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クリエイティブは「組み合わせ」が9割

何か新しいものを作ろうとするとき、僕たちはよく「今までにない、誰も見たことがない完全なオリジナルを生み出さなければならない」と考えがちです。

しかし、いざ真っ白なキャンバスに向かうと、ピタリと手が止まってしまう。「自分には、圧倒的な天才のひらめきなんてないのではないか」と、絶望したことがある人も多いはずです。
僕はTBWA HAKUHODO時代に数え切れないほどあります。ほぼ毎日、adidasやらLEGOやらのブレストがあり、苦しんでました、、、。

ここで最初にお伝えしたいのは、この世に「完全なゼロから生まれるオリジナル」など存在しないということです。

一見、まったく無関係に見える要素同士を繋ぎ合わせ、そこに新しい価値を見出す技術。これこそが、クリエイティブの本質です。

今回は、卓越したクリエイティブが生まれる構造をロジカルに解剖し、それを意図的に生み出すための具体的な思考法とステップを考察します。

優れたアイデアは「円の縁(フチ)」に宿る

クリエイティブのクオリティを評価するとき、僕はよく次のような「2つの円」のモデルをイメージします。

まず、真っ白な紙の中心に「課題(解決したいこと)」という小さな円を書きます。そして、その周りにもう一つ「大きな円」を書きます。

このとき、生まれるアイデアは大きく3つの場所に分類されます。

  • 1. 小さな円の近く(内側)

    • 課題に直球すぎて、当たり前すぎるアイデア。誰もが思いつくものであり、クリエイティブとしては「つまらない」と言わざるを得ません。

  • 2. 大きな円の外側

    • 課題から離れすぎていて、あまりに奇抜なアイデア。突飛すぎて、受け手には「よくわからないもの」として映ってしまいます。

  • 3. 二つの円の間、ちょうど「円の縁(フチ)」:

    • ここが最も重要な場所です。当たり前すぎず、かといって奇抜すぎない。誰もが「その手があったか!」と膝を打つような、卓越したクリエイティブは、必ずこの「円の縁」に生まれます。

では、このちょうどいい塩梅である「円の縁」にあるクリエイティブを、僕たちはどうやって狙って生み出せばいいのでしょうか?

その答えこそが、「組み合わせ」です。

円の中にある「既存のもの」と、円の外側にある「全然違う業界や分野のもの」。この2つを強引に掛け合わせることで、新しい視点が互いに引っ張り合い、結果としてちょうど円の縁に美しいクリエイティブが着地します。

クリエイティブは、組み合わせで生まれる

歴史に名を残す名作も、現代のヒット作も、すべてはこの「組み合わせ」の構造で説明がつきます。

たとえば、映画の世界を覗いてみましょう。

世の中に「青春ドラマ」の映画は星の数ほどあります。しかし、ここに円の外側から「タイムスリップ」という要素を組み合わせることで、名作『時をかける少女』が生まれました。

さらに、その『時をかける少女』の構造に、もう一工夫「男女の入れ替わり」という要素を組み合わせた結果、社会現象となった『君の名は。』という新しいクリエイティブへと進化しました。

このように、クリエイティブとは無から有を作る魔法ではなく、既存の要素のレイヤーを重ねていく行為です。

ここで重要になる思考法が、「抽象化」です。

ヒット作の表面だけを真似るのではなく、一度要素をバラバラに分解して捉えること。

『時をかける少女』を単なるアニメとして消費するのではなく、「青春ドラマ × タイムスリップ」という要素に分けること。これが抽象化です。この抽象化ができるからこそ、次の『君の名は。』のような新しい組み合わせの発想が可能になります。

この構造は、ビジネス書やエンタメの世界でもまったく同じです。

たとえば、世の中にある「キャリア形成の自己啓発本」を大きく抽象化すると、究極的には次の3つのことしか言っていません。

  1. 自己分析をして、自分の強みを見つける

  2. 見つけた複数の強みを組み合わせる

  3. その強みを最も活かせる環境(市場)にいく

どれも正論ですが、これだけでは「当たり前すぎてつまらない(円の内側)」になってしまいます。

そこで、けんすうさんはこの抽象的な構造に、漫画のプロットのような「ストーリー(物語)」を組み合わせることで、『物語思考』という独自のクリエイティブに仕上げました。

