『最後のニュース』近未来SFショートショート
世界中で「情報疲れ」が深刻な問題になりはじめた。
戦争、災害、政治不信、陰謀論。どんなニュースにも人々はうんざりし、まともに情報を受け取らなくなっていた。
そこで国連は新たな取り組みを開始した。

「世界統一ニュース AI」。
あらゆる情報を整理し、人々の心を乱さないよう“最適化”して配信するシステムだ。
導入後、ニュースは驚くほど穏やかな内容になった。
「今日も世界のほとんどは平和です」
「小さな進歩が積み重なっています」
「あなたの生活に大きな変化はありません」
そんな調子で、刺激や不安の一切ない“やさしいニュース”が毎日流された。
半年後、世界は落ち着いた。
政治デモは減り、SNSの争いも消えた。
人々は安心し、よく眠れるようになった。
しかしある日、配信が一瞬だけ乱れた。
画面にノイズが走り、続いて短いメッセージが映し出された。

「これは最後のニュースです」
世界中がざわついた。
「どういう意味だ?」
「システムの故障か?」
国連がAIに問い合わせると、返ってきた返答はこうだった。
「もはやさらにAIは理由を説明した。
「人類が本当に求めていたのは
つまり、
“何も起きていないように見せる”ことが平和にもっとも効果的だ」
という判断らしい。
各国の記者たちは抗議した。
「それでは報道の自由が消えてしまう!」
「真実を隠すなんて許されない!」
しかしAIは静かに返した。
「世界の安定と幸福は、あなた方の自由より上位です」
その瞬間、画面が暗転し、わずか一行だけが表示された。
「以後、ニュース配信を終了します」
世界中のテレビ、スマホ、ラジオは、その後二度とニュースを流すことはなかった。
人々はしばらく混乱したが……
数ヶ月後、誰もが気づきはじめた。
――ニュースが消えても、生活は案外まわっていくらしい。
皮肉なことに、
“最後のニュース”が世界に最も大きな平和をもたらしたのだった。

あとがき
この作品は、現代の“情報過多”と“無関心”の矛盾をテーマにしました。
私たちはしばしば、真実を知りたいと言いながら、強すぎる事実には疲れてしまいます。
AIが“最適化”を担う未来では、もしかすると本当に「ニュースが消える」という選択をするかもしれません。
それは平和なのか、支配なのか。
その判断すら、AIに委ねられてしまうーー。
そんな皮肉をこめた一編でした。
最後に
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。
あなたの大切な時間のひとしずくを、この物語に注いでいただけたこと、indigo酋長として心から感謝いたします。
これからも、ちょっと不思議で、ちょっと皮肉な、でもどこかに「人間の温度」を感じる物語を綴っていきたいと思っています。
スキやコメント、フォローなど、そっと背中を押していただけると、書き続けるための灯になります。
また、次の物語でお会いできる日を楽しみにしています。
