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勝ち続ける人と、空回りし続ける人の違い

「何をやってもうまくいく人」と、「どれだけ努力しても空回りしてしまう人」。 みなさんの周りにも、このどちらのタイプもいるのではないでしょうか。

この違いを目の当たりにしたとき、僕たちはつい「あの人は才能があるから」「運が良いから」と片付けてしまいがちです。でも、実のところ、人生の成否を分けているのはそんな曖昧なものではありません。

正体は、脳に染み付いた「勝ち癖」と「負け癖」という構造の問題です。

実は、一度「勝つ」という体験をすると、脳はその成功を再現するよう物理的に形を変えていきます。今回は、心理学的なアプローチも交えながら、この「勝ち癖」の正体と、それを後天的に身につける方法について考察します。

僕の人生を変えた、2021年の「連鎖」

かくいう僕も、最初からすべてがうまくいっていたわけではありません。 僕が自分の中に「勝ち癖」のようなものが芽生えたとはっきりと実感した、最初のきっかけは2021年の転職活動でした。

当時、デザイナーとして活動していた僕は、ありがたいことに「三井住友銀行」「Goodpatch」「STORES, inc.」のすべてからデザイナーとして採用をいただくことができました。

このひとつの「成功体験」を境に、僕の周りの環境はドミノ倒しのように一気に変わり始めました。

  • MENTAを始めると、一気にメンティー(受講生)が増えた

  • STORES, inc.に入社後、わずか3ヶ月でマネージャーになった

  • noteで書いたいくつかの記事がよく読まれた

  • DESIGN MENTOR【PRO】を始めて2年で、80人まで契約者が増えた

  • ポッドキャストを始めたらデザインカテゴリーで1位になった

  • Xで少しずつ名前を知ってもらえるようになった

  • イベントやセミナーへの登壇依頼が増えた

客観的に見れば(デザイン界隈では)「急によく見る人」になったかもしれません。しかし、僕の能力が短期間で爆発的に上がったわけではありません。

(それに、見えていない小さな失敗もたくさんあります、、、)

起きていたのは、最初の「全社合格」という勝ち体験によって、僕の脳が「勝つためのモード」に切り替わったということ。そして、次に挑戦する恐怖が消え、すべての行動がポジティブな結果へと繋がっていく好循環が生まれたことです。

「勝つ」ことで脳は物理的に最適化される

心理学者のイアン・ロバートソン氏の研究によると、この現象は科学的に説明がつきます。脳は勝利を経験することで物理的に形成され、いわば「ターボ付きの車のように、同じ量のガソリン(努力)で、より多くのパワー(成果)を生み出す構造」に変化するのです。

これを「勝者効果(Winner Effect)」と呼びます。

科学的な実験でも、そのおもしろい生態が明らかになっています。 あるマウスの実験では、一度勝利を経験した個体は、勝つたびに脳内の「テストステロン」というホルモン値が急上昇することが確認されています。このホルモンが増えることで、個体はよりタフになり、次の戦いでも勝ち続けやすくなる。つまり、「勝つことで、さらに勝ちやすくなる」というバグのような好循環が脳内で起きているのです。

さらに、勝ち癖がついた脳は「習得思考」へと移行します。 「自分の能力は、努力次第でどこまでも向上させられる」と本気で信じられるようになるため、たとえ途中でミスや失敗をしても、それを「成長のためのデータ」として前向きに処理できるようになります。失敗が失敗でなくなるため、挑戦の打席に立ち続けることができる。これが勝ち癖の正体です。

「負け癖」が脳内に作る、透明な天井

一方で、恐ろしいのが「負け癖」が与える影響です。 小さな失敗や挫折、あるいは他者からの否定が続くと、脳内に「透明な天井(見えない限界)」を作り出してしまいます。

「どうせ自分には無理だ」
「やってみても、きっと同じ結果になる」

そうやって、能力は生まれつき決まっていて変わらないものだと捉えるようになると、人は「無気力」の負のループに陥ります。何をするにも、まず「失敗する言い訳」や「ダメだったときの想像」から始まってしまう。

結果として、行動を起こさなくなるため経験値がたまらず、さらに自信を失っていく。これが、負け癖がもたらす構造的な罠です。

ピカソとパウロ:人生を分けた「2つの癖」

この「勝ち癖」と「負け癖」が、人間の人生をどれほど残酷に分けるかを示す、象徴的な歴史の例があります。天才画家パブロ・ピカソと、その息子パウロの物語です。

父・ピカソ:「勝ち癖」による無限の好循環

ピカソは幼少期、美術学校の教授であった父親から直接絵の手ほどきを受けていました。そのため、スタート地点で周囲よりも「少し絵が上手い」という状態を作れていました。 絵を描くたびに周囲から絶賛され、彼は強い自信を持ちます。その自信があるからこそ、さらに狂ったように絵にのめり込み、14歳にしてすでに自分の絵が売れて評価されるという成功体験を重ねました。彼は幼少期から「勝ち癖」の波に乗り、生涯で数万点もの作品を生み出す怪物となりました。

