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カンネの素質、エーレの傷心

一級魔法使い試験の3次試験(ゼーリエによる面接)で不合格となったカンネとエーレについて考えてみました。(アニメ第1期以降の内容には触れていません。)


カンネ(水を操る魔法使い)

「不合格」という結果について特に不思議はありません。

奇妙だと感じるのは、カンネに求められてゼーリエが不合格の理由を丁寧に説明したことです。

もちろん、カンネは面接試験の最初の受験者だったので、「『この世界における魔法とは?』を読者に説明するため」という物語りの都合もあるでしょう。

けれども、それを言ってしまうとつまらないので、少し考えてみます。

もし、カンネに魔法使いとしての優れた素質がなければ、ゼーリエの性格からして、ゼーリエはカンネに興味を持たないはずです。会話したいとも思わないでしょう。「帰れ」で終わりです。

そうすると、ゼーリエがカンネのために不合格の理由を丁寧に説明したわけは、「カンネに魔法使いとしての素質(伸びしろ)を認めたから」としか考えられないように思います。

とは言え、「1級試験編」を通して、カンネは、魔力探知が苦手であったり、魔物に襲われて死にかけたり、友人のラヴィーネにリードしてもらう場面が多かったりと、ラヴィーネと比較しても未熟な魔法使いとして描かれています。

カンネのバックグラウンドは作中あまり描かれていませんが、魔法学校での飛行魔法の実習時に皆に置いて行かれた様子が描かれており、少なくとも優等生ではなさそうです(ラヴィーネは知っていた「勇者一行の魔法使いフリーレン」に関する知識もなかった。)。この時、ラヴィーネからは「優しいパパとママに甘やかされて育った結果がこれだ」と指摘されています。(かなりの「お嬢様」であるラヴィーネから言われるくらいですから、カンネの家庭が裕福かどうかはわかりませんが、両親からは相当溺愛されているのでしょう。)

そうすると、その根拠はゼーリエが「これまで弟子を取って後悔したことは一度もない」とフリーレンに語ったときに一コマだけ描かれている「水を操る魔法使い」くらいしかないだろうと思います。(タイトル画像参照。単行本第7巻、アニメ28話)

おそらく、ゼーリエはかつての弟子である「水を操る魔法使い」と共通する才能(素質)をカンネから感じ取り、「こいつは見込みがある」と判断したので、カンネに対して不足している点を丁寧に説明したのでしょう。

また、カンネの力量を考えるにあたっては、1次試験においてフリーレンが結界を破壊したのは、カンネのためだったということも忘れるわけにはいきません。

フリーレンたちのパーティが1次試験に通るためだけなら、わざわざ結界を破壊する必要はありませんでした。フリーレンにとってリヒターを排除することなど赤子の手をひねるようなものだからです。

にもかかわらず、フリーレンは一晩かけて結界を解析し、破壊しました。(しかも、結界を破壊すれば関係者から注目を浴びることは間違いなく、それはフリーレンが望むところではないはずです。)

これは、フリーレンがカンネの才能(伸びしろ)を認めていて、カンネの成長に期待した(きっかけを与えたかった)からにほかなりません。これはすごいことです。(フェルン・シュタルク以外の人に対してもそういった心配りができるということで、フリーレンの成長・変化を感じるところでもあります。リュグナー・リーニエ戦に2人を送り出した場面を想起します。)

ゼーリエとフリーレンからその素質を認められているのですから、カンネは相当優秀な魔法使いになると思います。また会った時にはカンネの成長に驚くことになるでしょう。

エーレ(破壊されたセルフイメージ)

ゼーリエとの面接は「不合格」の一言で終わりです。

不合格の理由は、直接は描かれていませんが、描写の流れからしてカンネと同じ「一級魔法使いになった自分をイメージできていない」からと読み取るべきでしょう。

けれども、エーレは一級魔法使いの中でも筆頭と言える祖父・レルネンの薫陶を受けています。魔法学校は首席で卒業。ヴィアベルからその能力を度々高く評価されています。フェルンも「この中(1次試験の第8パーティ)で一番強いのは貴方(エーレ)」と見ています。相当な実力の持ち主であることは間違いありません。エーレ自身も自分の力をよくわかっていて、それなりの自信もあるはずです。

にもかかわらず、なぜエーレはゼーリエとの面接において「一級魔法使いになった自分」をイメージできていないのでしょうか?

エーレは、1次試験においてフェルンと戦って敗れています。

エーレはフェルンとの戦闘についてヴィアベルに対して「一般攻撃魔法の物量で押し切られたわ。捌ききれなかった。」と説明し、そのことを「信じてないでしょ」と言っています。つまり、フェルンとの戦いはエーレ自身にとって信じられないような出来事だった(まして直接見ていないヴィアベルには信じてもらえないだろう)ということです。

この敗北によって、エーレの魔法使いとしてのセルフイメージは壊れてしまいました。実際、フェルンとの戦闘以降、エーレがその才能を発揮して活躍する場面はありませんでした。(そのせいでかなり影の薄いキャラになっています。表情も冴えない場面が多いのです。)

とは言え、前述のとおりエーレは押しも押されもせぬ優秀な魔法使いです。もともとは「一級魔法使いになった自分」をイメージできていたはずです。

この傷心から回復すれば、エーレは一級魔法使いになれるでしょう。

※エーレにとっては、1次試験でフェルンと対決したことも不運でしたが、リーダー適性の非常に高いヴィアベルとパーティを組んだことも、ある意味では不運だったと言えるかもしれません(もちろん大切な出会いになったわけですし、ヴィアベルから学んだことも多かったでしょうが)。エーレがパーティをリードせざるを得ないようなパーティ構成であれば、試験期間中にエーレがその能力を十全に発揮して、セルフイメージを修復できたかもしれないからです。

※タイトル画像は、山田鐘人、アベツカサ『葬送のフリーレン』第7巻 より