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はじめてのnote|柴犬が神で僕は下僕。痛む足首と汗だく神輿の愛おしき日々

毛皮を着た神と、家庭内カースト「ナノ粒子」な僕の日常

我が家には、絶対的な神がいる。
名前は「はまちゃん」。
1歳、オスの柴犬だ。

くるんと巻いた尻尾。
つぶらな瞳。
食パンのように香ばしい体臭。

どこからどう見ても天使なのだが、我が家の権力構造において、彼は「神」以外の何者でもない。

現在の我が家のカースト制度は、極めて明確だ。

はまちゃん > 妻 > 娘 > 越えられない壁 > 僕
はまちゃん > 妻 > 娘 > 越えられない壁 > 僕

僕は「最下層」どころではない。
もはや目に見えない「家庭内カーストのナノ粒子」である。

妻や娘が「はまちゃ〜ん💗」と呼べば、彼は尻尾をプロペラのごとく回転させ、喜びの舞を踊る。

しかし、僕が「はまちゃん、おいでー」と優しく声をかけるとどうなるか。

彼はゆっくりと首だけをこちらに向け、死んだ魚の目で僕を凝視する。
その眼差しは、道端に転がる小石を見るそれよりも冷たい。

「あ、すいません。視界に入って調子に乗りました」

思わず心の中で謝罪してしまう。
それが、40代・家庭内ナノ粒子男(パパ)のリアルだ。

第1章:神は毛皮を纏って我が家に降臨した

はまちゃんが我が家にやってきて1年。
僕の主な業務は「排泄物の迅速な回収」と「散歩の同行(実質的な歩行型奴隷)」である。

はまちゃんはとにかく気高い。
自分が欲しい時だけ僕に接近してくる。

リビングのソファで僕が寛いでいると、はまちゃんがトコトコと歩み寄ってくることがある。

「ついに……
ついに僕の愛が伝わったのか……!」

全米が泣いた感動のシーンを期待し、僕は両腕を広げる。

すると彼は僕の膝の上にピタリと乗っかり、
そのまま深々とくつろぎ始める。

可愛い。
可愛すぎる。

しかし、ここで恐ろしい現象が起きる。

体重わずか9キロのはまちゃんなのに、膝に乗った瞬間、まるで高密度の重金属へと変貌するのだ。

「毛皮を着た生体圧力測定器」である。

僕の膝には、推定500キロの重圧がのしかかる。
足の痺れが限界を迎え、少しでも体勢を変えようと身動ぎした瞬間。

「ウゥ〜〜〜……ッ」

地底から響くような低音ボイスでの威嚇。
神の静寂を乱したバチが当たったのだ。

僕は痺れ切った足を抱え、完全に硬直する。
神が満足して降りられるまで、僕はただの「人間座布団」として存在することを許されるのみなのだ。

第2章:アスファルトに咲いた生ける石像と、40代下僕の苦闘

我が家で最も過酷な試練、それが「朝の散歩」だ。
はまちゃんの気分次第で、散歩の難易度は跳ね上がる。

特に恐ろしいのが、
彼の気まぐれな意志決定プロセスだ。

いつもの散歩コースを機嫌よく歩いていると思ったら、曲がり角で突然ピタッと足を止める。

僕「はまちゃん、こっちだよ?」

リードを軽く引いてみる。
しかし、彼は微動だにしない。
四本足をしっかりと突っ張り、重心を限界まで下げる。

そう、
噂に聞く「拒否柴」……
いや、散歩中のストライキ地蔵の降臨である。

彼が一度このモードに入ると、物理法則が捻じ曲がる。
体重9キロの柴犬が、まるで地面にアンカーボルトで固定されたかのように動かなくなるのだ。

「お願いだから歩いてください、神よ」
僕は路上で四本足の生ける石像に向かって懇願する。

通りかかる近所の奥様たち。
「あら〜、はまちゃん動かなくなっちゃったの?ふふふ」

優しい微笑みの裏に透けて見える「あの旦那さん、犬にまで舐められてるわね」という静かな哀蔑の視線。

心が折れる音が、
朝の住宅街に響き渡る。

最終的に僕は、ストライキ地蔵を両手で恭しく抱え上げ、汗だくになりながら自宅まで運ぶことになる。

神を奉納する神輿(みこし)の担ぎ手。
それが毎朝の僕のポジションだ。

第3章:足首への洗礼と、それでも愛を叫ぶ哀しき男

夜、リビングでテレビを見ていると、はまちゃんが忍び足で近づいてくる。
彼は「時限式モップのフリをした暴君」だ。

部屋の隅で可愛らしく丸くなり、完全に油断させておいてから、ターゲットを狙いに来る。

そのターゲットとは、僕の「右足首」だ。
なぜか彼は、妻や娘の足には一切手をださない。
僕の足首だけを、スナイパーのような正確さで甘噛みしてくる。

ガブッ。

「痛っ……!
はまちゃん、痛いって!」

僕が声をあげると、彼は「ナイスリアクション!」と言わんばかりに尻尾をブンブン振る。
僕の痛みは、彼にとって最高のエンターテインメントらしい。

妻「ちょっと、はまちゃんを驚かせないでよ」
娘「パパの足が噛みやすい形してるのが悪いんじゃない?」

家庭内カーストの底辺にいる者には、人権ならぬ「夫権」すら与えられない。

我が家は、はまちゃんを中心とした絶対王政であり、僕はただの納税者(おやつ購入係)に過ぎないのだ。

まさに「理不尽なツンデレ金融機関」。
僕がどれだけ「愛」という資金を投じても、配当はゼロ。返金どころか威嚇という名の利息を取られる。

一方、
妻がただ「はまちゃん」と名を呼ぶだけで、超高利回りの笑顔と甘えん坊モードが爆発する。

不公平だ。
世の中はあまりにも不公平すぎる。

……でも。

夜が更け、部屋が暗くなった頃。

ふと気づくと、僕の足元で、小さな温かい毛玉が丸くなってスースーと息を立てて寝ている。

僕の足首を噛み倒し、
散歩で僕を困らせ、
冷たい視線を浴びせてきたあの暴君が、
無防備な顔で僕の足に寄り添っているのだ。

「まったく、現金なやつめ……」

そっと頭を撫でると、はまちゃんは寝ぼけながら「んー……」と小さく鼻を鳴らした。

その瞬間、
今日受けた全ての理不尽、
足首の痛み、
ご近所からの哀みの視線、
そのすべてが綺麗さっぱり吹き飛んでしまう。

家庭内最下層だろうが、ナノ粒子だろうが、どうでもいい。
僕は明日も、神のために最高級のおやつを買いに行き、汗だくで神輿を担ぐのだ。

だって僕は、この毛皮を着た理不尽な神様が、たまらなく大好きなのだから。

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