息子・パウロ:「負け癖」による底なしの負のループ

一方で、息としてのパウロも同じように父から絵を教わりましたが、環境が最悪でした。周囲からは「ピカソの子供なんだから、上手くて当然」と思われ、どれだけ頑張っても高い評価を得られません。それどころか、あまりにも偉大すぎる父親の圧倒的な功績の前では、自分の成果がひどく惨めで貧弱なものに見えてしまったのです。 パウロは後にピカソの運転手として働くようになりますが、父ピカソからは日常的に「無能なバカ」扱いされ、罵倒され続けました。 最初から「負け癖」を強制的に刷り込まれたパウロは、何に対しても情熱を持てない無気力な大人になってしまいました。最終的にはアルコールに依存し、54歳という若さでこの世を去っています。

二人の違いの結論として、イアン・ロバートソン氏はこの悲劇について、「パウロに才能がなかったからではない。自分を有能だと思える分野へと踏み出すための、壁を超える後押しを、人生で一度も受けられなかったからだ」と指摘しています。

生まれた環境や才能の差ではなく、周囲の評価や環境によって「どちらの癖を脳に植え付けられたか」が、二人の人生を決定的に分けたのです。

自分で「勝ち癖」をデザインする3つの方法

では、僕たちが大人になった今、後天的に「勝ち癖」を身につけるにはどうすればいいのでしょうか。

勘違いしてはいけないのは、「必ずしも他人と競争して勝つ必要はない」ということです。目指すべきは、他者を蹴落とすことではなく、「自分の想定を、自分で超えていく感覚」を脳に味わせること。

そのための具体的なアプローチを3つ提案します。

1. 目標を徹底的に「きざむ」

今の自分にとって、難しすぎる目標は百害あって一利なしです。 現代はネットやSNSを開けば、信じられないような成功を収めているトップクラスの人が嫌でも目に入ります。そのため、無意識に基準が高くなりすぎ、いきなり無謀な目標を立てて自爆し、自ら「負け癖」をつけにいってしまう人が多すぎます。

必要なのは、今の自分にとって「頑張ればギリギリできそう」なレベルにまで、目標を細かくきざむことです。

階段の段差を小さくし、それを確実に踏みしめて達成していく。この「自分で決めた小さなゴールをクリアした」という微小な勝利の積み重ねだけが、脳内の「透明な天井」を破壊し、勝ち癖へと変えていく唯一の方法です。

僕が運営しているデザインメンター事業でも、実は同じ構造を意識してカリキュラムを組んでいます。

いきなり「プロレベルの美しいWebサイトを作ろう」なんて高い壁は提示しません。そんなことをすれば、一瞬で「自分にはセンスがない」と負け癖をつけて挫折してしまうからです。

まずはキャプチャの仕方、模写の基礎、その次は要素の言語化……というように、メンティーが「これならできる」という段差を一段ずつクリアしてもらい、「あ、自分にもできた」という勝ち癖を脳にインストールしていくことを最優先にしています。

2. 自分を否定する環境から、全力で逃げる

ピカソの息子パウロの例が示す通り、あなたを「負け犬」扱いする人や、自信を削いでくる環境の中にいては、絶対に勝ち癖はつきません。どれだけ本人が努力しても、環境のマイナス圧力が強すぎるからです。

自分をすり減らす場所からは、今すぐ距離を置いてください。 あなたの存在を1人の人間として尊重し、正当に見つめてくれる場所へ行く。そこで「自分はここにいていいんだ」「これなら貢献できるかもしれない」と思える分野へ一歩を踏み出すことが、脳の呪縛を解くスタートラインになります。

3. たとえ嘘でも「自信があるように」振る舞う

「自信がついたら行動しよう」は順番が逆です。 まずは、ハッタリでも、嘘でもいいから「自信があるように振る舞う」ことから始めてみてください。

たとえばファッションの世界でも、他人から見て少し奇抜な服であっても、本人が堂々と自信満々に着こなしていれば、なぜかそれが「正解」に見えて魅力的に映るものです。逆に、どれだけ良い服を着ていても、自信なさげにモジモジしていれば、だらしなく見えてしまいます。

人間の脳や周囲の評価は、驚くほどあなたの「振る舞い」に影響されます。堂々と胸を張って発言し、振る舞うだけで、周囲からの扱いが変わり、結果的に「勝者」になりやすくなる。これもまた、勝者効果をハックする強力なテクニックです。

まとめ:あなたの今日の「小さな勝利」が、明日の脳を作る

人間は、環境と習慣によって、脳の構造すら変えることができる動物です。

もし今、あなたが「何をやってもうまくいかない」と停滞感を感じているなら、それはあなたの才能がないからではありません。単に、高すぎる目標や、あなたを否定する環境のせいで、脳が「負け癖モード」になっているだけです。

だからこそ、今日から「勝ち癖」を取り戻しにいきましょう。

大きな山を動かす必要はありません。

  • 「今日は5分だけ本を読む」と決めて、読めた。

  • 「いつもより少し丁寧に挨拶する」と決めて、できた。

そんな、他人から見れば見過ごしてしまうような小さな「想定超え」を、自分で意図して作り出していく。その地味で孤独な反復練習の積み重ねが、やがてあなたの脳を「ターボ付きの勝者仕様」へと作り変えていきます。

焦る必要はありません。 まずは今日の自分のハードルを適切にきざみ、小さな一勝を掴み取りにいきましょう。

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