女性が迎えに出てきた。女性は笑顔で僕を迎えてくれた。
「お待たせしました」
「よろしくお願いします」
僕は女性について行きオフィス内に入った。オフィスは木目を中心としたナチュラルテイストのデザインで心を落ち着かせた。
「こんにちは」
すれ違う社員が皆、挨拶をしてくる。僕は少し動揺しながら
「こんにちは」
挨拶を返していく。うちの会社では考えられないことだ。社員同士でもこれほど挨拶を返す習慣は無い。そして社員皆の表情が心なしか明るく、活発に意見交換が行われている。雑談ではなく、ポジティブな仕事に関する話だ。これもうちの会話が無いオフィスに比べると全然違うので驚いた。
「こちらでお待ちください」
女性が案内をしてくれた部屋で待っていると、60歳を超えたと思われる柔和な表情をした男性が入って来た。
「お待たせしました。代表取締役の鳥島です」
鳥島社長が名刺を差し出す。僕も名刺を差し出し自己紹介をした。
「株式会社Dの荒田です。よろしくお願い致します」
2人ともソファに向かい合って座った。適度な硬さで座り心地が良かった。
AI電話通話の説明をさせて頂くと、鳥島社長は熱心に話を聞いてくれた。AI自体にも大いに興味があるようで様々な質問を受けた。40分程度話をして前向きに導入を考えて頂けるとのことで見積書を作成して後日お送りすることを約束した。僕は秘書の方が持ってきてくれたお茶に口をつけた。
「御社様は社員の方の表情が何だか明るくて、活気に溢れてますね」
「そう感じて貰えると嬉しいです」
「挨拶も誰もからして頂けるので、驚きました」
「実は私が社長に着いたときは、挨拶も無くどんよりとした会社だったんですよ」
鳥島社長は笑って言った。
「ここまで来るのに時間がかかりました。優秀で情熱のある人事担当のお陰です」
迎えに来てくれた背の高い女性を思い出していた。彼女は確か人事と言っていた。今の会社の雰囲気からは挨拶が無く、どんよりとした雰囲気の会社は想像が難しかった。
「業績も落ちていたタイミングの交代でした」
鳥島社長もお茶を口に運ぶ。
「売り上げを上げることが急務でしたが、そのために営業部隊の強化や商品の見直しなど複数のやるべきことがありましたが、私が就任した時に感じたのは会社のどんよりとした雰囲気でした。この部分が一番のボトルネックであると。この雰囲気を変えることができれば様々な問題も解決できると感じていた時に情熱ある人事担当を採用することでき、ある程度時間がかかりましたが今のような雰囲気になり、業績も上がっていきました」
「そうなんですね」
「AI電話も社員のストレス軽減や働きやすさに繋がるので、とても良いと思っていますよ」
鳥島社長はニッコリと笑った。
「ありがとうございます。すぐに見積もりを用意させて頂きます」
僕も笑顔で答えた。
ビルから出ても鳥島社長の言葉が頭に残っていた。“挨拶も無くどんよりとした会社だった”まるで今のうちの会社のようだ。その会社があんな風に変わることが出来るのだろうか。もしそんな会社ならWのように苦しい思いをする人もいなかったのにとふと思った。僕はそんなことを思いながら自社に帰るために山手線に乗った。午後の時間帯なので学生、会社員と様々な人が電車に乗っている。会社員は様々な人がいる。自分はどのように映っているのだろうか?仕事に集中をしてからは以前のような憂鬱な気分は減ってきた。しかし実際問題転職活動をスタートはしなければいけない。そこは悩ましいところだったが、半年分の退職金も出るとのことだったので退職後に仕事を探しをしてもいいかとも思っていた。そんなことをぼんやり考えていると携帯にライン通知が来ていた。相手先は見たことがあるが思い出せなかった。僕はメッセージを開いて中を確認した。


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