飲食店が潰れる理由は「狙う客と業態のズレ」でほぼ決まる
飲食店が潰れる理由は、努力の量ではなく努力の方向で決まります。
これは断言しておきます。私がこれまで見てきた閉店した店のほとんどは、オーナーがサボっていたわけじゃない。むしろ現場では誰よりも動いていた。それでも潰れる。理由は「頑張る方向がズレていた」からなんですよ。
先日、私が昔アルバイトしていた立ち食いパスタ屋の閉店を検証する機会がありました。駅から徒歩3分、サラリーマンが多い一等地。条件だけ見れば悪くない。でも私は話を聞いた瞬間に「これ、100%潰れるやつだ」と思ったんです。何がダメだったのか、順番に潰していきます。
飲食店が潰れる理由は「頑張りの量」ではなく「頑張る方向」のズレにある
潰れる店の共通点は、狙う客層・業態・オペレーションがバラバラなことです。
この3つが噛み合っていないと、どれだけ立地が良くても、どれだけ気合いを入れても客足は必ず落ちます。逆にここが揃っていれば、悪立地でも店は回るんですよ。
よく「ガムシャラに頑張れば飲食は報われる」と思っている人がいます。でも、これは半分間違いです。方向のズレた努力は、努力として成立していません。適切な努力じゃない努力は、残念ながら成果に繋がらない。イチローも言っていますよね、適切な努力をしろと。飲食もまったく同じなんです。
設計がズレたまま現場で汗をかいても、それは穴の空いたバケツに水を注いでいるのと変わりません。
消える店には構造的な原因がある
飲食店は、そもそも生き残るのが難しい業種だと言われます。数年のうちに多くの店が姿を消していき、長く続けられる店はかなりの少数派です。
この現実を見て「飲食は運が悪いと潰れる」と受け取る人がいますが、それは違います。
淘汰されやすいのは事実です。ただ、消えていく店には共通した構造的な原因がある。運ではなく、設計とオペレーションの問題なんですよ。だから確率論に怯えるより、潰れる店がどこでミスをしているのかを分解したほうがよっぽど建設的です。
「狙う客・売り・オペレーション」がバラバラだと客足は必ず落ちる
潰れる店の構造を整理すると、だいたいこの4つに集約されます。
①狙いたい客層と業態が矛盾している
②安さが売りなのに値上げして逆走する
③提供スピードが業態に追いついていない
④その結果、資金繰りが悪化する
とくに1000円前後の低価格業態は、勘違いされやすい。低価格帯というのは、単価で稼ぐ商売じゃないんですよ。客数と回転で稼ぐ商売です。ここを理解せずに単価を上げにいった瞬間、地獄が始まります。
安いのが売りの店が高くする。機能性で選ばれている店がスピードを落とす。これはもう、自分で自分の武器を捨てにいく行為なんです。
駅前3分で一等地なのに閉店。立ち食いパスタ屋で実際に起きたこと
さっきの立ち食いパスタ屋の話に戻します。
生パスタを店頭で茹でて、割り箸で書き込むスタイル。ノーマルで980円ほど、トッピングで単価が少し上がる設計でした。オープン当初は珍しさもあって、かなり客が入っていたそうです。
崩れ始めたのは、店長が変わってからでした。研修の都合で店長が店を離れる時間が増え、アルバイトだけで回す時間帯が生まれた。ここから売上が落ちていくんですよ。
幹部と店長が打った最初の手が、値上げでした。立ち食いなのに、です。無料だった大盛りを150円、中盛りを100円の有料に変えて、一注文の金額を上げにいった。さらにゴルゴンゾーラだのアラビアータだの、メニューを一気に増やした。オペレーションを重くして、選択肢を増やせば客が来ると考えたわけです。
結果、提供はさらに遅くなり、店は回らなくなって閉店しました。店長は私に「俺は頑張ったんだけどな」と言いました。頑張っていたのは本当なんです。ただ、方向が全部逆だった。
業態・単価・仕込み・オペを設計し直す4ステップ
では、どう組み直せば良かったのか。手順に落とします。
①狙う客層と業態・価格を一致させる
そもそもパスタでおしゃれ感を出して女性を狙いたいなら、立ち食いという選択肢がありえない。女性が一番嫌がるのが立ち食いなんですよ。せっかくパスタという武器を持ったのに、立ち食いにした時点で自分でその客を削っている。それなら立ち食いそばで良かったよね、という話になる。狙う層とやっていることを、まず一致させてください。
②低価格帯は単価を上げず、客数と回転で稼ぐ
1000円前後の業態は、単価を上げにいってはいけません。基本は客数を伸ばすことだけを考える。大盛りが有料になっても単価が少し上がるだけで、客数は増えない。むしろ減ります。
③ピーク前の先茹で・仕込みで提供を1分以内にする
立ち食いに来る客は、さっと食べて出たい。なのに生パスタで3分半かかっていた。これは回転率で確実に負けます。ピーク前に必要な分を半分だけ茹でておく。マックのポテトと同じで、先に用意して、時間が来て売れなければ捨てる。これをやらないと安い業態は絶対に回りません。
④メニューを絞って一点に集中する
メニューを増やせば客が来るは、ほぼ幻想です。オペレーションが重くなって提供が遅れるだけ。アルバイトだけでも回るように、注文が入ったら何分でどう出すかまでルール化しておく。ここまでやって初めて、店長不在でも数字が崩れなくなります。
「値上げすれば単価が上がる」「メニューを増やせば客が来る」は逆効果という勘違い
まず「値上げすれば売上が上がる」。これは違います。単価は上がっても、安さで選ばれていた客が離れれば客数が落ちる。トータルの売上はむしろ下がるんですよ。安いのが売りの店が高くするのは、地獄の始まりだと思ってください。
次に「メニューを増やせば客が来る」。これも幻想です。居酒屋を見てください。いろんな人に来てもらおうとメニュー数を増やしている店ほど、必ずしも売れているわけじゃない。メニュー数と売上は、そもそもイコールじゃないんです。ラーメン屋でいえば、味噌も塩も醤油もつけ麺もある店より、一杯に振り切った店のほうが結局こだわれて強い。
そして、経営が悪化したときの選択肢は閉店だけじゃありません。業態そのものを転換する、立地を活かして別の売り方に切り替える、あるいは早めに撤退して傷を浅くする。どれを選ぶにしても、感覚ではなく数字で判断すること。狙う層・単価・回転をデータで見られる人だけが、正しい方向に舵を切れます。
潰れる店と残る店を分けるのは「設計力」
潰れる理由は、才能でも運でもありません。狙う客・業態・オペレーション・単価、この4つがズレていること。ただそれだけなんです。
逆に、残る店はこの設計を言葉と数字で説明できます。誰に、何を、いくらで、どのスピードで出すのか。ここを詰め切れた店は、多少立地が悪くても、店長が現場を離れても崩れない。
あの立ち食いパスタ屋の店長は、努力を間違えたんじゃない。努力の前にやるべき設計を誰も教えてくれなかっただけです。
もしあなたが今、売上が伸び悩んでいて「頑張っているのに報われない」と感じているなら、足りないのは気合いじゃなく設計図かもしれません。
私が直営店を経営する中で積み上げてきた出店判断・単価設計・オペレーションの組み方を、順を追って自分の店に落とし込めるようにしたのが「絶対に負けない飲食経営の学校」です。潰れる方向に汗をかき続ける前に、一度こちらで努力の向きを合わせてみてください。
