Tour around NIMBUS
2026年4月26日(日)
勝山市役所の隣にあるNIMBUS(ニンバス)。スカーフや衣類などを扱う雑貨店である一方、お茶をすることもできて、たまに個展なども開催される。磯崎新による設計で、もとは個人住宅であったがショップへとチューニングされて、現在のように我々も見ることができるようになった。
このニンバスと、同じく磯崎新設計の中上邸、その中上邸の隣にある深谷邸(福井県内最古の洋館と言われている)を贅沢にもまとめて見学しようというのがこの「アラウンドニンバス建築ツアー」である。ツアーコンダクターは僕の飲み友達、われらが清水センセ(from福井工業大学)である。そんなもん参加しない手はないのだが、これまで都合が合わずに参加できなかったのである。このたび満を持してのニンバス初訪問である。

正午にニンバスに集合。中に招き入れられ、特徴的なかたちの窓にほうっとため息をつく。僕はリオデジャネイロ(行ったことないけど)のコルコバードのキリスト像を思い浮かべる。あるいはトーテムポールのようにも(つまりはなにか立像っぽいということだ)。なにか宗教的な意味やモチーフがあるのだろうかと思ったのだが、とくにない(もしくは分からない)そうだ。たしかに、宗教的モチーフだとすればこのかたちの窓は一つだけにするだろうなと思う。

必ずやなにかの形に見立ててしまうはずだ

ドーム状の天井は、中心から放射状に線が伸びている。建設の過程で生じたものだそうだが、星図のように見えて美しく神秘的だ。


清水センセの解説のなかで、平面断面の寸法の話が印象的だった。日本の建物では1,820mm×910mm寸法が一般的だそうだが、このニンバスではそれより少し大きな2,100mm×1,050mmを基準に寸法が決められているそうだ。この少し大きな、規格というか単位を用いることが、この空間の特異性を、直に身体性として感じさせるらしい。
この話を聴いて、前日に金津創作の森で鑑賞した久保寛子の作品を思い出した。《ジナンドロモーフ》というモザイク画の作品は「サブロク」と呼ばれる建築資材の規格、3×6尺(910mm×1,820mm)4枚の組み合わせで構成されている。久保はこの日の青木野枝との対談で、この規格の話についても触れており、とくに尺貫法に由来する昔からの規格が心地よく、これをもとに作品を構成するのが好きだといった話をしていたように思う。

サブロク四枚からなる。金津創作の森美術館にて
規格や単位を、建築家や芸術家(とくに彫刻家)がどのように考えるかは多くの示唆に富んでいる。僕(のような素人)は、こういった規格を、ある思考を枠に嵌めるものだとばかり思い込んでいた。そうではなくて、建築家(あるいは彫刻家)は、こういった規格を元に思考を組み上げるのだ。それは子供がレゴブロックに夢中になるような、案外プリミティヴな動機なのかもしれない。
しかし、磯崎新は、日本人の身体になじんでいるはずの規格「サブロク」をあえてずらしにかかった。それは不思議な身体感覚として、訪れるわれわれを直に揺さぶる。すごいことを考えるひとがいるものだと思う。

さて。ニンバスの話をひととおり終えたところで次に深谷家住宅洋館に向かう。もと診療所であった建物であり、普通の住居より天井が高い(気がする)。二階にはなんと病室もあったようだ。アーチ様の窓の意匠、天井裏物置のギミック(?)や上品で豪奢な応接間など見どころ盛り沢山である。広い応接間には一面に油団が敷かれ「うわぁお金持ちの家だぁ」と思ってしまう。







一面に油団が敷かれている










引き続きお隣の中上邸へ。こちらも磯崎新設計による。ニンバスも中上邸もコンクリート打ちっ放しであるが、表面のコンクリートについて、ニンバスがある程度メンテナンスされているのに対して、中上邸はとくにメンテナンスされていないらしい。マァそれはそれでよいのではないか。



そりゃ撮りたくなるよ


さっき深谷家からチラ見えしたのはこちら側

ときに「カエルのおうち」と形容される外観の中上邸。外観だけでも楽しいが、中はもっと楽しかった。絵画を展示し鑑賞することに主眼を置いた家。中空に渡り廊下のある家なんてそうそうあるものではない。狭くても工夫をこらされた寝室。そして邸内のそこかしこに飾られた絵画の数々。もうため息しか出ませんよ。





反対側から見たカエルの目の裏側である

照明のレールと手すりの直線が揃えられている

まきまき模様になっている







瑛九がこんな点描画を描いていたなんて知らなかった






ため息だらけの中上邸をあとに、ニンバスに戻ってきた。先ほどは一階でニンバスの概要説明だけだったが、今度は参加者で二階にも上がり、清水センセの説明を聴く。さっきと太陽の高さが変わっているため、差し込む光の相貌も変わる。それがとても美しい。









ひととおり見学し終えて、お茶とお菓子をいただく。随分のんびりさせてもらっておいとまする。再訪を期す。
