幸手の一つ目妖怪「ネロハー」について|#幸手権現堂秋祭り
僕もショートショートで参加させてもらった「#幸手権現堂秋祭り」で,「このまちが好き幸手市」の「【幸手の伝説】妖怪ネロハー」という記事を拝読した。
僕はさほど妖怪に詳しいわけではないけれど,1月8日にやって来て「寝ろハー,寝ろハー」と就寝を促す,目籠を嫌う「一つ目」の鬼,これは何か,似たものをどこかで見た覚えがある気がした。
ウィキペディアの「一つ目小僧」の記事を見に行くと,果たして,「民間信仰の一つ目小僧」の項に,以下の記載があった。
関東地方では旧暦2月8日と12月8日の事八日の夜に箕借り婆と共に山里から出てくるという言い伝えがあり、目籠を軒先に掲げて追い払う行事をする。また地方によっては籠にヒイラギを刺すが、これは一つ目を突き刺す意味とされる[10]。この事八日はかつては物忌として仕事をせず、家に籠もっている地方が多かったが、この祭事の家籠もりがいつしか、化け物が現れるから家に籠もると解釈されるようになり、その化け物が一つ目小僧や箕借り婆だという説もある[11]。
[10][11]とも,出典は村上健司編著『日本妖怪大事典』角川書店〈Kwai books〉,2005年。
目籠を嫌うという一つ目鬼の「ネロハー」が,この関東一円に伝わる一つ目小僧伝承のバリエーションの一つであることは,論を俟たない。
柳田國男「一つ目小僧その他」「妖怪談義」あたりをひっくり返せば,さらにいろいろ出て来そうだが,あいにく手許にない。
◆「事八日(ことようか)」は,十二月八日と二月八日で,この日には物忌として,野良仕事や針仕事をせず,家籠りをしなければならないとされた。
「事八日」の「事」を,ハレの「正月行事」と取るか,ケの「農事」と取るかで,十二月と二月のどちらを「事始め」と呼び,どちらを「事納め」と呼ぶか,地域によって異なるというのが面白い。地と図の反転である。
地域によって,両日とも行うところ,一方だけのところ,さらにこれらとは別の日に(も)行うところがあるという。
妖怪や悪神(地域によって異なり、一つ目小僧・箕借り婆・疫病神・ダイマナコ など)が家を訪れ、害をなすという。それを防ぐため、目籠・ハリセンボン・蜂の巣・ヨモギ・山椒・唐辛子・ニンニク・柊に刺した鰯の頭などを、戸口や軒下に掲げ魔除けとする。
あるいは、恵比寿・薬師如来・大黒・田の神・山の神などが訪れるといい、赤飯・餅・団子などを家に供えて歓迎する。
明治維新で,旧暦が廃されて新暦に移行した際,さまざまな民間行事の実施日は,
A. 新暦の同じ日付に移行
B. 新暦で1か月後にズラす
C. 従来通り旧暦で行う
の3つのパターンに分かれた。
たとえば,一部地域で8月7日に行う「七夕」や,広い地域での8月15日の盂蘭盆会(お盆)の「お盆休み」は,本来は旧暦の七月に行われた行事を,旧来と大きな時期のズレが出ないよう,新暦の8月に行うようにしたBのパターンだが,幸手の「ネロハー」も,旧暦十二月八日だった「事八日」を,Bパターンで新暦1月8日に移したものとは考えられないだろうか。
◆「事八日」について付言しておけば,田仕事が終わる十二月八日には「田の神」も仕事を終えて,異界である山へ入って「山の神」となり,また二月八日を過ぎれば,「山の神」は山から里へ還って来て再び「田の神」となる,その往還を憚って,「事八日」は物忌み日となっていたのに,後にはその意味が忘れ去られて,妖怪などが来るから家に籠るのだ,と意味づけがなされたが,「山の神」は一つ目である,というイメージが半端に残って,「一つ目小僧」が来る,というようなことになったのでは,という見方があるようだ。
してみれば,一つ目鬼の「ネロハー」も,元を辿れば立派な神様なのである。
……と思ったら,田の神/山の神の往還は,卯月(四月)八日と神無月(十月)十日で,これは違うのでは,との記述もあり,なるほどと思った。
やはりネロハーは,正体不明である。
◆全国的に行われて来た「事八日」,さらに,関東を中心に広く伝わる一つ目小僧等の伝承だが,その中にあって,「寝ろハー,寝ろハー」という人間への言葉掛けがそのまま通称になっているあたり,幸手のネロハーは人間臭く,愛嬌があって,ことのほか親しみやすい,面白い妖怪だと思う。
