展覧会レポ:京都・桂春院で出会う“フェルトの絵画”──ジャン・ユンヤオ「Sweetheart」を体験
【約1,200文字、写真12枚】
ジャン・ユンヤオ個展「Sweetheart(甜心)」
妙心寺 桂春院|2025年11月12日–12月14日

京都の禅寺で、お抹茶とアートにひと息。
深まる秋、色づいたモミジが風に揺れ、小鳥のさえずりが空を縫う。
ふと目をやれば、狩野派の襖絵が、静かにこちらを見つめていた。
静けさの中のまなざし
京都の禅寺と現代アート。
一見、異なる文脈にあるようでいて、妙心寺の桂春院ではその境界が曖昧になる。
庭園の静けさに包まれながら、ジャン・ユンヤオの作品と向き合う時間が始まった。

張りつめた空気の中、ふと足を止める。
「見えない何か」が、こちらを見ているような気配がある。

これは、なんだろう? 柱の補強? 能面?
誰もいないはずの空間で、視線を感じてしまう。

能面の目を見つめてしまう作品。素材は、フェルトだろうか。
その柔らかな質感が、どこか優しく、どこか不穏。

タイトルの「Sweetheart(甜心)」は、
「――現代において消費と再構築を繰り返す“柔わらかなまなざし”――を象徴しています。」¹
この言葉が、展示全体の温度をそっと温める。
静けさに浮かぶ、ふたつの時間
銀の椀に栗。ありあわせの糸で吊るされたようなオブジェ。
その下には、白いクッションが敷かれている。
落ちても大丈夫。そんな優しさが、そこにある。

ふと視界の端に、襖絵が入る。
その存在感は、空間の重心を静かにズラしていた。
狩野山楽の弟子、狩野山雪。

山楽の後継者でありながら、まるで異なる画風。
「彼には人に誤解され嫌われる原因を作りかねない偏狭な一面があったのかもしれない。確かに、彼の作品は奇矯な個性的な一面を強く示している」²

桂春院は、狩野山雪の奇矯も、ユンヤオの静けさも、
すべてを受け入れ、やわらかく沈めていく。
秋の終わりが、こんなにも優しいものだったとは。
■information
ジャン・ユンヤオ個展「Sweetheart(甜心)」
会期:2025年11月12日〜12月14日
会場:妙心寺塔頭・桂春院
開館時間:9:00-16:30
拝観料: 大人500円 / 小学生以下無料
所要時間:約30分
混み具合:ゆったり快適
写真撮影:可能
おまけ:アートのあとに、甘いごほうび
オシャレなカフェでケーキセットを頼むと、千円はするでしょう?
ここなら、お抹茶とお菓子だけじゃありません。庭園に狩野山雪、そして現代アートも楽しめて(庭園の散策もできちゃう♪)、似たようなお値段です。

毛氈が敷かれた縁側に腰を下ろし、「侘の庭」を眺めながら待つ。
この“待ち時間”が、すでにごちそう。

丁寧に運ばれてきた季節限定の和菓子には、立派な栗が丸ごと一粒。
ほどよい甘みが口に広がり、お抹茶と静かに溶け合う。

庭を眺めていると、小鳥たちの羽音が聞こえてくる。
木の実でもついばんでいるのだろうか。
どんぐりなんて見慣れているはずなのに、
屋内の廊下を「ころん」と転がってきたのは、はじめてだった。

『となりのトトロ』でしか見たことのなかった光景が、目の前に現れた。
おじさんには、ここが特別なサードプレイスになりました🌰
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
この展覧会、あなたならどう感じるでしょう?
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次回は、ラジオ番組「窪塚洋介、目の見えない白鳥さんと展覧会に行く」をめぐる考察記事をお届けする予定です(毎週水曜更新)。
ソース
¹:会場配布資料「Sweetheart(甜心)」松田ハルジャン・ユンヤオ
²:大和文華館編『特別展 狩野山雪 ―仙境への誘い』大和文華館、1986 ※画像の転載・二次利用は、ご遠慮ください。
取材・文・写真:入江 玄
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