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すべての仕事がクリエイティブ・ディレクションになる

結論

AIによって「要件定義→デザイン→実装」が数秒で完結する世界において、デザイナーの役割は、実行(エグゼキューション)から意思決定(ディレクション)へとシフトしていきます。

もはや「つくること」が差別化にならない時代、僕たちに求められるのは、課題を発見し、コア・アイデアを確定させ、最終的なクオリティに責任を持つ「クリエイティブ・ディレクション」そのものです。

「つくる」がコモディティ化した後の生存戦略

先日開催された「InHouseDesigners Park」に参加して、最も強く印象に残ったのは、登壇者全員が異口同音に「とりあえずAIで日々何かを作れ」と説いていたことです。

深津さんは「学生にAIを使って行動経済学のインプットを30分で終わらせる授業をしている」と言い、平野さんは「デザインをすること自体が贅沢な行為になる」と予見しました。

僕の好きな本に、元電通CDC局長の古川裕也氏が著した『すべての仕事はクリエイティブディレクションである。』があります。この本の中で、クリエイティブ・ディレクションの方程式はこう定義されています。

課題 → アイデア → エグゼキューション

古川裕也. すべての仕事はクリエイティブディレクションである。

この全工程を考え、決定し、実行すること。 AIがエグゼキューション(実行)を驚異的なスピードで肩代わりする現在、僕たちの仕事は文字通り、この「方程式のすべて」を司るCDへと収斂していくのだと思います。

クリエイティブ・ディレクションの4つの柱

CDの仕事は、実は非常にシンプルに構造化できます。

  1. ミッションの発見: 解決すべき真の課題はどこにあるのか?

  2. コア・アイデアの確定: その課題を突破する解は何か?

  3. ゴールイメージの設定: どこを目指し、どんな景色を見せるのか?

  4. アウトプットのクオリティ管理: 最終的な製品に魂が宿っているか?

これだけをやればいい。逆に言えば、これ以外の「作業」にリソースを割きすぎるのは、もはや戦略的ではありません。

クリエイティビティは「筋トレ」である

ここで重要になるのが、「アイデア」を生むための直感の正体です。 古川氏は同書でこう述べています。

直感の要諦は訓練なのだ。

同じような方法で繰り返し訓練すれば、その時、直感がかなりの確率で働く。無意識で正確にできるようになる。その事態は傍から見れば、天才に見えるかもしれない。なぜなら、毎回毎回神が降りてくるように見えるはずだから。

そう。クリエイティビティは、筋トレなのである。

古川裕也. すべての仕事はクリエイティブディレクションである。

僕が同僚のデザイナーと配信しているポッドキャスト「のうきんデザイン ラジオ」のネーミング着想源も、実はここにあります。
脳のニューロンの結合を促すには、正しい学習を繰り返し、身体が「無意識」に反応できるようになるまで叩き込むしかない。センスとは天賦の才ではなく、圧倒的な反復が生み出す「高度な直感」の別名です。

なぜ、「デッサン」が必要なのか

美大の試験でデッサンが必須なのは、手を動かす訓練以上に観察眼を鍛えるためです。 人は見ているようで、実はほとんど見ていません。脳が効率化のために情報を勝手にセーブしてしまうからです。

今後、見た目のデザインをすることは、デッサンと同じ立ち位置になるのかもしれません。 自らの手でUIを組み上げ、色の微差に悩み、タイポグラフィの重心を調整する。この「身体的な体験」こそが、AIが出した100案の中から「最良の1案」を選び抜くための審美眼を養います。

鉛筆を使いこなすようにツールを使いこなし、基礎となる観察眼を鍛える。その先にしか、日常のささいな事象に喜びを見出す「センス・オブ・ワンダー」や、人を熱狂させるビジョンは生まれません。

ただし、要件定義からリリースまでAIが肩代わりする世界では、デザインをすること自体が贅沢な行為になります。これからジュニアのデザイナーが審美眼を鍛えるためには、デッサン教室と同じように可処分時間を投入する必要がありそうです。

専門性の深さと、偏愛の必要性

誰もがカンタンに「作れる」世界だからこそ、逆に「深い専門的知識」の価値が上がります。 課題に対して最も美しい解決策を思いつくには、デザインの歴史、技術、そして人間心理への深い理解が不可欠です。

そこに必要なのは、「偏愛」や「熱狂」です。 自分が何に没頭し、時間を忘れて楽しめるのか。その自己認識がなければ、AIという巨大なエンジンを乗りこなすための「意思」を持つことはできません。

イベントでセルジオさんが仰った「Vision Driver(未来を描き、導く存在)」や、平野さんが仰った「100案から選べるディレクター」、あつみさんが仰った「起業家」になるためには、自分の中に譲れない価値判断軸を打ち立てる必要があります。

最後に

宇野さんは「生存戦略はありません、新たに生まれるデザインを乗りこなせるか次第です。」と仰っていました。

まさしくいま、デザイナーという言葉の定義が壊れ、再構築されています。 「画面を作る人」という狭い定義に囚われず、事業を推進するためにAIを使い倒し、何を楽しめるかを探求すること。

「正解」を納品することに執着するのをやめ、まずはDay0でモノを作り、会議が終わる頃にはプロトタイプができている。
そんなスピード感で「構造」にコミットするCDの視点こそが、2026年以降の僕たちの主戦場になります。

クリエイティビティという名の筋トレを、今日も続けていきましょう。


ポッドキャスト

デザインを「構造」と「筋肉」で捉え直すトークを配信しています。 今回のイベントで感じた「AI時代の生存戦略」についても、改めて語ってみたいと思います。ぜひ聞いてみてください!

イベントで「のうきんデザインラジオ」聴いてます!と話しかけてくれたリスナーの方々!ありがとうございます!
とっても嬉しく、ポッドキャスト配信の励みになります。

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