「チームみらい」の「エンジニアチーム」設立に伴う法的諸問題について
「チームみらい」のマニフェストから見える「エンジニアチーム」設立の諸問題。
【議員Vlog】初登院から3日間!参議院議員のリアルな仕事始め、お見せします【安野たかひろ】
https://www.youtube.com/watch?v=DtuhI5RhSAY
にて、安野氏は「エンジニアチームの設立」に言及している。
また、参議院において、総務委員会に配属になった模様。
そこで、本文では総務委員会に近しいと思われる関連文書、特に「エンジニアチーム設立」を含めた「チームみらい」のマニフェストを読み解き、その是非を問う。
https://policy.team-mir.ai/view/13_ステップ1くらしと行政.md
以下、詳細マニフェストを引用。
政策概要
・国会にエンジニアチームを設置
・政党交付金を活用し、10名程度のエンジニアからなる技術チームを国会に設置します。政治・行政向けのソフトウェアや分析ツールを迅速に開発・実装し、立法・政策プロセスの高度化を支援します。
・また、UK Parliamentary Digital Serviceのような先行モデルを参考にしつつ、AI・OSSの専門知見を立法府に常時インプットします。
・行政のデジタルツールをつくる・運用する
・ネット上で話し合える場づくり
・デジタル民主主義2030で採用されている「いどばた」を活用し、市民が自由に意見を出し合えるオンラインの熟議の場を展開します。AIが内容を整理し、論点を明確にすることで建設的な議論を後押しします。
・声をきちんと受け止めるしくみ
・すでに構築された「広聴AI」を基盤に、パブリックコメントやSNSなどから集まる意見を分類・整理し、政策検討に活かせるよう継続的に運用・改良します。
・政治資金の流れを市民が追えるツールを活用
・デジタル民主主義2030における「Polimoney」を活かし、国民が政治資金の流れを容易に追跡・分析できる仕組みを導入します。
・あわせて、企業・団体からの献金は受け取らず、将来的な制度見直しにも取り組みます。 政党自らがまず行動し、政治資金のあり方を少しずつ見直すことで、より透明で納得感のある政治の実現を目指します。
・自治体で使えるOSSツールの開発
・デジタル庁が進める標準化や共通基盤と競合しないよう配慮しつつ、小規模な自治体でも導入しやすいツール群をOSSとして迅速に構築します。必要に応じてカスタマイズできる形で全国に展開します。
・プロトタイプによる仮説検証とOSS化
・デジタル政策の構想段階において、まずプロトタイプを開発し、実現性や運用上の課題を検証します。効果が認められたツールについては、公共的に再利用可能なOSSとして開発・公開します。
・議員のための情報収集・分析支援機能
・各府省の資料、過去の国会・委員会の議事録などを横断的に収集・整理し、関連情報を自動的に集約・提示する機能を開発します。忙しい議員が短時間で必要な情報にアクセスできるようにします。
・技術外交のハブ機能
・エンジニアチームだからこそ可能な“テック外交”を推進します。国内外の技術者コミュニティと連携し、政策立案に必要な知見を得ると同時に、日本発のガバメントテクノロジーのプレゼンスを高めていきます。
ツッコミどころは色々あるが、以下の5点について記述する。
1)「エンジニアチーム」の法的妥当性・中立性と有効性について。
2)「国産生成AI」:果たしてどれを使うのか。要求仕様に耐えうるのか。
3)「いどばた」の有効性と、致命的なバグの未改修問題。
4)OSSの有効性と、ライセンス問題。
5)“テック外交”を推進、とは何か。
1)「エンジニアチーム」の法的妥当性・中立性と有効性について。
「エンジニアチーム」のメンバーは、誰がどう選ぶのか。「チームみらい」の政党交付金で構成するということは、「チームみらい」内の独自組織なのか。そうであれば、その独自チームは法的根拠もなく、中立性も担保されていない。そのような組織を、何の審査もなく行政に係らせることに問題はないか。
・政党助成制度
「国が政党に対する助成を行うことにより、政党の政治活動の健全な発達を促進し、もって民主政治の健全な発展に寄与することを目的とした制度」とあるように、その「政党」を助成する制度であって、政党助成金を使ったからといって、すなわち「国が認可した行政サービス」となるわけではない。
(参照:なるほど!政治資金 政党助成関連 https://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/seitoujoseihou/seitoujoseihou01.html)