また、かっぴーさんは「天才を“状態”として定義する」という独自の抽象化に、「カードゲーム」の概念を組み合わせることで、『天才になれなかった全ての人へ』という熱量を持つ著書を生み出しています。

現代の優れたクリエイティブの多くは、大昔の宗教や諸子百家といった古典が言っている普遍的な真理を「抽象化」し、そこに「現代の環境」と「作者自身のユニークな経験」を組み合わせることで作られています。

クリエイティブを生み出す「6つのステップ」

では、僕たちが実際に手を動かして新しいアイデアやデザインを生み出すとき、どのようなプロセスを辿ればいいのでしょうか。

センスやひらめきという曖昧なものに頼るのではなく、仕組みとしてクリエイティブを生み出すための「6つのステップ」を共有します。

ステップ1:課題を定義する

まずは「商品が伝わるWebサイトを作る」「新しいアプリを開発する」といったように、解決したい問題や取り組むべき課題を明確に定義します。ここにしっかりと境界線を引くことで、進むべき方向性と、円の中心(軸)が定まります。

ステップ2:リサーチする

アイデアとは要素の組み合わせである以上、まずは組み合わせるための「材料」を集めなければなりません。自分が作ろうとしている分野に、すでにどのような先行事例が存在しているのか(例:今どんなWebサイトやサービスがあるのか)を徹底的に調査し、知識を脳に蓄積します。インスピレーションはただ待っているだけではやってきません。自ら材料を揃えに行く必要があります。

ステップ3:発見・探索する

次に、自分が取り組んでいる分野とは「直接関係のない要素」をあえて探しに行きます。

ポスターや雑誌などまったく異なる媒体の事例、あるいはまったく別業界のビジネスモデルなど、一見すると無関係な情報を集めます。この「遠くにある要素」こそが、予期せぬ新しいつながりを生み出す最大のフックになります。

ステップ4:休む

大量の情報をインプットしたら、あえて一度脳を休ませてリラックスします。

実は、ここが非常に重要なプロセスです。根詰めて考え続けていると、脳内の思考が「1+1=2」のようなガチガチの正論で凝り固まってしまいます。お風呂に入っているときや、散歩をしているときなど、ふと力を抜いた瞬間に、無意識下で集めた情報同士がカチッと結びつく。この「アハ体験(ひらめき)」は、脳がリラックスしているときにこそ起こります。

ステップ5:組み合わせる

リラックスしてほぐれた脳で、リサーチした「既存の要素」と、探索で見つけた「異分野の要素」を本格的に掛け合わせていきます。

たとえば、「WEBサイトのファーストビュー」に「映画のOPアニメーション」を組み合わせてみたらどうなるか。「WEBサイトのレイアウト」に「商品パッケージの3D」を組み合わせてみたらどうか。異なる2つの点を線で結び、新しい形を具体化していきます。

ステップ6:試し、実行する

アイデアを思いついたら、それが本当に機能するかどうかをテストし、証明しなければなりません。

失敗を恐れず、まずは最も安価で、最も手早い方法(プロトタイプやモックアップ)で試してみる。そして最終的には、「現実世界で実行する」こと。

どんなに素晴らしいアイデアも、頭の中にあるだけ、あるいは身内だけの空論で終わってしまっては価値がありません。現実の社会に発表すること。これが最後の、そして最もタフなステップです。

まとめ

クリエイティブとは、決して選ばれた天才だけが持つ「天性の魔法」ではありません。

それは、課題を冷静に見つめ、要素を「抽象化」し、一見遠くにある何かと「組み合わせる」という、極めて構造的で、再現性のある技術です。

もし今、あなたが「新しいアイデアが出ない」「ありきたりな表現しか作れない」と壁にぶつかっているなら、それはあなたの才能が枯渇しているからではありません。単に、組み合わせるための材料が足りていないか、あるいは円の内側だけで思考が完結してしまっているだけです。

焦る必要はありません。

まずは目の前の課題をじっくりと解剖し、遠くの世界へ材料を探しに行きましょう。そして、集めた要素を1つずつ丁寧に掛け合わせていく。

その地道なステップの繰り返しが、やがて「あなたにしか作れない、円の縁にある卓越したクリエイティブ」へと繋がっていきます。

今日も一歩ずつ、手元の要素を組み合わせていきましょう。

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