研究職は金ドブだ

長らく、「薬剤師は金ドブだ」(所得増加で教育投資を回収できない、金をドブに捨てている)という内容の駄文を書いてきたのだが、研究職はもっと金ドブだ。

研究職に就くには、博士号取得が必要条件だ。

博士号取得には、高卒以降だけでも、学部4年、大学院修士2年、大学院博士3年、合計9年の在学期間を必要とする。

しかも、博士号は就職の必要条件でしかなく、まったく十分ではない。十分に近づくには、博士号に加えて、海外ポスドク経歴があると良いとされている。

アカデミックは英米圏が本場であり、英語で論文を読み書きして、発表して、討論できないと、まったく相手にされないからだ。

つまり、高い確率で研究職に就くには、
博士号+海外ポスドク+討論できる程度の語学力
を必要とするのだ。

これだけの時間と金と手間を投資しても、就職できないことがある。

私は、このことを東京大学1年の駒場で知ってしまった。

駒場の教員やTAたちは、日本の研究者のトップクラスである。

その彼らが、博士号をとった後でもポストがなくて、無職でウロウロしていたり、助教(当時は助手)として10年も追い使われていたりする。

この状況を知って、私は、
「もういちど、医学部に入るしかない」(すでに医学部を一度退学している)
と思ったのだが、自分の判断ミス(医師よりもマシなキャリアが自分にはあると思っていた)を受け入れたくなくて、何もしないままで、駒場から、本郷に進学してしまった。

本郷では、大学のラボに博士号を取りに来ていた企業研究員の話を聞いて、さらにビビってしまった。

学部生や大学院生の身分ですら、耐え難いほど忙しいのに、企業研究職はもっとずっと忙しいという。自分は、このまま教育投資も回収できず、ただ、擦り切れていくのだろうか?

致命的だったのは、教育投資の報酬として得られるかもしれない研究業務が、おもしろくもなんともないと思ったことだ。

ラボ内での研究報告とか討論とかを聞いていても、まったくおもしろくない。同じことをやりたいとも思わないので、途中からラボの研究報告すら聞かなくなった。

その後、
「自分は、結局、何をやりたかったのか」
と考え始めてしまったのだが、これが精神衛生に決定的にまずかった。

反芻思考、堂々めぐりの思考の迷路に入ってしまった。

形だけでいいから、教授からもらった、おもしろくない研究テーマを続行し、手先だけを動かしていればよかったのだ。教員や院生に迷惑をかけながら、ただ、ラボに滞在していればよかったのだ。

何もしなくても、学費を支払っている限り、大学院生は「お客さん」なのであり、在学年限内は追い出されることはない。大きな顔をして、居座ればよかったのだ。

少なくとも、思考の迷路からは脱出できただろう。


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