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渇水の御母衣ダム

岐阜県高山市・白川村にまたがる庄川上流にある電源開発(J-POWER)の御母衣ダムが、記録的な渇水状態になっていると聞いたので見てきました。

御母衣ダムは、庄川上流に建設された高さ131m、堤頂長405mのロックフィルダムです。1957年に着工し、1960年に完成、1961年から御母衣発電所による発電が始まりました。ダム建設によって旧荘川村の一部が湖底に沈み、集落の移転など大きな変化をもたらしました。

御母衣ダムの目的は発電。ダム湖の水を利用して、ダム左岸直下の地下約210mにある御母衣発電所で最大21万5,000kWを発電します。総貯水容量は約3億7,000万m³、有効貯水容量は約3億3,000万m³。庄川の豊富な水量と大きな落差を利用した、国内有数の大規模水力発電所です。

2008年7月撮影時はこの水量でした。

今回の渇水は、突然数日間雨が降らなかったというだけのものではなく、2026年は冬から春にかけて例年より降雪が少なかったそうで、早い時期から御母衣湖の水位低下が目立っていたそうです。その後も低水位が続き、通常なら水面に隠れている地形が広く現れる状態になっていました。

このような珍しい状態であることが気になり、訪れてみました。何度か訪れたことのある場所ですが、これほどまでに湖底が露わになった御母衣湖を見るのは初めてです。
今回、一番渇水の状況と湖底の遺構が見やすかったのは、荘川桜の横にある展望場所からでした。駐車場やトイレもあり、昔の集落跡や道路跡、橋跡などが見えるので、眺めるならここからが一番お薦めです。

荘川桜そのものは、御母衣ダム建設によって湖底に沈むことになった照蓮寺と光輪寺の境内から移植されたものです。現在は湖を見下ろす高台に立っていますが、今回のような大幅な減水では、かつて桜が立っていた場所を含む湖底の地形を想像しながら眺めることができます。

湖底に降り立つ人の姿もありました。
ただし湖底は通常立ち入る場所ではなく、今回のような減水時であっても安全が確保されているわけではありません。水位が急に変化する可能性や、ぬかるみ、急な段差なども考えられるため、立ち入りは自己責任となります。

荘川桜より上流へ進むと、時折木々の間から湖底の遺構が見え隠れします。

岩瀬橋辺りでは植物の生い茂った大地が目につきます。

この辺りは比較的水位が低い時には普段から陸地のように見える場所でもあるため、そこまで特別な光景という感じではありません。

ただ、普段は湖水に隠れている斜面のくぼみや地形がはっきりと姿を現し、その中央を現在の庄川が一本の清流として流れている光景は、やはり珍しいものです。

もう少し上流へ進むと荘川浄化センターがあり、ジュラ紀の化石群を紹介する展示施設の横には、庄川に架かる吊り橋があります。この七間飛吊橋付近が、普段の御母衣湖の上流端にあたります。
今日は普段なら御母衣湖に隠れている庄川本来の流れが、そのまま清流として姿を見せていました。

2008年7月に撮影した同じ場所では、このような水量でした。

今回の渇水で、水の下に隠れていたかつての地形が部分的に姿を現すことで、ここがもともとは川や集落のあった場所だったことを、いつもより強く実感することができました。

もちろん、渇水そのものは喜ばしいことではありません。水力発電をはじめ、農業用水などこの水を利用するさまざまな活動にも影響しますし、何より水源としての庄川の水量が早く平常に戻ることを願いたいところです。

一方で、普段なら湖水の下に隠れているものを見ることができるのも、こうした低水位だからこそ。今回はその珍しい光景を記録しておきたくて、各所から眺めてきました。