里長のつま先立ち(背伸び)の理由
「剣の里」に到着したフリーレンたちを迎えた里長(ピンク髪の少女)が自己紹介するシーンには、里長がフリーレンに密着するほど近づいて背伸びをしながら話すという描写がアニメ版で加えられている。
とても可愛らしい絵になっているのだが、視聴者には彼女が背伸びをする理由がわからない。せいぜい「視聴者サービスかな?」と考えても、可愛い仕草なら他にいくらでも選択肢はあるはずで、なぜ背伸びなのかやはりわからない。疑問はそのままにとりあえず先へ進むことになる。
話が少し進むと、彼女は剣の里に伝わる「勇者の剣」に関して先々代の里長(おばあさま)から様々な引き継ぎを受けていることがわかる。
おそらく、事務的な引継ぎというよりは「おばあさまの昔話」として、勇者一行について何度も聞かされていたのだろう。ここが背伸びの理由につながってくる。
「おばあさま」はフリーレンについてどのように説明しただろうか。「こんなに小さなエルフの魔法使いが…」と、手のひらを下にして身長を示しながら孫(里長)に話したのではないだろうか。彼女はその昔話を何度も聞いて育った。
そのため、「あれ?想像していたより大きい…」となって、背伸びをしたのだと思う。
背伸びの理由は以上で、もうすこし里長について。
「おばあさまの昔話」を聞いて育った彼女はフリーレンに会うことを物心ついた頃からずっと心待ちにしていたのだと思う。なにしろ、既に約束の時期は過ぎているのだから、「エルフの少女、魔法使い・フリーレン」が自分の前にいつ現れてもおかしくないはずなのだ。なのにフリーレンはやって来ない。
だから、彼女がフリーレンの遅刻に「ブチギレ」なのは半分は本当だし、魔物退治に彼女が同行したのはフリーレン達をもっとよく知りたいからだ。別れの挨拶「今度は遅れないでくださいよ」は、「また会えるように遅れないで(50年後なら生きているだろうが、80年後はわからない)」を含意している。
この辺りは短命種と長命種の関係性という『葬送のフリーレン』のテーマとも関連付けられているし、里長は子供らしさと聡明さを併せ持った魅力的なキャラクターになっていると思う。
可愛い印象の強いこの里長だが、魔物を前にしてフェルンと同じように落ち着いた眼をしている。このことから剣の腕前はかなりのものと思われる。
彼女が「剣の里」の優秀な里長であることは、フリーレン達を見送る場面で1コマ描かれる「里長と部下の関係性」からも読み取ることができる。
想像を膨らませるなら、例えば、「主の討伐」を他の冒険者に頼むべきか、里の内部で議論になったこともあっただろう。単なるお飾りでは無く、そういった難局を乗り越えて里をまとめている才覚ある里長だと感じられる。

剣の里の里長(49代目)(第25話「剣の里」単行本第3巻、アニメシーズン1エピソード12「本物の勇者」)