・個人情報保護法ガイドライン
党独自の「エンジニアチーム」は、「個人情報保護法」を遵守する制約を受ける存在であるのか否か。
(参照:個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(行政機関等編) https://www.ppc.go.jp/files/pdf/250601_koutekibumon_guidelines.pdf)
また、当該マニフェストにおいて「UK Parliamentary Digital Service(https://www.parliament.uk/mps-lords-and-offices/offices/bicameral/parliamentary-digital-service/)に言及しているが、PDSは行政機関の一部門である公的機関であり、一政党が法的根拠も無しに作る「一組織」とは性質が違うので、同様の組織と見做してはならない。
「政治・行政向けのソフトウェアや分析ツールを迅速に開発・実装」を、法制化もされていない、正体もわからない一政党の「エンジニアチーム」に任せることは、実際に行政が行えることを逸脱した、法的にも実現性に重大な疑問があるマニフェストである、と言わざるを得ない。仮に法的な問題がクリアされたとして、そのツールの「有効性」を「チームみらい」は担保できるのか。
2)「国産生成AI」:果たしてどれを使うのか。要求仕様に耐えうるのか。
国産生成AIを10件ほどピックアップした。汎用性が高いものは数社な印象。これらからの選択は「公正な業者選択」と言えるか。
(他社は業務特化型であり、汎用性に欠ける)
国産生成AIの例(国産生成AI10選:日本語LLMや企業向け生成AIと選び方を解説 https://aismiley.co.jp/ai_news/japanese-made-generative-ai/ より)

国産LLMについては以下の記事も参照のこと。
日本語llmの基礎解説から性能比較とランキング、最新モデル導入ポイントまで徹底ガイド(https://assist-all.co.jp/column/ai/20250617-5355/)
それとも、安野たかひろ氏は「東京大学松尾研究室が開発した大規模言語モデル「Weblab-10B」」を選択して、東大松尾研に何らかの利益誘導でもするのだろうか。(安野氏は松尾研出身である。まぁ、これは「下衆の勘繰り」であるか)
<2023年版国産生成AI比較図表>

(参考:総務省 デジタルテクノロジーの高度化とその活用に関する調査研究の請負成果報告書 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/linkdata/r06_01_houkoku.pdf)
いずれにせよ「行政に導入するAIの選択基準」は現状、不透明である。どの生成AIを行政サービスで使う前提で話しているのか、そもそもどのような基準でAIの選択を行うのか。「チームみらい」は、これらについて、透明性を持って説明すべき責任がある。
3)「いどばた」の有効性と、致命的なバグの未改修問題。
「ネット上で話し合える場づくり」の場として「いどばた」の利用が上げられている。しかし、「チームみらい」の「マニフェスト提案」での「いどばた」利用の際に重大なバグが複数見つけられたが、一切改修されることはなかった。このような「保守性に不安のある」システムを行政サービスとして使うことは妥当か。ちなみに「チームみらい」が「マニフェスト改善提案」に利用した「いどばた」が使っていた生成AIは、GoogleのGeminiである。
例:「いどばた」の未改修バグ
・[緊急・最優先課題] AI対話システムの根本的エラーとそれに起因する連鎖的問題の改善要求 #8264(https://github.com/team-mirai/policy/issues/8264)
・AIアシスタントの重大な限界に関する警告を追加 #7569(https://github.com/team-mirai/policy/pull/7569)
・議論の健全性を高めるためのルールとシステムに関する改善提案 #7542(https://github.com/team-mirai/policy/pull/7542)
「いどばた」のバグ(問題点)の例。
・利用者に「嘘」をつく。
・利用者の投稿内容を「とある方向に誘導する」癖をつけることができる。(生成AIの設定による?)
