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好き化粧|毎週ショートショートnote(裏お題,本文410字)

◆「私あなたの顔,けっこう好きよ」
飲み会で,いきなり告げられた。
皆の視線が自然と集中してしまう美貌。その彼女が,すっと顔を寄せてきて,耳元で囁く。
「でもきっと,メイクをすれば,もっともっと好きになる」
その夜,2人で飲み会を離脱した。行き先は近くの連れ込み宿。
部屋に入ると,彼女はメイク道具を取り出した。
「座って。始めよう」
彼女が道具を置いたとき,鏡の中の僕の顔は,別人になっていた。
「うん,思ったとおり。完璧ね」
「それはよかった」
「じゃあ,ご褒美を」
彼女のかすれた声。上気した顔が,近づいてくる。
今度は,耳元ではなかった。
僕は彼女とつき合い始めた。条件は,あのメイクを,毎朝自分で施すこと。
「それ,あの子がピンポイントで好きな顔なのよ。メイクでそこに寄せられる人とじゃないと,つき合えないの」
世の中,いろんな愛の形がある。
始まりは顔でも,もっと深い愛に育ててみせる。
そう思いながら,今朝も僕は,鏡に向かって道具を手に取る。


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