1,100円で、何を届けるか
今日も晴れて気持ちがいい天気だった。すっかり夏だ。
昼間はずいぶん暑いが、夕方はまだ涼しい。
今この時間の散歩はとても気持ちいい。
さて、あなたは町中華に行ったことがあるだろうか。
日本人向けに味をチューニングしてくれている庶民的な中華料理のお店だ。
ラーメン、チャーハン、餃子などが定番だ。
最近YouTubeでよく町中華のお店の1日を撮影したドキュメンタリーを見ていた。
それで僕はそこに映る料理人の姿に感動していた。
朝早くから仕込み、遅くまで働く。
営業中はひたすら暑い厨房で鍋をふるう。
そして目の前のお客さんに料理を提供する。
これを1日に何十回、あるいは100回以上繰り返す。
それを来る日も来る日も毎日やるのが仕事だ。
すごすぎる。
そこにはレバレッジが基本的には存在しない。
例えば作家は一度本を書けば、その原稿が印刷されて、人に行き渡る。
100人が読んでも、100万人が読んでも、作家が書くのは一度だけだ。
YouTuberも動画を撮影するのは一度だけだ。
見るのが10人でも、100万人でも、Youtuberの労力は同じだ。
一方町中華の大将はどうだろうか。
オーナーになって多店舗経営しない限り、個人店でやっている限りは、
働いた分だけ、チャーハンを売った分だけ、稼ぎになる仕事だ。
そして家賃、光熱費、料理の材料費、人件費など、かかる経費も多い。
そんな中、ひたすら目の前の人に美味しい料理を一つずつ作っていくのだ。
僕の仕事はクリエイターなので、地道な作業もあるが、基本的には先ほど書いたレバレッジによる拡大を狙う仕事だ。
つまり一度完成させたら、あとは僕が寝ている間も作ったコンテンツが働いてたくさんの人の役に立つことを目指す仕事ということだ。
でも、だからこそこうして、コツコツと鍋をふるう料理人の姿に感銘を受けたのだ。
そして体験したいと思った。
今日は予定より仕事が早く終わった。
僕は思った。これは町中華に行くチャンスだと。
YouTubeで特集されていたお店に行ってみた。
18時過ぎ。到着するとまだ店内は空いていた。
穏やかな大将がにこやかに迎えてくれた。
僕はこの笑顔にやられた。
毎日何人もの人の胃袋を満たしてきた説得力と佇まいだ。
そして時間が少し経つと、店内はどんどん人が増えて、あっという間に満席になった。
そこを大将は1人で注文受け、調理、お会計、片付けをこなしていくのだった。
シンプルにすごかった。
実際の料理はどうだったか。
懐かしい味がして、美味しかった。
昔実家で出前で頼んだ町中華の料理を思い出した。
大満足だ。
同時に考えた。
ラーメンとチャーハンのセットで1,100円。
安い。どうやったらそんなに安くできるのか?
そしてお店はやっていけるのか?
色々考えた。
まずコストについて。
実際のところ、内容は炭水化物と、油と調味料が軸だ。
野菜はちょっとしたメンマ、ネギ。
タンパク質はチャーシューと卵くらいだ。
これなら意外と原価はしっかりと抑えられているから成立しそうだと思った。
そして逆に考えると、1,100円という料金だと、
内容はどうしても炭水化物と油に寄り、
食物繊維とタンパク質は少なくなる。
そして繊細な味付けで美味しいというよりは、
味の素や塩コショウといった調味料をしっかり使うことで、
濃い味付けでおいしさを出していく方向になる。
当然だ。1,100円だから。
僕は思った。
まず何を、誰に、いくらで提供するかを考える時点で、ビジネスの形はほとんど決まってしまうのだと。
1,100円の町中華を提供すると決めた時点で、どんなに原価率を良くしても利益には限界がある。
価格から諸経費を引いたものが、一杯のチャーハンから得られる利益だ。
しかも席数は決まっている。
お客さんが入店してから食べ終わり、退店するまでには時間もかかる。
限られた営業時間と席数の中で出せる利益には、明確な天井がある。
そして食事の内容も同じだ。
どんなに食物繊維やタンパク質を増やそうとしても、1,100円という価格設定の中では、できることに限界がある。
そして目の前の人、一人一人に料理を提供することは本当に素晴らしいことだ。頭が下がるし、美味しいご飯を食べさせてくれて感謝だ。
同時にいかに効率的に広く人に価値提供ができるかを考えるのも大事だと思った。
目の前の人に料理を直接提供することも素晴らしいし、
作ったものをより広く価値提供できることもまた素晴らしいのだ。
大事なことは自分の価値観と目標で、どうするかを考えるということだ。
今回YouTubeで町中華のお店に触れ、実際にお店に食べに行ったことで、解像度が高まるいい経験ができた。
節約中の今の僕にとっては1,100円も大金(通常の夕飯の3-4倍の食費だ)だし、
食物繊維、タンパク質、低加工、低コストを重視しているので、
なかなかたくさんは通えないと思う。
しかしいい経験ができたし、確かに僕自身もお店で大満足だった。
他のお客さんたちのことも幸せにしていた。
今日も笑顔で目の前のお客さんの幸せに奉仕する大将の姿から学んだことは多かった。