・サーバーエラーが発生すると、それまでの会話が失われる。
・学習能力がない。(これは生成AI側の設定で変更可能かもしれない)
・悪意あるユーザーに対しての防御策が脆弱。
→これらの問題が放置されている「いどばた」を、そのまま行政サービスとして利用する根拠が希薄である。むしろ、バグ改修されずにこのまま利用するなら、利用者にとっては「害悪」と言っていい。
4)OSSの有効性と、ライセンス問題。
「ツール群の生成をOSSで迅速に行う」とあるが、開発体制、利用可能プラットフォーム、ライセンス形態等が不明である。提供後のバグ改修、サポート体制についても明記されておらず、不明である。そのような「不明なもの」を、国内行政サービスに利用することは妥当か。
そもそも「チームみらい」の「エンジニアチーム」が勝手にOSSで開発するのである。「国会内サービス」「行政サービス」として提供することを担保する「法的根拠」は何か。法整備もなく展開する気か。「OSSで迅速に」とはどういう意味か(前述の「いどばた」もOSSであるが、バグ改修は全く機能していない)。
OSS利用に際しての「ライセンス形態」はどれを適用するのか。それとも「独自ライセンス」か。
<OSSのライセンス例>

注1: ライセンスが伝播した部分のみソースコード開示が必要。
注2: 一部のライセンスではソースコードまたはオブジェクトコードの開示が必要な場合あり。
(参照:OSSライセンスとは(種類、確認方法、違反リスクなどについて) https://www.hitachi-solutions.co.jp/sbom/blog/2023063003/)
こういった諸問題について、マニフェストには何も明記されていない。マニフェストになければ、改めて提示すれば良いが、今のところ、その兆候は見られない。
5)“テック外交”を推進、とは何か。
「国内外の技術者コミュニティと連携し、政策立案に必要な知見を得る」の意味が、もはやわからない。技術者と連携することが、なぜ「政策立案に必要な知見を得る」につながるのか。論理飛躍が酷い。もはや具体性・実効性に欠ける構想である。「テック外交」の意味を、「チームみらい」はきちんと定義して、明記すべきである。そもそも「政策立案に必要な知見」は、技術者に限らず、全国民から意見を集めて得るものではないのか。なぜ「技術者」だけに知見を求めるのか。訳がわからない。
「テック外交」が、「世界経済フォーラム(ダボス会議)」の以下のことを指すのなら、
・「テクノロジー外交」が、重要視されている理由(https://jp.weforum.org/stories/2023/03/jp-what-is-tech-diplomacy-experts-explain/)
安野たかひろ氏をダボス会議に出席させるべきである、ということを意味することになるのか。であるなら、そのようにきちんと記述すべきである。安野たかひろ氏をダボス会議に出席させたところで、どの程度の成果が得られるか、全くもって「未知数」であるけれど。
「テック外交」が真の国際外交なら外務省との連携が不可欠だが、その言及も皆無である。そもそも『外交』は政府の専権事項であり、一政党の議員が勝手に『テック外交』を名乗ること自体が越権行為ではないだろうか。
<結論>
そもそも「日本の行政」に関する「重要情報」「個人情報」を、「外国産の生成AI」に、食わせるつもりなのだろうか。
・「チームみらい」の「詳細マニフェスト」への「提案作成AIアシスタント」はGoogleの「Gemini」。
・日本国政に関する重要情報は、国内に閉じた「国産AI」に扱わせるのが妥当。
・しかし、今、そういう目的に耐えうる「国産生成AI」は存在するか疑問。要確認事項(法人/商用ベースのものは個人では確認困難のため、現状、個人のみでは、各生成AIの評価は不能)
・「チームみらい」が開発したOSSツールを「自治体が積極的に利用する」根拠は何か。法的にもその利用は微妙である。
・OSSの行政サービス利用に至っては、法整備が必要なことも理解していない、と評価せざるを得ない。
・「テック外交」推進に至っては「技術者偏重主義」もいいところである。外務省・政府を無視した越権行為と言ってもいい。
→結局のところ、現状では、全てが「絵に描いた餅」でしかない。
「現状、海外製生成AIを使って、日本の行政サービスを改善しようとするのは『海外への重要情報漏洩』である」と言っても過言ではない。政治の右も左もわからない参議院議員1年目に「テック外交」を任せる、なども「夢物語」である。
今、国民に必要なのは「夢物語なマニフェスト」ではなく、「現実的・実行可能な具体的政策」ではないのか。
そもそも政党の「マニフェスト」とは「政策や公約をまとめたもの」である。自身の「夢物語」を述べることではない。安野たかひろ氏は、「チームみらい」は、その辺りを履き違えてないだろうか。
以上。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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